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がれき広域処理の合理的根拠なしA
合同調査チーム緊急速報
青山貞一・池田こみち・鷹取敦・奈須りえ
掲載月日:2012年6月9日、6月25日更新

 
独立系メディア E−wave Tokyo
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注) 2015/6/25更新:表1、図2、図3に仙台市受託分に関する注釈を追記

はじめに

 2012年6月3日の緊急報告では、主として宮城県におけるがれき処理量の大幅見直しと合計31基に及ぶ被災地に設置する仮設焼却炉・溶融炉によって「がれきの広域処理」は、もはや何ら根拠がなくなったことを報じた。

 これは本年2月から環境省及び被災地自治体である宮城県、岩手県、仙台市、関連市町村への現地調査、直接ヒヤリング調査などを行ってきた環境行政改革フォーラム特別調査チーム(※1)奈須りえ議員調査グループ(※2)による合同調査チームが徹底調査してきたもので、前回は宮城県関連のがれきの広域処理は、定量データ収集とその解析により、広域処理の必要性に関する合理的な根拠がまったく存在しないことを報じた。

  ※1 環境行政改革フォーラム特別調査チーム 
      青山貞一代表(環境総合研究所顧問、東京都市大学名誉教授)
      池田こみち副代表(環境総合研究所顧問、元福島大学講師)
      鷹取敦事務局長(環境総合研究所代表取締役、法政大学講師)

      がれき広域処理問題特設ページ

  ※2 奈須りえ議員調査グループ
      奈須りえ(東京都大田区議会議員)
      大田レディース(東京都大田区の女性調査スタッフ)

      ブログ:奈須りえ日誌

 その後、2012年6月8日、合同調査チームの会合が環境行政改革フォーラムの事務局(東京都品川区)で開催され、宮城県のみならず、岩手県についても定量データ収集とその解析により、その必要性に関する合理的な根拠がまったく存在しないことが判明した。

 さらに、合計31基に及ぶ宮城県、岩手県、仙台市に設置する仮設の焼却・溶融炉及びそれに関連した各種瓦礫処理業務の詳細が宮城県、岩手県、仙台市、環境省へのインタビュー調査などにより判明した。 その合計金額は実に、4,922億円の巨額に達する。

 ここでは以下に、2012年6月8日に環境行政改革フォーラムの事務局で実施した合同調査チームの調査概要を速報する。またYou Tube / USTREAM の動画による第三回目の座談会でも本件について詳報する予定である。 

 以下は合同チームからの速報である。

@見直し前後の<宮城県>の広域処理希望量
 ※宮城県の見直しにより広域処理希望量は大幅に激減

 2012年5月17日、参議院議員会館102号室で行われた緊急議員学習会で青山貞一が講演・報告の中でも国会議員、地方議員に速報したことだが、この4月、村井宮城県知事が会見し、宮城県内の焼却対象となる可燃・木質がれきの多くが太平洋の洋上に流出したことで、当初、想定していたがれきの総量が大幅に削減したことを報告した。

 その結果、宮城県が当初予定していたがれきの広域処理希望量は当初の1/4程度に大幅に減少している。以下は宮城県知事の会見の概要(河北新報)である。

河北新報(2012424
県外がれき処理、350万トンより圧縮 洋上流出予想以上

 村井嘉浩宮城県知事は23日、東日本大震災で発生した宮城県内のがれき約1570万トンのうち、国や県が県外処理を必要とする350万トンについて「かなり圧縮できる」との見通しを示した。同日あった細野豪志環境相との会談後、記者団の取材に語った。村井知事は、会談で新たに6府県に広域処理を要請する方針が示されたことを受け「県外へのお願いはこれで打ち止めと受け止めている」と述べた。圧縮理由について知事は「津波で洋上に流されたがれきが予想以上に多かった。総量は相当程度減るのではないか」と説明。


 上記の村井知事の会見では具体的な数字を示していないが、その後、奈須大田区議らが宮城県に直接電話などでヒヤリングしたところ、数値が明らかになった。 当初、石巻市分を中心に広域処理希望量が圧倒的に多かった宮城県では希望量が大幅に減った。

 表1及び図1は、合同調査チームによる情報収集と解析の結果分かった現時点での仙台市分を含む宮城県の焼却処理量である。当初の広域処理希望量が圧倒的に多かった宮城県における見直し前後のがれき処理量と広域処理希望量の数値である。焼却処理の広域処理希望量の見直し前後をご覧頂きたい。

