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日本防衛省の「張り子の虎」
Sputnik日本語
War in Ukraine- #1361  26 August 2022


独立系メディア E-wave Tokyo 2022年8月26日

日本の12式地対艦誘導弾 - Sputnik 日本, 1920, 26.08.2022
CC BY 4.0 / JGSDF / Type 12 (AShM) firing, Japan GSDF (cropped image)


本文

 日本の防衛省は、射程距離を最大1000キロまで延伸することが可能な、能力向上型の12式地対艦誘導弾1000発を保有するという計画を発表した。

 このミサイルは、地上にも、海上にも、上空にも配備することができ、敵の射程圏外へのミサイル攻撃を実施することができるものだとされている。

 一見、これはかなり意義のあるものに思われる。しかし、詳細を見れば、中国や北朝鮮に対する日本の「ミサイルの脅威」はそれほど恐ろしいものではない。

需要に対する保有数が少なすぎる

 ミサイル1000発というとかなりの量に思われる。しかしそれは需要と比較しなかった場合である。実際、需要はかなり大きい。たとえば、敵の空軍基地をミサイル攻撃で壊滅するという課題を据えた場合、平均でも10〜12発の巡航ミサイルが消費される。

 これはBGM109トマホークの場合で、弾頭に装填される炸薬の重量は450キロである。一方、これに対し、日本の12式地対艦誘導弾に装填される炸薬の重量は225キロである。つまり、同じ効果を得るためには、12式地対艦誘導弾だと、20〜24発必要となるのである。

 中国には、空港や小さな飛行場を除いて、175の大規模な空軍基地がある。つまり、中国の主要な空軍基地を破壊するには、3500〜4200のミサイルが必要となる。これはその他の重要な軍事目標物を計算に入れなかった場合である。


空母「遼寧」(アーカイブ) - Sputnik 日本, 1920, 26.05.2022
日本は中国の空母を追跡し、演習の妨害を試みている 中国国防省が非難 5月26日, 20:50


 一方、北朝鮮には70の空軍基地があり、これらを壊滅するには、1400〜1680発のミサイルが必要となる。これはもっとも単純に計算した数値であり、飛行場の防衛能力や敵のミサイル防衛の反撃といったその他の重要なファクターを計算には入っていない。しかし、それでも、敵の空軍一つに深刻な打撃を与えるのに、1000発のミサイルではまったく十分でないことは明らかである。

 概して、中国や北朝鮮とミサイルで戦うためには、およそ2万発のミサイルが必要である。しかもこれで十分だとは言えない。


紙の上の脅威

 一方、射程距離を延伸したミサイルは、まだ紙の上で存在する計画で、実戦配備されているわけではない。現存する12式地対艦誘導弾の能力向上を図る問題については2020年に決定が下された。

 目標遂行の期限は地上型が2025年、海上型が2026年、そして上空型は2028年となっている。いくつかの情報によれば、日本政府はこの開発を加速化し、2023年に地上型の設計を完了しようとしていると言われている。

日本国旗 - Sputnik 日本, 1920, 05.05.2022
日本、極超音速兵器を追尾する無人機の常備展開を検討=産経新聞
5月5日, 17:15

 もし今年中に、実戦で使えるようなミサイルと発射装置が開発されたとして、それを1000発製造し、必要な設備を用意し、そのための人員を養成し、実際の戦力として使えるようになるのにはかなりの時間を要するであろう。

 つまり、能力向上型の12式地対艦誘導弾の地上配備について言及することができるのは、もっとも早いテンポで進められたとして2025年になるだろう。またこれらのミサイルが九州の西側に配備されたとして、砲撃できるのは中国の東端、つまり上海、青島、大連周辺だけである。

 ただし、北朝鮮領土について言えば、ロシアとの国境に近い北東の小さな地域を除き、ほぼ全域を攻撃できる。つまり、もし、この計画が中国抑止のために考案されたものであるならば、これはまったくの失敗であると認めざるを得ない。

 地上に配備した12式地対艦誘導弾の能力向上型は中国に深刻な損害を与えるようなものではない。しかもすべてはまだ紙の上の脅威にすぎない。必要なミサイルがまだないのに、そのことについて話す意味などあるのだろうか。


中国外務省の汪文斌報道官 - Sputnik 日本, 1920, 16.08.2022
中国外務省、日米に朝鮮半島をめぐる緊張を高めないよう求める
8月16日, 23:55



防衛には向かない

 日本の防衛省のミサイル計画は、明らかに日本の防衛に向いていないものである。敵国にミサイル攻撃をしたとして、その後どうなるか?それに対し、北朝鮮は核弾頭を搭載した弾道ミサイルで反撃するだろう。中国は、大規模なミサイル攻撃か大規模な空爆、または核ミサイル攻撃のいずれかを選ぶであろう。

 日本が反撃のために保有しているのは、弾道ミサイルを迎撃するSM–3を搭載することができるイージス艦8隻である。イージス艦には、このようなミサイルを搭載できる発射台が合わせて744ある。

 しかしながら、2017年に、ミサイル迎撃システムが備えられた33隻の米国の艦艇に配備されたSM−3はわずか193基、つまり平均して1隻に6基しかない状態である。日本の海上自衛隊にそれ以上の備蓄があるとは思えない。

 つまり、日本にはこのタイプのミサイルは48基ほどということになる。これは、大規模砲撃に反撃するのにはあまりにも少ない数である。言い換えれば、防衛省の計画は敗戦に向かわせているものなのである。自衛隊のドクトリンは、常識的に考えて、ミサイル攻撃および空爆に反撃する日本の能力に基づいたものでなければならない。

 日本への侵攻は、ミサイル攻撃、上空制圧、そしてパラシュート部隊の上陸のための海上制圧という組み合わせによって可能となる。そしてこれらの要因はすべて互いに絡み合っている。日本の空軍をミサイル攻撃で叩くことができず、上空制圧ができなければ、侵攻は成功しない。

 そこで、自衛隊にとっての現実的な計画は、強力なミサイル防衛システムの構築、制空権を維持できるような空軍部隊の創設を基に作り上げられなければならないのである。こうしたことから、現在の防衛省の政策は奇妙としか言いようがない。防衛省は、自国の能力や自らの発言や行動の結果を現実的に評価する能力を失ってしまったように思われるのである。