以下の表は、米国が沖縄に駐留する海兵隊のグアムのアンダーセン基地への移動計画です。
出典:米国政府
一番上の横軸に年号があります。2010年から2020年まで1年単位となっており、左端の縦軸に移動する海兵隊などの人数があります。
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直接人員は2010年時点で約6000人規模となっていますが、2020年には約25000人規模となって移転が完了することになります。間接人員を含めると2010年時点で約11000人、2020年時点で約33000人となります。
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この米側の計画書は2009年当時、米国政府(軍、海兵隊)のホームページに掲載されていたものです。
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2009年当時、NHKの日曜討論番組で普天間基地の辺野古移転問題について議論があったとき、司会者が「仮に辺野古基地ができたとしても、数年で海兵隊がグアムに移動したら,その後どうするんですか?」と聞いたら、長島政務官(民主党衆議院議員)は「そのときは、辺野古海兵隊飛行場を民間空港として使えばよい」などとうそぶいていました。
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私はこの番組を見ていて、政務官はなんて言うことを言うんだろうと思いました!
当時、長島政務官はとんでもないことを言うなと思っていたのですが、おそらく当時、政権幹部はこの事実を知っていたのではないかと推察します。
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というのも、日本政府(自民党時代)や沖縄海兵隊がグアムのアンダーセン基地に移る際の住宅などに2000億円から3000億円の財政補助を約束していたからです。もちろん、すぐに海兵隊ら全員が移るわけではないとしても、順次、海兵隊、その家族らがグアムに移ることは周知の事実だったのだと思います。
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にもかかわらず、数1000億円から1超円超をかけ、よりによって名護市辺野古沖に普天間代替施設をつくるのは、米軍側の都合ではなく、あくまでも日本側、さらにいえばそれにより大きな権益、利権を得る政治からの都合ではないかと推察します。
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一方、米国側は日本のそのような事情を仮に知っていても、自分たちの移設計画には大きな支障は無く、巨額の移設費用を日本政府から得られればそれでよいのです。
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当時(2009年〜2010年)これを詳細に知っていたのは、宜野湾市長だった伊波洋一さんだと思います。伊波さんは、移設計画、それにもとづいて米国側がグアムのアンダーセン基地に沖縄海兵隊の基地をつくるための環境アセスメント、米国で言うところの国家環境政策法(NEPA)によるEIS手続きを進めている実態を掴んでいました。
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何と、この時期、日本では防衛庁が辺野古に軍事飛行場を造るための環境影響評価の手続きを進めていたのです。
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米国(グアム)と日本(辺野古)の両方で基地建設の環境アセスメントが進められていることを知った伊波さんは、その事実を元に民主党政権に辺野古移設の中止を申し入れるため上京しますが、外務大臣、防衛大臣は伊波さんに会わず、また鳩山総理にも会わせず、政権幹部で伊波さんに会ったのは上記の長島政務官だけだったのです。
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この辺の経緯については、私のWebに詳細があり、かつテレビ局のインタビュー動画もあります。
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◆宜野湾市の伊波市長に聞く(動画)
日テレNEWS24米軍普天間基地を抱える沖縄・宜野湾市の伊波洋一市長が、日テレNEWS24の番組「代表質問」に出演し、普天間基地移設問題について小西美穂キャスターの質問に答えた。伊波市長は、米軍側の資料を基に海兵隊のグアム移転計画を分析したうえで、「辺野古移設を普天間返還の前提とする考えはおかしい」などと主張した。 |
◆グアムのアンダーセン基地の一角に計画された海兵隊基地
沖縄からグアムに行く海兵隊員の家族住宅建設場所は下図の左の□の地域だが、アンダーセン基地にはすでに二つの巨大な滑走路があり、計画概要図を見ると普天間代替施設としてそれらの飛行場を使う計画も示されている。
グアムのアンダーセン基地北部地域における飛行施設
(軍事用だけで2つある)
出典:伊波沖縄県宜野湾市長 日テレNEWS24の番組「代表質問」
グアムのアンダーセン基地北部地域の移転計画
グアムのアンダーセン基地南部地域の移転計画
出典:青山貞一:米国の海兵隊グアム移転計画と日本側の情報操作による世論誘導 |
伊波さんはその後、沖縄県知事選に立候補しますが、政党間の調整がつかず落選しています。
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私見では鳩山総理、小沢幹事長は、政権公約に準ずるかたちで普天間基地の海外、県外移設を標榜し、実際それに努力しましたが、部下である外務、防衛の大臣、政務官、事務次官らそれに官僚組織は、すべて自民党同様、米国一辺倒であり、ろくな努力もせず、海外、県外は困難となりました。
