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水産物の放射能汚染の解析(2)
東京湾内の汚染の継続調査の必要性

鷹取 敦

掲載月日:2012年3月5日
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関連コラム:水産物の放射能汚染の解析(1)生息域と汚染の変化

 先日、東京新聞2012年3月2日の記事「原発由来セシウム濃度東京湾じわり上昇」で、近畿大教授の山崎秀夫氏が東京湾荒川河口付近の海底の泥に含まれるセシウムを調査し、泥の表面から深さ5センチの平均濃度が8月に308Bq/kg、10月に476Bq/kg、12月に511Bq/kgと上昇傾向にあることがわかったと報じている。

 これは地上の土であれば0.05μSv/h程度の放射線量率の上昇に相当するレベルであり(事故前の水準よりはるかに高いとはいえ)絶対値としては高くないものの、上昇傾向にあることが気になるところである。

 そこでまず現状の魚介中のセシウムのレベルはどの程度であるか、水産庁が全国調査の結果を取りまとめ、ウェブ上で公表しているので、これを参照したところ、東京都のものは島嶼部、養殖を除くと昨年の3月以来、下記の7データしか見当たらないことが分かった。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/housyaseibussitutyousakekka/index.html

水産庁公表データ(2012年2月28日公表)より東京都分(島嶼部・養殖除く)
魚種等  採取地  公表日 セシウム
[Bq/kg]
生息層
アユ 天然 稲城市・府中市(多摩川) 2011年5月26日  175 淡水
アユ 天然 あきる野市(秋川) 2011年5月26日  59 淡水
アサリ  葛西沖 2011年8月12日   2.2 無脊椎
マアナゴ  大田区羽田沖 2011年12月15日 検出限界
未満
底層
ヤマトシジミ  荒川下流域 2012年1月26日 検出限界
未満
淡水 
ヤマメ  あきる野市(秋川) 2012年2月24日  81 淡水
スズキ  江戸川区(葛西沖) 2012年2月24日  9.3 中層 

 現時点では淡水以外の濃度は低いものの、そもそもデータ数が極めて少なく、継続調査にもなっていないため、上昇傾向にあるのかどうかわかりようがない。

 調査サンプル数について気になったため、水産庁調査のうち東北から静岡県についてデータ数(2011年3月から直近のものまで)を調べたところ、下記のとおりであった。(ただし遠洋が中心と思われる漁協のものはのぞき、都県名の入ってるものだけを集計した。)

日本海   青森県:125  太平洋
  秋田県:7  岩手県:325
  山形県:14   宮城県:452
  新潟県:75   福島県:3028
   群馬県:59   栃木県:68   茨城県:1213
 埼玉県:8  千葉県:369 
       東京都:31  東京湾 

 川崎市:5
 横浜市:28
 神奈川県:177
(合計210)
 太平洋
 静岡県:4

 当然のことながら福島県が最も多く、次いで茨城県、その次に東北地方、関東地方の太平洋側でサンプル数が多いが、東京都は神奈川県や千葉県と比較しても格段にサンプル数が少ないことが分かる。先に指摘したように継続調査となっていないため、変化の傾向も分からない。

 東京都は、直接太平洋に面していないため汚染は少ないものと考えているのかもしれないが、2012年1月15日NHKスペシャルでシリーズ 原発危機「知られざる放射能汚染〜海からの緊急報告」で指摘されていたように、長期的には河川を通じて流入する汚染により河口付近の汚染が今後上昇する可能性が懸念される。実際に今後どのように変化するか正確に把握するためには、一定以上の数のサンプルを継続的に調査する必要がある。

 ちなみに人間の内部汚染を把握するためのWBC(ホールボディカウンタ)調査も継続調査しなければ汚染の状況は分からない。

 事故直後などに汚染の高いものを摂取、吸入したことにより体内の放射性物質の量が増えたのであれば、その後低下することで一時的な内部被曝と分かるし、体内の量が横ばいして一定の程度あれば、日常の食事から摂取していることになり長期的な内部被曝の可能性があるから、食事の内容を精査し、内部被曝を減らす工夫をする必要がある。

 魚介類の継続調査の問題については、水産庁のデータを精査したところ、他にも問題があることが判明してきた。これは次の機会に報告したい。