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プーチン大統領の国連総会演説要旨

青山貞一 Teiichi Aoyama
September 29, 2015
独立系メディア E-wave Tokyo



 日本時間の2015年9月29日、ブラジル、米国、ポーランド、中国、ヨルダン、ロシア、大韓民国、イラン、フランス、カタール、モザンビーク、オランダ、カザフスタン、メキシコ、ポルトガル、デンマーク、エチオピアなどのリーダーにより国連総会演説が行われました。

 午前1時過ぎ、ロシアのプーチン大統領が演説を行いました。


ロシアのプーチン大統領が国連演説演説
出典:国連Webテレビ

 演説するプーチン大統領の上段にいる3人の左は、潘基文国連事務総長、中央はヴィタリー・チュルキン ロシア連邦国連大使です。


ロシアのプーチン大統領が国連演説演説
出典:国連Webテレビ


ロシアのプーチン大統領が国連演説演説
出典:国連Webテレビ


ロシアのプーチン大統領が国連演説演説
出典:国連Webテレビ

 以下はプーチン演説のエッセンスです。一字一句は、到着次第掲載します。

 演説はいずれも国連を無視し、ユニラテラリズム(一国中心主義)をとり続け、さらにEU、NATO諸国を巻き込み中東、北アフリカ、中南米諸国などを米国的「民主主義」化に巻きこんでいる米国を意識してのものとなっています。

 それは、

 @米国主導で進む拡大する経済エゴイズム
 A米国の誘導によるウクライナのEU、NATO化とロシアへの経済制裁、
 B米国が生みの親となっているISIL問題と大規模な難民流出問題、
 C米国による独善的な「民主主義輸出」がもたらす結末

などです。

 @は暗に欧米日によるロシアへの経済封鎖のみならず、米国主導で行われているTPPやFTAなど経済連携についての批判も含まれているものと思われます。

◆プーチン演説全文(英語)
Vladimir Putin's 2015 Address to the United Nations



 以下は要旨。

国連での意見の相違はいつの時代もあった

 国連は合法性、代表性そして普遍性において比類するもののないストラクチャーだ。

 たしかにここ最近は国連を指した批判は少なくない。あたかも国連は効果が不十分なところを見せ付けており、原則的な解決の採択が何よりもまず、国連安保理メンバー間の克服不可能な矛盾に立脚しているというものだ。

 だが指摘しておきたいが、国連での意見の相違は、組織が存在しつづけているこの70年の間、常にあったし、拒否権の発動もいつも行なわれていた。これを使ってきたのは米国であり、英国であり、フランスであり、中国であり、ソ連、後のロシアだった。これは、これだけ様々な顔を代表する組織にとってはしごく当然のことだ。」


◆「拡大する経済エゴ」は貿易体系の完全なる不均衡を孕む

「こんにち、国連憲章を迂回して一方的な決議を取ることはほぼ普通のこととなってしまった。これは政治的目的に追従するのみならず、市場のライバルを取り除く手段となっている。」

「拡大する経済エゴイズムのさらにもう一つの兆候を指摘すると、一連の国々は閉鎖的、排他的経済統合の道を選んだ。しかもこれを創設する交渉は水面下で行なわれており、自国民にも、自国の実業界にも世論にも、また他の諸外国にも秘密にされている。」

「おそらく我々全員に事実を突きつけたいのだろう。プレーのルールは書き直されており、また選ばれた者の狭い範囲に都合のよいように書き直されており、しかもここにはWTOの参加はないということを。これは貿易体系の完全なる不均衡、グローバル経済圏の再分化を孕んでいる。」


◆ウクライナの国家転覆は国外から煽動

「最初はNATO拡大路線が続行された…。何のためか?それから旧ソ連諸国には選択を突きつけられた。西側と共にあるか、東側と共にするか? 遅かれ早かれ、こうした対立的論理は深刻な地政学的危機を迎えるはずだ。そしてこれがウクライナで起きた。ウクライナでは圧倒的多数の住民の現行政権に対する不満が利用され、国外から武力クーデターが煽動された。その結果、燃え上がったのは内戦だ。」

欧州に押し寄せている難民について言及。「難民は苦しみを共にすることを必要としているが、グローバルな視点から、問題を解決するのために必要なことは、破壊されてしまった国家性の復興である。」

アラブ諸国が積極的に参加するテロ対策連合軍の創設の必要性を明言。

「本質はロシアの野心にあるのでない。世界に形成されつつある状況を耐えることは不可能。」


◆ISは無から発生せず、不要体制への対抗武器として養育された

「『イスラム国(IS)』は何もないところから発生したのではない。これは不要な体制に抗する武器として大切に育てられたのだ。」プーチン大統領はこう語った。

「シリアとイラクに対抗する前進基地として作られたISは積極的に他の地域へと勢力を拡大しており、イスラム世界の覇権を目指しているが、明らかにこれらの諸国だけには限定していない。状況は危険というレベルを超えている。」

「こうした状況で国際テロリズムの脅威を声高に語るのは偽善的であり、無責任だ。しかも麻薬売買、石油、武器の違法取引などのテロの資金供与チャンネルには目をつぶり、また急進主義的集団を操ろうとし、彼らを自分の政治的目的を達成するために働かせようとしている。」


◆「民主主義的革命の輸出」の結末について語る

「我々みんなが過去の教訓を忘れてはならない。我々はソ連の歴史の例を記憶している。社会的実験の輸出、自分のイデオロギー的状況から考え、他の諸国の変化を後押しする試みはしばしば悲劇的結果を招き、成長ではなく、退廃を招いた。

だが、他人の誤りに学ぼうという者はどうやら誰もおらず、間違い、革命の輸出を繰り返すだけで、それが今や、いわゆる『民主主義』(革命)という名で続けられている。」

「攻撃的な外からの介入の結果、国家制度の改革が起きる代わりに、暮らしのしきたりは不躾に破壊された。民主主義と成長が謳歌する代わりに暴力、貧困、社会のカタストロフィーが横行し、人権は、生きる権利も含め、一切掲げられていない」

1つの発展モデルに従う義務は誰にもない。

ロシアは広範なコンセンサスを土台に国連をあらゆるパートナーと共に拡大する構え。

国連の合法性を揺るがす試みは極めて危険。

国連を迂回するあらゆる行為は国際法に矛盾と強調

プーチン大統領は気候変動をグローバルな挑戦ととらえ、天然資源の枯渇と生息環境の破壊状況を話し合う特別フォーラムの創設を提案。

ロシアは国連の巨大なポテンシャルを信じる。

共に行動し、世界を安定し、安全なものにしよう。