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ことはそれで終わらず、2010年に、菅直人氏が首相となり、いきなり日米ロードマップを踏襲すると公言したのです。
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したがって、万一辺野古米軍基地が出来ても2020年を待たずして、沖縄海兵隊はほぼ全部グアムに移ります。数千億円から一兆円超を費やし利権まみれでつくられた滑走路、飛行場は実質つかわれなくなります。
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それでも,上述のように,日本側は防衛利権、米国側はグアム移設利権を得ることになり、何ら日米同盟の間でのコンフリクトは生じないというのです。
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参考:
青山貞一:米国の海兵隊グアム移転計画と日本側の情報操作による世論誘導
ところで、以下は平成21年11月26日、衆議院第二議員会館において、与党国会議員に対して宜野湾市長による下記の内容の説明を行った全容です。
長文ですが、関心ある方はお読みください!
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◆伊波洋一(宜野湾市長)
「普天間基地のグアム移転の可能性について」
2009年11月26日 衆議院第二議員会館
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1.海兵隊のグアム移転が司令部中心というのは間違い。沖縄海兵隊の主要な部隊が一体的にグアムへ移転する。普天間飛行場の海兵隊ヘリ部隊も含まれる。
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● 「再編実施のための日米のロードマップ」(2006年5月1日)は次の通り。
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「約8000名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9000名は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する。移転する部隊は、第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群(戦務支援群から改称)司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部を含む。」
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「沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される。」
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同時に、X字型の1800メートルの滑走路を持つ普天間飛行場代替施設についても2014年までの建設の完成を目標とすることが合意された。
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● 2006年7月に、米太平洋軍司令部は、「グアム統合軍事開発計画」を策定し、同年9月にホームページに公開した。その中で「海兵隊航空部隊と伴に移転してくる最大67機の回転翼機と9機の特別作戦機CV−22航空機用格納庫の建設、ヘリコプターのランプスペースと離着陸用パッドの建設」の記述。すなわち普天間飛行場の海兵隊ヘリ部隊はグアムに移転するとされた。宜野湾市では、この開発計画を2006年9月公開と同時に入手して翻訳して市ホームページ上で公開した。
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● この「グアム統合軍事開発計画」について、宜野湾市としては普天間基地の海兵隊ヘリ部隊がグアムに移転する計画であるとしてきたが、前メア米国沖縄総領事は、紙切れにすぎないと言い、司令部機能だけがグアムに行くのだと主張した。しかし、この三年間この計画に沿ってすべてが進行しており、先週11月20日に、同計画に沿った「沖縄からグアムおよび北マリアナ・テニアンへの海兵隊移転の環境影響評価/海外環境影響評価書ドラフト」が公開された。ドラフトは、9巻からなり、約8100ページに及ぶが,概要版(Executive Summary)、及び第二巻「グアムへの海兵隊移転」と第三巻「テニアンへの海兵隊訓練移転」において、沖縄からの海兵隊移転の詳細が記述されている。海兵隊ヘリ部隊だけでなく、地上戦闘部隊や迫撃砲部隊、補給部隊までグアムに行くことになっている。
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● 2007年7月に、沖縄本島中部の10市町村長でグアム調査を行った。その際に、グアムのアンダーセン空軍基地副司令官に沖縄の海兵隊航空部隊の施設建設予定地を案内され「65機から70機の海兵隊航空機が来ることになっているが、機数については動いていて確定していない」との説明を受けた。
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● 2008年9月15日に、海軍長官から米国下院軍事委員会議長に国防総省グアム軍事計画報告書として「グアムにおける米軍計画の現状」が報告された。その中で沖縄から移転する部隊名が示されており、沖縄のほとんどの海兵隊実戦部隊と、岩国基地に移転予定のKC130空中給油機部隊を除いて、ヘリ部隊を含め普天間飛行場のほとんどの関連部隊がグアムに行くと示された。米海兵隊第1海兵航空団で図示すると黄色で表示した10部隊。
