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米国がアフガンの国家備蓄を押収してでも、
タリバンを孤立させるという脅しは
さすがに「現実から乖離している」

 
RT  2021年8月17日
US may seize Afghanistan’s national reserves,
but its threat to isolate Taliban is, indeed,
‘unmoored from reality

17 Aug, 2021

翻訳:池田こみち (環境総合研究所顧問)
 独立系メディア E-wave Tokyo 2021年8月18日
 

タリバンの共同創設者ムラー・アブドゥル・ガーニ・バラダ(C)はモスクワでの会談に出席。©アレクサンドル・ゼムリアニチェンコ / AFP経由POOL・Photo

本文

 欧米は国際的に孤立させるという脅しでタリバンのカブールへの進撃を止めようとしたが、カブールが陥落した今、そのような手段を実施することは、ワシントンの世界的な覇権が衰退している中では不可能かもしれない。

 タリバンが最後の追い込みをかけているとき、欧米は「タリバンが力ずくで政権を取った場合、報復する」という脅しをかけていた。タリバン政権は「世界の亡者」になると、米国の特使ザルメイ・カリルザド氏は警告した。

 EUのジョセップ・ボレル外交政策局長は、イスラム教徒は「非承認、孤立、国際的な支援の欠如に直面するだろう」と述べていた。また、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も同様の見解を示している。

 しかし、カブールをタリバンの手から守ることができなかった今、主要な利害関係者自らが、欧米の企てで彼らを孤立させようとしているときに、脅しを実行することは不可能かもしれない。軍事的勝利に向けて、イスラム主義運動は外交的支援を強化し、
非西洋の諸国から多くの善意を獲得したようである。

 中国とロシアは、欧米の外交官が逃げ出したにもかかわらず、タリバンの安全保証を信用してカブールからの外交官の避難を拒否した。中国とロシアは、タリバンを正統な指導者として認めることはしなかったが、タリバンと協力してスムーズな政権交代を実現すると述べた。

 米国のカリルザドの対極にあるロシアのザミール・カブロフ(Zamir Kabulov)は、イスラム教徒は米国の支援を得て崩壊した「傀儡政権」よりも信頼できる交渉相手のようだと褒め称えさえした。

 
外交活動のなかで、タリバンの幹部はロシアと北京に国益を尊重することを申し出た。中国に対して、タリバンが東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)のウイグル人分離独立派との関係を断ち切り、新疆ウイグル自治区への攻撃の足がかりになることはないと申し出た。

 ロシアは中央アジアへの不干渉を約束し、中央アジアの同盟国の安全保障上の懸念を解消した。アフガニスタンの武装勢力は、隣国のトルクメニスタンやウズベキスタンの政府関係者と会談を行い、ロシアがこれを促進した。

 イランは先月、アフガン過激派とアフガン政府のハイレベル協議を主催した。インドはタリバンとの裏ルートを確立したと言われている。トルコは、ポストNATOのアフガニスタンでの野心を隠しておらず、新しい状況でアフガニスタンの将来について発言するためには、武装勢力の協力が必要である。

 タリバンの政権引き継ぎに対するパキスタンの態度はかなり評価されているようだ。イムラン・カーン首相は、
タリバンが「奴隷の足かせ」を外したと表現したと報じられている。イスラマバードは、1990年代のタリバン政権を承認した数少ない世界の首都の一つである。

 一方、米国が4月に他の加盟国との事前協議なしに始めたNATO軍の撤退は、NATOを混乱に陥れた。特に英国は、米国の動きとその後の混乱がロンドンを困難な立場に追いやったと公言した。涙ぐんだベン・ウォレス国防長官は、カブールから英国市民とアフガニスタンの同盟国を慌ただしく避難させたことについて話したときに、「欧米は何をしてきたのか」と語った。

 パリも同様に、ワシントンの責任を追求した。フローレンス・パリー国防相は、フランス・インフォのラジオ番組で、2014年以来アフガニスタンには行っておらず、「米国の関与とは何の関係もない」と述べ、フランス政府は現在アフガニスタンで起こっていることについて、距離を置いていることを明らかにした。

 イタリアでは、右派政治家のジョルジア・メローニ氏が、アフガニスタンでの出来事は、「オバマ・クリントン・バイデンの皮肉なドクトリン:「勝てないなら、混乱を起こせ”に従って展開された」と述べ、米民主党を非難した。

 大西洋の向こう側にこのような雰囲気があると、たとえ英国のような国が目標を共有していたとしても、ワシントンが協調的な孤立作戦への支持を集めるのは難しいだろう。

 しかし、米国にはレバレッジがない(効果が期待できない)わけではない。カブールが陥落した後、ワシントンは、米国が管理する銀行口座に保管されているアフガニスタンの国家準備金にタリバンはアクセスできないと述べた。

 イランやベネズエラが証明しているように、アメリカはアメリカと仲違いしている国に属する外国の資産を自由に扱うことに何のためらいもない。そのお金は、タリバンの犠牲者に高額の賠償金を支払うために使われるかもしれないし、例えば、モハメド・アル・グアイドが率いるアフガンの亡命政府に引き渡されるかもしれない。

 しかし、このような手段は、20年間にわたってNATO軍の駐留に反対してきた人々の政策に影響を与える手段としては不十分かもしれない。タリバンが孤立するという脅しは、タカ派の元米国NATO大使、カート・フォルカー氏が言うように、「現実から乖離している」。

 
タリバンの原理主義的なイデオロギーと、西欧の兵士を追い出すことで得られる好評価は、「援助予算よりもはるかに価値がある」としている一方で、カブールの混乱した光景を見たアメリカは、自身が「実際にはより一層孤立していると感じる」のかも知れない。