 以下はその数字である。宮城県のがれき広域処理の希望量は、表1の茶色の部分に右端にある27.9万トンとなった。

表1 宮城県受託分のがれき量(仙台市への焼却委託分10万tを含む)

処理方法  総量[万t]    県内処理計画量[万t]   広域処理希望量[万t] 
見直し前 見直し後  見直し前 見直し後 見直し前 見直し後
再生利用 592.8 385.6 490.2 331.5 102.6 54.1
焼却処理(仙台市受託分10万tを含む) 295.5 203.4 170.7 175.5 124.8 27.9
焼却処理(仙台市受託分10万tを含まない) 295.5 193.4 170.7 165.5 124.8 27.9
売却 68.7 46.0 68.7 46.0 0.0 0.0
最終処分 132.1 77.9 56.1 38.7 76.0 39.2
小計 1089.1 712.9 785.7 591.7 303.4 121.2
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム


図1 宮城県受託分がれき処理量の見直し前後の量
   ※全体とあるのは木質系がれきなど可燃がれき以外のがれきを含むという意味
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム

 図2は、宮城県受託分の焼却処理の受託分である。見直し前後で県内処理はほとんど変わっていないが、広域処理希望量は1/4以下に激減していることが分かる。


図2  宮城県受託分(がれき焼却処理量)の見直し前後の量
注:見直し後の数値165.5万tと仙台受託分10万tを合計した175.5万tが宮城県受託分合計
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム

 図3は図2のグラフを拡大したものだが、可燃物の広域処理量は27.9万トンと激減している。


図3 宮城県受託分の焼却処理量
注:見直し後の数値165.5万tと仙台受託分10万tを合計した175.5万tが宮城県受託分合計
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム

 もとより、国(環境省)、宮城県が当初見積もったあらゆるがれきの量は非常にアバウトな数であり、大幅な見直しとなったのは、村井知事が述べた洋上流出を含め、もともとの焼却の対象となる建設廃材などの木材系のがれきの量が大幅に減ったことが大幅な見直しの主因となっている。これらについては宮城県を中心に担当部署に電話などで直接確認した。

 合同調査チームは、環境省が昨年来、高額の省予算を取るためがれきの処理量を大幅に水増ししていたのではないかという疑惑も浮上している。
 

A見直し前後の岩手県の広域処理希望量
  ※岩手県は見直しにより増加したが、増加分は不燃がれき結果として
    広域処理希望量は激減


 一方、岩手県は見直しにより一旦広域希望量が当初の予定量より大きく増えたものの、増えた多くは実は焼却処理物以外のがれきであることがわかった!

 さらに、岩手県では可燃物の多くをセメント会社などで処理していることからから、もともと宮城県に比べると可燃物の広域処理希望量は大幅に少ない量となっている。その結果、可燃の広域処理希望量は、見直し前の50万トンから33.1万トン(表2の茶色部分)へと大幅に減っている。

表2 岩手県受託分のがれき量
種別     総量
[万t]  
県内処理計画量
[万t]
広域処理希望量
[万t]
見直し前 見直し後 見直し前 見直し後 見直し前 見直し後

業者
県内
業者
焼却・埋立・リサイクル・復興資材        可燃物 72.8 63.4 78 19.4 28.7 48.1 3.0 15.3
木くず 59.3 24.2 5 1.2 3.8 5.0 47.0 17.5
ふるい下分 0.0 16.4   0.0 16.4 16.1 0.0 0.3
不燃物 44.1 104.5 44 6.4 1.4 7.8 7.0 89.0
漁具・魚網 - -     0.0 0.0 0.0 0.0 5.4
わら(畳) 1.0 1.4    0.8 0.0 0.8 0.0 0.0
その他 7.7 13.8 292 7.5 0.0 7.5 0.0   0.0
もやすもの(可燃物+木くず+ふるい下分+わら(畳))小計 133.1 105.4 83.0 21.4 48.6 70.0 50.0 33.1
再生利用・復興資材   金属くず 73.4 24.6    19.0 0.0 19.0 0.0 0.0
コンクリートがら 99.1 146.6   120.4 0.0 120.4 0.0 0.0
津波堆積物 78.0 130.4   130.4 0.0 130.4 0.0 0.0
計  435 525 419 305 50 355 57 120
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム


図3 岩手県受託分がれき処理量の見直し前後の量
   ※全体とあるのは木質系がれきなど可燃がれき以外のがれきを含むという意味
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム


図4 岩手県受託分(がれき焼却処理量)の見直し前後の量
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム


B被災地に設置される仮設焼却・溶融炉の処理能力
 ※31基(宮城県26、岩手県2、仙台市3)の炉で処理能力激増!


