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元八十二銀行頭取
茅野實氏の意見広告
掲載に関する公開質問状
(中日新聞社長宛)
 
青山貞一

2006年7月8日


             
                                  平成18年7月7日

名古屋市中区三の丸一丁目6番1号 中日新聞社
代表取締役社長 大島寅夫殿


 茅野實氏の意見広告掲載に関する公開質問状

                        青山貞一
                        〒142-0062
                        東京都品川区小山3-22-22                     
                        武蔵工業大学環境情報学部教授
                        同大学院環境情報学研究科教授
                          (担当:公共政策論)

前略

貴社の中日新聞、2006年6月15日朝刊に元八十二銀行頭取の茅野實氏が掲載した意見広告「鳴りやまぬ『目覚まし時計』をもう止めましょう」(複写を添付)につき、以下、公開質問致します。到着後1週間以内に郵送にてご回答を下さるようお願い申し上げます。

1.
茅野實氏の意見広告の新聞掲載は、知事選挙告示が迫った段階でのものであり、すでに総務省選挙部の判断においても公職選挙法第129条(事前運動)の適用時期に相当する可能性があるとされております。これは、別紙1の「新聞広告倫理綱領」にあるように、「1. 新聞広告は、関係諸法規に違反するものであってはならない。」という倫理綱領に抵触する可能性があると考えられますが、貴社が違法の可能性がある意見広告を掲載したことについて、どういう見識、見解をお持ちかお聞かせください。

2.

次に、茅野實氏の意見広告の新聞掲載は、公職選挙法第148条の2(新聞紙、雑誌の不法利用等の制限)に抵触する可能性があります。これも、別紙1の「新聞広告倫理綱領」にあるように、「1. 新聞広告は、関係諸法規に違反するものであってはならない。」という倫理綱領に抵触する可能性もあると考えられますが、このことについて貴社はどういう見識、見解をお持ちかお聞かせください。

(新聞紙、雑誌の不法利用等の制限)第148条の2
何人も、当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者に対し金銭、物品その他の財産上の利益の供与、その供与の申込若しくは約束をし又は饗応接待、その申込若しくは約束をして、これに選挙に関する報道及び評論を掲載させることができない。
2 新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者は、前項の供与、饗応接待を受け若しくは要求し又は前項の申込を承諾して、これに選挙に関する報道及び評論を掲載することができない。
3 何人も、当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて新聞紙又は雑誌に対する編集その他経営上の特殊の地位を利用して、これに選挙に関する報道及び評論を掲載し又は掲載させることができない。

3.
別紙1の「新聞広告倫理綱領」によれば、「本来、広告内容に関する責任はいっさい広告主(署名者)にある。しかし、その掲載にあたって、新聞社は新聞広告が及ぼす社会的影響を考え、不当な広告を除し、読者の利益を守り、新聞広告の信用を維持、高揚するための原則を持つ必要がある。」としています。

茅野實氏の意見広告内容に関する責任は一義的には広告主にあるとしても、新聞社は新聞広告の及ぼす社会的影響からして、また不法、不当な広告を除するという倫理綱領との関連において同規定を逸脱していると思われますが、これについて貴社はどういう見識、見解をお持ちかお聞かせください。

4.
茅野實氏は、かねてより各種新聞の記事上で田中康夫長野県知事に対する批判的意見や非難を開陳されています。しかし、今回の意見広告は知事選挙の告示を間近に新聞上に掲載したものです。しかも、そこでは「2004年8月に最初のイエローカード!」、「2005年3月に2回目のイエローカード!」と中見出しが続き、「もうレッドカードを出させてもらうしかありません!」が3本目となっています。

ご承知のように、Jリーグ発足から満15年。今やサッカーの愛好家にとどまらず、全国津々浦々において「レッドカードを出させて貰う」と断ずる意見広告とは、即ち、長野県知事を辞職せよ、を意味します。しかも「もうレッドカードを出させてもらうしかありません!」は、同時に次の試合への出場停止、すなわち今回の長野県「知事選挙に出る資格はない」と言っているのと同じになります。さらに申せば、ピッチに入ったなら、審判員に場外に追い出されることになります。つまりは立候補するな、 立候補したなら有権者たる審判員に投票するなとっているのが、茅野實氏の意見広告であるといえます。