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● 2009年6月4日に米国海兵隊司令官ジェイムズ・コンウェイ大将が上院軍事委員会に「米国海兵隊の軍事態勢」に関する報告書を提出し、沖縄からグアムへの海兵隊の移転を評価して次のように記述している。
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Defense Policy Review Initiative (DPRI) 日米再編協議の重要な決定事項の一つは、約8000人の海兵隊員の沖縄からグアムへの移転である。これは、沖縄で海兵隊が直面している、民間地域の基地への侵害(encroachment)を解決するためのものである。
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グアム移転により、アジア・友好同盟国との協働、アメリカ領土での多国籍軍事訓練、アジア地域で想定される様々な有事へ対応するのに有利な場所での配備、といった新しい可能性が生まれる。
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適切に実施されれば、グアムへの移転は即応能力を備えて前方展開態勢を備えた海兵隊戦力を実現し、今後50年間にわたって太平洋における米国の国益に貢献することになる。
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グアムや北マリアナ諸島での訓練地や射撃場の確保が、海兵隊のグアム移転の前提であり必須条件である。
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補足説明:侵害(encroachment) は、米国内での住民地域と基地の関係を表現するときによく使われる表現である。既存の基地が不動産開発などによって住宅地等が接近してくることで、基地の活動に支障をきたすことに繋がり、基地への脅威となる状況。
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2.なぜ、司令部だけがグアムに行くとされてきたのか。
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理由は、1996年のSACO合意だった海兵隊ヘリ部隊の辺野古移転のイメージを基にした国会審議での答弁や、米国政府関係者の意図的な「発言」だけが報道され、2006年5月の「再編実施のための日米ロードマップ」合意に基づいて太平洋米軍司令部が策定した「グアム統合軍事開発計画」と実行されている同計画に基づく環境影響評価などの「事実」は報道もされず、検証もされなかったことによる。
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日本政府は、意図的に同計画について米国に照会することをせず、日米両政府は「グアム統合軍事開発計画」について「正式な決定ではない」として詳細は未定と押し通してきた。その結果、国会での答弁や日米政府関係者の発言は、「グアム統合軍事開発計画」について踏み込まず、2005年10月の「日米同盟:未来のための変革と再編」の合意の時点に固定されたままになった。結果的に、「発言や答弁」の報道に終始するマスコミの報道も同様となり、現在進行している「事実」は、国会議員にも政府関係者にも、国民にも共有されていない。
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「日米同盟:未来のための変革と再編」(2005年10月)の記述
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〇 第3海兵機動展開部隊(VMEF)司令部はグアム及び他の場所に移転され、また、残りの在沖縄海兵隊部隊は再編されて海兵機動展開旅団(MEB)に縮小される。この沖縄における再編は、約7000名の海兵隊将校及び兵員、並びにその家族の沖縄外への移転を含む。これらの要員は、海兵航空団、戦務支援群及び第3海兵師団の一部を含む、海兵隊の能力(航空、陸、後方支援および司令部)の各組織の部隊から移転される。
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(この時点でグアムへの全部移転は明確になっていない。約7000名は、ハワイ、グアム、本土各地に分散配置を検討した模様。)
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「再編実施のための日米ロードマップ」(2006年5月)の記述
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〇 約8000名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9000名は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する。
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〇 沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される。
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(第3海兵機動展開部隊全体が、沖縄からグアムに移転することになった。) |