 この1年かけ環境省が被災地自治体である宮城県、岩手県、仙台市(政令指定都市)に新規に設置する仮設の焼却・溶融炉、合計31基がこの7月中に稼働することになった。31基の処理量は、日量で4700トンとなる。

 これも参議院議員会館での緊急議員学習会で青山が報告したことだが、報告時は27基としていたが、その後の調査で27基が31基に4基も増えたことになる。

 表3は、合同調査チームによる仮設の焼却炉など31基についてのブロック別、地域別の基数と処理能力に関する調査結果である。被災地に仮設される31基は、宮城県(26基)、岩手県(2基)、仙台市(3基)の内訳となっている。

表3 宮城県・岩手県の仮設焼却炉の立地地区と基数、処理能力

仮設焼却炉    焼却炉数
[基] 
 処理能力
[t/日]
宮城県           気仙沼
ブロック  
南三陸処理区   3 285
気仙沼
処理区 
階上地区  2 400
小泉地区  2 300
石巻ブロック    5 1,500
亘理・名取
ブロック   
名取処理区   2 190
岩沼処理区  3 195
亘理処理区  5 525
山元処理区  2 300
東部ブロック    2 320
宮城県(仙台市以外)合計    26 4,015
仙台市    3 480
宮城県合計  29 4,495
岩手県  宮古地区    1 95
釜石地区    1 100
岩手県合計     2 195
宮城県・岩手県合計       31 4,690

出典:災害廃棄物の広域処理、平成2421日環境省及び被災地自治体ヒヤリング
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム

 上記は奈須議員らによる宮城県などへの直接ヒヤリングにより判明したものだが、2012年6月1日に池田こみちが実施した環境省担当部署への直接電話ヒヤリングでも同じ内容が確認され、環境省の公表資料でも同数が確認されている。

 宮城、岩手、仙台市の被災地で31基もの仮設焼却炉・溶融炉が7月中には全面的に稼働開始すること、これらの基数と各焼却炉、溶融炉の1日単位の処理可能量などについては環境省担当部署に確認、さらに建設費、維持管理費は宮城県のウェブサイトから確認済みである。

 以下の図5に計画されこの7月から稼働を開始する仮設の焼却炉・溶融炉の日量の処理能力(万トン)をグラフに示した。合計で約4700トン/日である。


 宮城県・岩手県の仮設焼却炉の処理能力等
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム


<宮城県受託分の処理能力>

 
図6は、稼働日数を年間273日、年間365日と前提した場合の宮城県受託分の焼却処理量と焼却処理能力を推計している。図6から年間273日のペースの場合、期限内に宮城県内の仮設炉で164.6万トン、仙台市受託分が10万トン、併せて174.6万トンの可燃物を処理する能力があることが分かる。

 次に年間365日のペースの場合には、期限内に宮城県内の仮設炉で220万トン、仙台市受託分が10万トン、併せて230万トンの可燃物を処理する能力があること、すなわち広域処理が不要なこととなる。


図6 宮城県受託分の焼却処理量と焼却処理能力
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム

 したがって、年間365日の稼働ペースの場合、期限内に230万トンの処理能力があり、宮城県受託分の見直し後の可燃ゴミ処理量203.4万トンを遙かに上回ることから、期限内に処理が完了することが分かる。



7  宮城県内の災害廃棄物処理分担イメージ
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム


<岩手県受託分の処理能力>

  図8は、見直し前後の岩手県受託分の処理能力である。処理能力は見直し前後で大きくは変わらないが、2基の仮設焼却炉が年間365日ベースで10.7万トン、岩手県内にある基礎自治体の既設焼却炉による処理量が岩手県へのヒアリングによると44.0万トン、そして県内のセメント工場により処理量が48.6万トン、合計で合計103.3万トンとなる。

 したがって、処理量が年間365日ベースの場合、全体の処理能力が103.3万トンなり、図4の見直し後の処理必要量の103.1トンを上回ることになる。すなわち広域処理が不要なこととなる。

図8 岩手県の焼却処理量と焼却処理能力
出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チーム


C宮城県の災害廃棄物処理業務について

 上記の宮城県、岩手県、仙台市に設置、稼働する31基に及ぶ焼却・溶融炉の建設費用、がれきの収集運搬、維持管理、重機損料などの費用は、ブロックごとに異なる。前回までに宮城県から公表されていたブロック別の価格、さらに最後まで残り6月7日に宮城県からFAXで届いた石巻ブロックを含めた事業費の合計額は、4,922億円という途方もない予算(参考業務価格)で宮城県においてゼネコンを中心とするJVに発注されている。