これらの表現は、1.に述べた公職選挙法の第129条(事前運動)および同法第148条の2(新聞等の不法利用)に抵触する可能性があると同時に、日本新聞協会の別紙2の新聞広告掲載基準 第10項、すなわち、「10.名誉棄損、プライバシーの侵害、信用棄損、業務妨害となるおそれがある表現のもの」であると考えられます。貴社は基準に抵触する広告は掲載しないと言う新聞広告倫理との関連についていかなる見識、見解をお持ちになるかお聞かせください。

5. 
周知のように、名誉毀損などに係わる訴訟では、広告であれ記事を執筆した者のみならず、掲載した媒体(新聞、雑誌等)にも損害賠償、慰謝料、謝罪広告等が請求されるのが一般的となっております。

新聞協会の別紙1の「新聞広告倫理綱領」でも「本来、広告内容に関する責任はいっさい広告主(署名者)にある。しかし、その掲載にあたって、新聞社は新聞広告の及ぼす社会的影響を考え、不当な広告を除し、読者の利益を守り、新聞広告の信用を維持、高揚するための原則を持つ必要がある。」としております。公職選挙法に抵触することとあわせ、立候補が予定される者の名誉を一方的に毀損する可能性がある意見広告を掲載されたわけですが、これについていかなる見識、見解をお持ちになるのかお聞かせください。
                         
6.
日本新聞協会では、別紙3の「新聞倫理綱領」を設けています。そこでは、@自由と責任、A正確と公正、B独立と寛容、C人権と尊重、D品格と節度が倫理として掲げられております。しかし、今回の意見広告掲載は、これらの倫理綱領を逸脱する可能性があるものと推察されます。これについていかなる見識、見解をお持ちになるのかお聞かせください。



中日新聞2006年6月16日掲載、茅野實氏の意見広告




別紙1 新聞広告倫理綱領
1958(昭和33)年10月7日制定・1976(昭和51)年5月19日改正

制定の趣旨
言論・表現の自由を守り、広告の信用をたかめるために広告に関する規制は、法規制や行政介入をさけ広告関係者の協力、合意にもとづき自主的に行うことが望ましい。

本来、広告内容に関する責任はいっさい広告主(署名者)にある。しかし、その掲載にあたって、新聞社は新聞広告の及ぼす社会的影響を考え、不当な広告を排除し、読者の利益を守り、新聞広告の信用を維持、高揚するための原則を持つ必要がある。ここに、日本新聞協会は会員新聞社の合意にもとづいて「新聞広告倫理綱領」を定め、広告掲載にあたっての基本原則を宣言し、その姿勢を明らかにした。もとより本綱領は会員新聞社の広告掲載における判断を拘束したり、法的規制力を持つものではない。

日本新聞協会の会員新聞社は新聞広告の社会的使命を認識して、常に倫理の向上に努め、読者の信頼にこたえなければならない。

1. 新聞広告は、真実を伝えるものでなければならない。
1. 新聞広告は、紙面の品位を損なうものであってはならない。
1. 新聞広告は、関係諸法規に違反するものであってはならない。



別紙2 新聞広告掲載基準
1976(昭和51)年5月19日制定・1991(平成3)年3月20日一部改正

 「新聞広告倫理綱領」の趣旨にもとづき、「新聞広告掲載基準」を次のとおり定める。
以下に該当する広告は掲載しない。

1. 責任の所在が不明確なもの。

2. 内容が不明確なもの。

3. 虚偽または誤認されるおそれがあるもの。誤認されるおそれがあるものとは、つぎのようなものをいう。
(1) 編集記事とまぎらわしい体裁・表現で、広告であることが不明確なもの。
(2) 統計、文献、専門用語などを引用して、実際のものより優位または有利であるような表現のもの。
(3) 社会的に認められていない許認可、保証、賞または資格などを使用して権威づけようとするもの。
(4) 取り引きなどに関し、表示すべき事項を明記しないで、実際の条件よりも優位または有利であるような表現のもの。

