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2011年3月に東日本大震災に伴い発生した東京電力福島第一原発の過酷事故により、福島県内はもとより他都県に至る国内の広い範囲に放射性物質が飛散し、地域・国内の地域の社会経済、人々の生活に甚大な影響を及ぼし、多くの人に不安を与え、放射線防護に要するコストが増大している。これらの影響が事故以前に予測され衆知されてくることはなかった。 その役割が期待される制度の1つとして、環境への影響の予測・評価を行う環境影響評価(環境アセスメント)があるが、環境アセスメントは、原子力発電所について何を予測し配慮してきたのだろうか。放射性物質(排ガス、排水、廃棄物等)、事故などは対象となっているのだろうか。 環境アセスメントとは、規模の大きい事業について、建設時、供用時の環境負荷(環境への影響)を調査、予測し、配慮を行うとともに、その過程において、住民や自治体、所管官庁の意見を求め合意形成に資するべき手続きである。ただし一般には通常の供用時が対象であり事故時などは環境アセスメントでは対象とされてない。 火力発電所、原子力発電所等は、環境アセスメントの実施が義務づけられており、経済産業省、原子力安全・保安院が「発電所に係る環境影響評価の手引き(平成19年1月改訂)」を作成している。 ★発電所の環境アセスメント情報(原子力安全・保安院) http://www.nisa.meti.go.jp/sangyo/electric/detail/index_assessment.html ★環境影響評価の手引 http://www.nisa.meti.go.jp/sangyo/electric/detail/tebiki.html この「手引」の「第3章 環境影響評価の項目及び手法の選定」がある。「2 環境影響評価の項目の選定」のうち「原子力発電所に係る「参考項目」の設定根拠」(P.125)をみると、施設の稼働時については
廃棄物の予測手法をみると(P.320)、産業廃棄物(もえがら、ばいじん、汚泥、廃油、金属くず、廃プラスチック類、陶磁器等)の種類毎の発生量の予測、最終処分量、再生利用量、中間処理量等を把握する、となっているだけで、放射性廃棄物を想定した予測は行われない。 原子力発電所の問題は、事故のリスクだけでなく、事故が無い場合でも放射性廃棄物の処理の課題が大きいのにも関わらず、放射性廃棄物という観点からの量の整理さえ想定されていないのである。 そして、原発事故は他の事業(火力発電所)と比較して事故による影響がはるかに大きくなる可能性がある(福島第一原発では実際にそうなった)にも関わらず、当然のように事故時の影響予測は全く対象とはされていない。 事業者の見解が、実際の原発のアセス(上関原発)の環境アセスメントの手続きで示されている。 ★上関原子力発電所(1,2号機)環境影響評価準備書(環境影響調査書)に対する意見の概要と事業者の見解 [抜粋] http://www.energia.co.jp/atom/press/atomf-2-12a.html 下記は上記の「見解書」より抜粋したものである。放射能・安全性の問題は環境アセスメントの対象外と一蹴し、住民の不安になんら答えるつもりがないことが分かる。
従来より、放射性物質の問題は、「環境」や「廃棄物」から切り離されていることが問題とされてきたが、環境アセスメントについても、その役割を狭く設定し、放射性物質や事故を対象外としてきたのである。 |