 表3は宮城県の災害廃棄物処理業務・参考業務価格等を示している。

表3 宮城県の災害廃棄物処理業務・参考業務価格等

 ブロック  自治体   参考
業務
価格
(億円)
災害廃棄物
推計量
(千t) 
 JV代表社
石巻ブロック  石巻市、東松島市、女川町 2,289  鹿島建設
亘理・名取
ブロック
名取処理区  名取市 193   526 西松建設
岩沼処理区 岩沼市 283   327  間組
亘理処理区 亘理町 647   508  大林組
山元処理区 山元町 394   738  フジタ
宮城東部ブロック  塩竈市、多賀城市、七ヶ浜町 280   607  JFE
エンジニアリング
気仙沼
ブロック 
南三陸処理区 南三陸町  261  365   清水建設
気仙沼処理区 気仙沼市  575  1,435  大成建設
 合計(石巻ブロックを含まない) 4,922  10,088  
資料:宮城県災害廃棄物処理業務プロポーザル審査結果、
   環境省資料(災害廃棄物推計量)

 なお、以下はブロック別の災害廃棄物処理業務のプロポーザル審査の結果である。

宮城県 災害廃棄物処理業務の概要(JV発注分)

災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)プロポーザル審査結果について

災害廃棄物処理業務(亘理名取ブロック(名取処理区))におけるプロポーザル審査結果について

災害廃棄物処理業務(亘理名取ブロック(岩沼処理区))におけるプロポーザル審査結果について

災害廃棄物処理業務(亘理名取ブロック(亘理処理区))におけるプロポーザル審査結果について

災害廃棄物処理業務(亘理名取ブロック(山元処理区))におけるプロポーザル審査結果について

災害廃棄物処理業務(宮城東部ブロック)におけるプロポーザル審査結果について

災害廃棄物処理業務(気仙沼ブロック(南三陸処理区))におけるプロポーザル審査結果について

災害廃棄物処理業務(気仙沼ブロック(気仙沼処理区))におけるプロポーザル審査結果について

 当該業務では、本来、焼却・溶融炉メーカーが前面に出るべきであるが、なぜか業務を引き受ける側には、焼却炉・溶融炉メーカーは一切名称がない。

 ここでも除染事業同様、ゼネコン各社となっている。しかも、きれいに大手ゼネコン各社に分配されていることが分かる。

 さらに、表4を見ると 発注額/参考業務価格 が一律に84%であり、どうみても業者間さらには行政機関が絡んで価格調整が行われた形跡がある。いわゆる談合である。

 すなわちこの国策と言ってもよい巨大業務の民間事業者への発注に際しては、どうみても市場原理は働いているとは思えず、大手ゼネコン全体で価格が調整されていることが伺える。これについては、別途詳細調査を行い場合によっては、公正取引委員会あるいは東京地検特捜部に刑事告発を行うものとする。


出典:環境行政改革フォーラム+奈須議員+大田レディース合同調査チームが宮城県から入手した資料に基づき作成

 合同調査では、ホームページに告知されている情報及び環境省、被災地自治体への直接インタビューにより業務発注の形態(入札、指名競争入札、プロポーザル方式、総合評価方式、随意契約など)、落札価格、落札JV業者名なについても問い合わせて、費用に関しては、焼却炉・溶融炉の建設費、がれきの収集運搬、維持管理、終了後の撤収費など内訳を聞いているが、環境省側はその内訳については現状では把握していないといい宮城県は現時点で回答していない。

Dがれき広域処理は二重投資であり即刻中止すべきである!

 環境省は、2年間で1兆数1000億円かけ被災地における仮設焼却、溶融炉建設、稼働、維持管理、撤去に金を投入するとともに、他方で広域処理に手を挙げた自治体(都道府県、政令指定都市、基礎自治体)に補助金、交付金の形で湯水のような財政支援をしている可能性が高い。

 自治体へのがれき処理関連の補助率は95%とされており、機材、機器、維持管理、固定費などなどありとあらゆるものが対象となっている実態がある。これらは税金、公金の二重投資であり、環境省は即刻がれき広域処理を停止させなければならないだろう。

 この間、全国各地から呼ばれ広域処理問題について行った講演会で指摘してきた通り、受け入れを表明している自治体には、まさに、この機に乗じて焼却施設の更新、バグフィルターなどの機材の更新、通常の維持管理費、固定費を国から得ようとしている事例も多くある。