4. 比較または優位性を表現する場合、その条件の明示、および確実な事実の裏付けがないもの。

5. 事実でないのに新聞社が広告主を支持、またはその商品やサービスなどを推奨、あるいは保証しているかのような表現のもの。

6. 投機、射幸心を著しくあおる表現のもの。

7. 社会秩序を乱す次のような表現のもの。
(1) 暴力、とばく、麻薬、売春などの行為を肯定、美化したもの。
(2) 醜悪、残虐、猟奇的で不快感を与えるおそれがあるもの。
(3) 性に関する表現で、露骨、わいせつなもの。
(4) その他風紀を乱したり、犯罪を誘発するおそれがあるもの。

8. 債権取り立て、示談引き受けなどをうたったもの。

9. 非科学的または迷信に類するもので、読者を迷わせたり、不安を与えるおそれがあるもの。

10.名誉棄損、プライバシーの侵害、信用棄損、業務妨害となるおそれがある表現のもの。

11.氏名、写真、談話および商標、著作物などを無断で使用したもの。

12.皇室、王室、元首および内外の国旗などの尊厳を傷つけるおそれがあるもの。

13.アマチュアスポーツに関する規定に反し、競技者または役員の氏名、写真などを利用したもの。

14.オリンピックや国際的な博覧会・大会などのマーク、標語、呼称などを無断で使用したもの。

15.詐欺的なもの、または、いわゆる不良商法とみなされるもの。

16.代理店募集、副業、内職、会員募集などで、その目的、内容が不明確なもの。

17.通信販売で連絡先、商品名、内容、価格、送料、数量、引き渡し、支払方法および返品条件などが不明確なもの。

18.通信教育、講習会、塾または学校類似の名称をもちいたもので、その実体、内容、施設が不明確なもの。

19.謝罪、釈明などの広告で広告主の掲載依頼書(または承諾書)の添付のないもの。

20.解雇広告で次の項目に該当するもの。
(1) 解雇証明書の添付のないもの。
(2) 解雇理由を記述したもの。
(3) 被解雇者の写真を使用したり、住所などを記載したもの。

21.以上のほか、日本新聞協会の会員新聞社がそれぞれ不適当と認めたもの。
 (付記)以上は「新聞広告掲載基準」のモデルである。日本新聞協会の会員新聞社が、「広告掲載基準」を作成される場合は、この基準を参考とされたい。



別紙3 新聞倫理綱領
2000(平成12)年6月21日制定

 21世紀を迎え、日本新聞協会の加盟社はあらためて新聞の使命を認識し、豊かで平和な未来のために力を尽くすことを誓い、新しい倫理綱領を定める。

 国民の「知る権利」は民主主義社会をささえる普遍の原理である。この権利は、言論・表現の自由のもと、高い倫理意識を備え、あらゆる権力から独立したメディアが存在して初めて保障される。新聞はそれにもっともふさわしい担い手であり続けたい。

 おびただしい量の情報が飛びかう社会では、なにが真実か、どれを選ぶべきか、的確で迅速な判断が強く求められている。新聞の責務は、正確で公正な記事と責任ある論評によってこうした要望にこたえ、公共的、文化的使命を果たすことである。

 編集、制作、広告、販売などすべての新聞人は、その責務をまっとうするため、また読者との信頼関係をゆるぎないものにするため、言論・表現の自由を守り抜くと同時に、自らを厳しく律し、品格を重んじなければならない。

 自由と責任 表現の自由は人間の基本的権利であり、新聞は報道・論評の完全な自由を有する。それだけに行使にあたっては重い責任を自覚し、公共の利益を害することのないよう、十分に配慮しなければならない。

 正確と公正 新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。論評は世におもねらず、所信を貫くべきである。

 独立と寛容 新聞は公正な言論のために独立を確保する。あらゆる勢力からの干渉を排するとともに、利用されないよう自戒しなければならない。他方、新聞は、自らと異なる意見であっても、正確・公正で責任ある言論には、すすんで紙面を提供する。

 人権の尊重 新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する。報道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる。

 品格と節度 公共的、文化的使命を果たすべき新聞は、いつでも、どこでも、だれもが、等しく読めるものでなければならない。記事、広告とも表現には品格を保つことが必要である。また、販売にあたっては節度と良識をもって人びとと接すべきである。