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2012年9月9日NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災」では「追跡復興予算19兆円」と題して、復興予算のずさんな使われ方の実態を取り上げた。 復興予算19兆円のうち10.5兆円は増税である。被災地以外に205件、2兆円を超える予算が認められる一方で、肝心の被災地では応募しても落とされる、医療費不足など支援が受けられない実態が指摘された。 被災地以外で復興予算が使われる1つが「波及効果」枠という。「風が吹けば桶屋がもうかる」程度のこじつけた理由で、被災地とは離れた地域の工場の設備投資に復興予算が認められる。この枠の9割以上が被災地以外である。 他にも、燃料電池車の研究開発、刑務所の職業訓練(復興作業員の確保)、テロ対策車両(被災地域の治安対策)、国立競技場の改修など、番組では他にも多数紹介されているが、被災地における復興とは関係なく予算がついていく。 一方で予算が足りないことが被災地の復興の妨げとなっている実態が紹介された。津波で流された商店街を再開するために岩手県で4ヶ月かけてグループで申請した補助金が落選した。岩手県は、効率よく補助金を配分できる水産業を優先する。県は予算が足りないというが、落選した地元の方は「これから家族をどう養えばいいのか」と途方にくれている。 医療施設も不足しているが、仮設住宅に往診している村岡医師がたてようとている診療所に対する補助は6分の1、機器等はほとんど自己負担という。村岡医師は、田舎は見捨てられていると嘆く。 広域処理のあり方が全国で問題になっているが、がれき処理予算の使われ方のずさんさも紹介された。(ただし広域処理については番組中で言及はなかった。) 地域によって処理単価に7倍の開きがあるという。一番の理由は分別の有無である。あらかじめ分別してから仮置き場に搬入した東松島市や釜石市では処理単価が少ない一方、東松島市とがれきの量がほぼ同程度の石巻市では、後から分別したため処理単価が高い。東松島市は過去の災害の教訓に学んで、最初から分別したという。釜石では最初にテスト事業を行って処理単価を比較してから決めたそうである。 本来は、被災して余裕のない被災地自治体に対して、きちんと処理方法のあり方についても支援し、より効率的に処理が進むようにするべきだったのではないだろうか。環境省が行ったのは、処理のあり方については地元任せにする一方で、闇雲の全国の自治体に引き受けを迫り、そのために広告代理店に税金を当時、不透明な政策決定プロセスで混乱を増しただけである。残念ながら番組ではこの点への言及はなかった。 番組では、がれき処理の報告で業者の報告書に別の現場で同じ写真が使い回されていた例、現場の写真がなく担当者の顔写真だけだった例、1週間程度で終わる解体処理を20日かけろと会社から指示があったという現場の証言等を紹介した。 このような現場の管理は被災自治体でやりきれなかったことは間違いないだろう。この部分を国が適切に支援していれば、処理がもっと迅速にかつ安価に進んだのではないだろうか。 このように、被災地に必要な税金を全国で復興枠から使う一方で肝心の被災地では必要な補助金がつかない、がれき処理のずさんな使い方でよけいなコストをかけて処理を遅らせる一方で、かけなくて済んだかもしれない輸送費と、不要な広報費用をかけて広域処理を不透明な方法で進めて混乱を招いているのが、現実なのである。 がれき処理について番組の取り上げ方が不十分であったのは残念であるが、広域処理についても、必要性について疑問が突きつけられたというべきではないだろうか。 |