 またがれき広域処理に都道府県や市町村が民間の産廃業者を絡ませ、産廃業者に1トンあたり高額の処理費を支払い最終的に環境省に請求書を出すことが推察される。

 さらに都道府県、政令指定都市、基礎自治体の中には自治体が出資した第三セクターで処分場をもっている場合があり、その焼却施設や処分場に1トンあたり通常よりはるかに高額の処分料を自治体が支払い、それを国に請求することが推察される。

 ※通常の産業廃棄物は1トンあたり1.8万円から3万円程度であるが、今回の
   広域処理では、1トンあたり最高6.8万円(運送費含む)という異常に高額の
   例もあることが分かっている。また北九州市では試験焼却用のがれきの運搬
   費に1トン当たり17万円超をかけているという情報も入手している。

 上記の中には、業務の再委託などで地方自治法、地方財政法に違反する可能性がある事案も見受けられている。

 問題の本質、正体はどこにあるかと言えば、
  背景には、「がれき広域処理」を理由に
  環境省とスーパーゼネコンによる
  利益誘導の可能性が高い!


◆政策提言
 
被災地のがれき広域処理の合理的根拠はなく、
 環境省は、即刻、広域処理の停止を宣言すべきである


 以上速報したように、すでに震災がれきの広域処理の根拠はまったくないことが分かった。ここに報告した内容は環境省自身が十分把握しているはずである。

 仮に放射能濃度が低い場合であっても、放射性物質はじめ焼却することで各種汚染物質が発生する可能性が高い災害瓦礫を1000km以上運搬し、住宅地近くの既存の焼却炉・溶融炉で焼却処理することはLCA(ライフサイクルアセスメント)から見ても地球温暖化対策の観点から見ても愚行であると言わざるを得ない。

 日本は先進諸国で最もゴミを燃やし埋め立てるいわゆる「ゴミ焼却主義」大国である。日本のゴミ政策は、何でも燃やして埋める思考停止の施策しかない。このゴミ焼却主義は、巨額の費用がかかり、かつ燃やさなければ出ない多くの種類の有害化学物質により空気と水を汚染する。

◆青山貞一:災害廃棄物広域処理への疑問 岩波書店「科学」,2012年5月号

 もとよりゴミは分別すれば資源であり、カナダノバスコシア州における20年近くに及ぶ社会実験では、燃やして埋める日本的ゴミ処理に比べ、脱焼却と5Rにより雇用が10倍近く増加したという実証的報告もある。

青山貞一:ゴミ半減、カナダ・ノバスコシア州 5 年で実現
  読売新聞

青山貞一・池田こみち:カナダ・ノバスコシア州の廃棄物資源管理 
  月刊廃棄物


青山貞一:脱焼却、脱埋立への挑戦〜ノバスコシア州の循環型社会実験〜前編
  月刊廃棄物

青山貞一:脱焼却、脱埋立への挑戦〜ノバスコシア州の循環型社会実験〜後編 
  月刊廃棄物


 巨額の税金、公金を浪費し、放射性物質、有害化学物質、温室効果物質を増やす広域処理は即刻中止しなければならない。その意味で、環境省はいち早く、「撃ち方止め」宣言を行い、がれきの広域処理は不要なことを宣言すべきである。

 全国で受け入れをめぐり紛争が起きており逮捕者、けが人まで出している現状をいち早く終息すべきである。

 また私たちが昨年夏以来、政策提言(以下を参照のこと)しているがれきによる防潮堤、防波堤づくりだが、横浜国大名誉教授の宮脇昭さんの提案についても、環境省はいろいろ揚げ足を取って反対してきたが、私たちの案を受け入れれば、巨額の公金、税金によって仮設の焼却炉をつくる必要もなく、今後の津波にも備えうる防潮堤、防波堤も地元の力で構築でき、一石二鳥、一石三鳥となる!

本速報の文責は青山貞一

◆青山貞一・池田こみちの3.11からの復旧・復興への政策提言
        独立系メディア E-wave Tokyo
(2011年8月版)
◆青山貞一・池田こみち 復旧・復興提案@がれき処理・防潮堤
◆青山貞一・池田こみち 復旧・復興提案A高台移転


◆青山貞一・池田こみちの3.11からの復旧・復興への政策提言
      
日本計画行政学会誌 計画行政 34(4),2011   
◆池田こみち:東日本被災地の廃棄物資源管理戦略
◆青山貞一:東日本大震災後の持続可能社会構築の諸要件