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ドゥシャンベ(タジキスタン)で開催される
上海協力機構サミット:アフガタン問題に
焦点が当てられる見通し

  GT 2021年9月15日
Shanghai Cooperation Organization summit
in Dushanbe expected to focus on Afghanistan issue

By Zhang Hui and Hu Yuwei GT 15 Sep 2021

翻訳:池田こみち(環境総合研究所顧問)
 独立系メディア E-wave Tokyo 2021年9月16日
 

7月にタジキスタンのドゥシャンベで行われた上海協力機構の外相・幹部会議で
の記念撮影。アフガニスタンの治安状況が会議の中心となった。写真はAFP


本文

 上海協力機構(SCO)の設立20周年を記念して木曜と金曜に開催される上海協力機構(SCO)の理事会サミットでは、地域の安全と発展におけるSCOの過去の成功例、加盟国拡大、さらに米国率いる西側諸国に義務を果たすよう促し、難民問題を適切に処理し、テロの波及リスクを管理することを含むアフガニスタン問題が取り上げられる見込みであるとアナリストは述べた。

 アナリストによると、イランがSCOのメンバーになることで、SCOにはアフガニスタンの主要な隣国がすべて含まれるようになると予想されており、SCOは新たな脅威に対処するために、麻薬対策センターなどの新しいメカニズムを打ち出すことが期待されているという。

 SCOの第21回首脳会議は、タリバンが暫定政府を発表してから1週間後にタジクの首都ドゥシャンベで開催される予定である。アフガニスタンはSCOのオブザーバー国であり、複数の加盟国と国境を接している。

 蘭州大学(Zhu Yongbiao)アフガニスタン研究センターの朱永彪(ZhuYongbiao)所長は、『グローバル・タイムズ』紙に次のように述べている。「今回のサミットの主な焦点はアフガニスタンであり、メンバーは米国を中心とした西側諸国にその責務を果たし、タリバンがすべてのテロリスト集団と完全に手を切るよう促すことで合意に達するだろう。

 しかし、タリバンの新政府を承認するかどうかについて、メンバーが合意する可能性は低いだろう。」と朱氏は述べている。

 中国現代国際関係研究院ユーラシア研究所(Eurasia institute of the ChinaInstitutes of Contemporary International Relations),の丁暁星(DingXiaoxing)所長は、『環球時報』の取材に対し、SCOは中央アジアの安全保障と経済発展に重要な役割を果たしてきた、と述べた。

 しかし、米国を中心とした西側諸国の軍隊が無責任かつ性急に撤退したことで、地域諸国は難民問題、テロリズム、薬物乱用などの複数の脅威に直面している、と丁氏は述べた。

 また、今回のサミットでは、イランがオブザーバーからメンバーとなり、SCOにアフガニスタンの主要な近隣諸国がすべて加わり、アフガン問題に関する最も重要な地域組織となる可能性が高いと、上海国際大学中東研究所(the Middle East Studies Institute at Shanghai International Studies University)の朱偉礼(Zhu Weilie)所長は『環球時報』に語っている。

 朱(Zhu Weilie)氏は、イランとパキスタンがアフガニスタンの難民や亡命者を最も多く受け入れていることを考慮すると、イランはおそらくアフガニスタンにとって最も影響力のある外部プレイヤーのひとつになるだろうと語った。イランがSCOに加盟すれば、他の加盟国との情報共有や協調的な活動において、より多くの協力が得られるだろう。これは、将来のアフガニスタンの状況において、過激派が波及する可能性を強力に抑制することになるだろう、と専門家は述べている。

 また、木曜日にはドゥシャンベで集団安全保障条約機構(CSTO:Collective Security Treaty Organization)の首脳会議が開催される予定で、SCOのメンバーの多くはCSTOのメンバーでもある。

 朱永彪(Zhu Yongbiao)氏によると、CSTOメンバーは中央アジアにおけるアメリカの軍事的プレゼンスについて議論するという。


ミニ
解説※)上海協力機構(SCO:Shanghai Cooperation Organization)
       Source:Wikipedia

 中華人民共和国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8か国による多国間協力組織、もしくは国家連合。中国の上海で設立されたために「上海」の名を冠するが、本部(事務局)は北京である。

 冷戦時代の中華人民共和国はソビエト連邦一国と長大な国境線を持ち、中ソ対立終結後の国境画定交渉で1990年4月に「中ソ国境地帯の兵力削減と信頼醸成措置の指導原則に関する協定」を結んだ。

 しかし、翌1991年12月のソビエト連邦の崩壊により中国は多くの国と国境を接することになり、これらの旧ソ連圏の内情は、独立国家共同体 (CIS) の影響力不足もあって非常に不安定であり、国家統制の及ばない武装勢力から国境を共同で管理して地政学的にもハートランドとして重要なこれらの国に一定の影響力を持つことで、長期的な安全保障を確立する必要があった。

 ロシアとしても六四天安門事件で欧米から武器禁輸を受けた中国との軍事的協力関係を深めることで兵器を輸出し、人口と予算の規模で勝る中国との国境に兵力を配備する負担を減らす狙いもあった。

 また、資源問題でも石油と天然ガスの産出国であるロシアや中央アジアはその消費国で成長著しい中国へのエネルギー供給を強化したい思惑もあり、「国境地区における軍事分野の信頼強化に関する協定」(上海協定)の調印を目的に1996年4月26日に上海で集った上海ファイブ(中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタンの5か国首脳会議)がSCOの前身となった。 


 SCOは「三悪」と呼ばれる「テロリズム、分離主義、過激主義」に対する共同対処の他、経済や文化など幅広い分野での協力強化を図る組織であり、名目の上では特定の国を対象とした軍事同盟ではないと述べているが、発足から経過するにつれて次第に単なる国境警備やテロ対策の組織としての枠組みを越えつつある。
(後略)