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役立たず住基カードを
年金に活用せよ(苦笑)


田中康夫

掲載日2006年10月28日



 
果たして自分は年金を受け取れるのだろうか。誰もが抱く懸念です。

9月に実施した「毎日新聞」の世論調査では実に6割の国民が、「日本の年金制度は近い将来、破綻すると思う」と回答しています。

 40代では実に77%に達しています。既に恩恵に浴している70代以上が37%に留まっているのと極めて対照的です。

「年金手帳」には、加入した年月日しか記されていません。これまで払い込んだ金額も、これから受け取れる金額も、何れも記されていません。知る由もありません。

 昨夏の総選挙で僕と荒井広幸は、「年金通帳」の導入を訴えました。手帳と通帳は似て非なる代物です。

通帳には現在の毎月・毎年の振込額、将来の毎月・毎年の受給額が印字される仕組みです。即ち、国家と国民の間で、信頼関係に基づく契約を結ぶのが年金制度であり、それを証明するのが年金通帳なのです。

 他方、「美しい国」を創るべく安倍晋三首相は24日、「ねんきん定期便」なる新サーヴィスの概要を了承しました。

「不安を緩和し、信頼を回復する」との触れ込みの下、50歳以上には最終的に受け取れる毎月の年金の見込額を、2049歳には払い込んだ保険料に応じた途中段階の毎月の年金額を、年1回、郵送で通知するのだとか。

 いやはや、何故に年1回なのでしょう? その郵便料金は如何ほどの天文学的数値に達するのでしょう? 転居先不明で返送されてしまう郵便数は何万、否、何十万通に上るのでしょう?

 年金通帳を導入し、市町村役場を始めとする行政機関の入口に端末器機を設置すれば、金融機関の預金通帳と同様に、何時でも何処でも誰もが最新の年金状況を、個別に把握可能なのです。

 縦しんば、年金通帳の印刷代が嵩む、などと笑止千万な難色を示す役人の抗弁が生じたなら、閑古鳥が鳴く既存の住基カードを活用したら、と提案致しましょう。

 総務省の肝煎りで導入された住基カードは、未だに全国で95万人の保有者しか存在しないのです。旅行先の霧の摩周湖でも雨の西表島でも、何処でも自分の住民票が取得可能、なぁんて囁かれたって保有価値ゼロ。当然の市場原理です。

 その維持運営費用は年間300億円を優に超え、密かに総務省も頭を抱えているのです。

因みに住基カードには10万文字が入力可能。氏名・住所・生年月日の3要素に留まらず、精神疾患や税金滞納の履歴をも入力する国家管理に繋がるのでは、と懸念されている巨大なITハコモノ行政の失敗を成功へと転化する上でも、一考に値するでしょう。

 無論、厚生労働省と総務省の既得権益死守騒動へと発展する可能性大です。が、真の改革とは、前例踏襲の役人から総スカンを食らい抵抗されてこそ、です。

 霞ヶ関の皆々様に丸投げしたが故に郵政事業民営化も道路公団民営化も、官から民へと看板を付け替えただけで結局は、役人の焼け太りとなった小泉“羊頭狗肉”改革を超えて、真に「美しい国」へ進化させて、小泉・森Wパパの呪縛を断ち切りたいと安倍ちゃんも思うなら、年金通帳、住基カード改め年金カードは、更なる支持率浮上の観点からも狙い目ですぜ(苦笑)。