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小出裕章氏
(京大原子炉実験所)
インタビュー


初出:毎日放送ラジオ
2011年3月24日
独立系メディア E-wave Tokyo


出典:2011年3月23日毎日放送ラジオ
  「たねまきジャーナル」 放送時間 21:30〜22:30

インタビューア 毎日放送ラジオ 水野晶子アナ
解説       毎日新聞(大阪) 平野氏

(水野)京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんです。こんばんわ。今夜もよろしく。まず、東京の水道水で乳児の基準値を超える値が出てきたと言う話なんですが、福島第一原発から200qもはなれてるというところで、基準値の倍を超える値が出てるのに驚いています。

(小出)原子力発電所が爆発した場合、風に乗って放射性物質が流れるんです。風向きが悪ければ、風下に入ったら町まちを襲っていく訳で、例えば今月3月15日に福島原発から放出された放射能が東京をずーと汚染していったデータがすでに得られています。もしそういう事実があるのであれば、もう水道水などと何だろうと汚れてしまうのは仕方のない事です。

(水野)何百キロ離れていたから来ない、というわけでなく、風向き次第なんですか?

(小出)ヨウソは揮発性の高い物質で、近くで落ちてくれなくて、大変遠くへ運ばれてしまう。セシウムという元素もそうですけど、200q離れてるから安心だとかとは思わない方がよい。

(水野)小出さんご自身が、東京の大気がどのようになってるか、放射性物質が飛んで来てるかのどうかのデータをお持ちなんですよね。これによると、今の大気ていうのはどのような状況なんでしょうか?

(小出)ごめんなさい、私が測定したのは東京で放射能の濃い雲が届いた15日の1日だけなんです。私が計れたのは。それ以後は実は私は計れてなくて、他は東京都がずっと計っています。そのデータは東京都が公表していますけれど、一番ひどかったのはやはり3月15日だったようです。それが今、水道の中に入って来ているんだなと思います。

(水野)わたしなんか、水だけだと思ってるんですけど、それは空気中もあってのことなんですね。

(平野)これ土壌とか海とか範囲も想像以上に広がっているように思うんですけど、これは現在進行形で放射性物質が飛散していると考えてなくていいんですか。

(小出)現在進行中で飛散しています。

(平野)そうですよね。そうであれば、現在工事をしている各号機のたとえば2号機とか3号機の一番危険の度合いが強いと思われるんですけど、どの炉から出ているという見方でしょうかね。

(小出)ええと、よくわかりません。2号機というのは、すでに格納容器が破損していると東京電力も認めている訳で、そうなりますと格納容器は放射能を閉じ込める最後の防壁なんですが、それがもうすでに破れているとするとそこから恒常的に出ていると思います。

あと、3号機は今日火災がありましたけど、火災によってあんまり周辺の放射線量が変わらないと言ってますけど、ほんとにそいうなのかな?とちょっと、眉に唾をつけています。

(水野)今日、3号機で夕方また黒い煙が出たんですね。このことは確か月曜日にも同じような状況がありましたよね。

(小出)わたし、お話したと思うんですけど、火災になるには着火源が必要ですよね、

(水野)着火源があるはずと、推測してくださっていたんですよね。
そんとき、私は水素しかありえないと思っていたんで、格納容器が破れて水素がでていると、私は推察していたのです。そうすると他の放射能も出てしまうので、火災と同時に放射性物質がまき散らかされたと私は危惧します。

(水野)これが水素なのかどうなのか、その後わたしもずっと報道の発表を気にしてたんですけど、ないようなんですけど、ないですよね。

(小出)ないです。

(水野)わからないままですよね。そのわからないまま今日繰り返されましたよね。小出さんはどのような推察ですか?

(小出)えーと、今日の場合は月曜日と違って、電源が復活してるんですよね、3号機は。それは電源回復によってどこまで電気を流したのかわからないのですが、不用意に電気を流すとショートすることがあるんです。そうすると、発火ということがあるんです。電気系とからの発火というのは可能性はあると思うんですけど、あいかわらず水素の可能性だって残っていると。

(水野)ある意味この可能性をつぶしていって原因は何かというのを調べないと、格納容器が破損しているのかどうかわからないと思うんですけど、調べられないんですか?わからないんですか?

(小出)さきほど、ニュースの中でもタービン建屋5分間いるだけで、50mシーベルトを超えてしまったというのがありました。今回の事故にあたっては、一人の労働者は250ミリシーベルトを浴びてはいけないことになっているのです。もともとは100だったんですけど。100なんかでは到底間に合わないので250まで引き上げてしまった。それにしても25分もいたらそれが超過してしまう。

(水野)は〜。

(小出)もう大変な被曝環境で作業してるんですね。そうしたらどっかで火事があった、トラブルがあったといってもそれを調べることすらが、決死隊のような感じでいかなくてはならない。そういう状況になっているのです。

(水野)ふーん。

(小出)普通の現場ではない。大変なところで仕事していなきゃいけないという状況。

(水野)もうひとつ、うかがいたいのは土の汚染なんですけども、原発から40キロ離れた福島県の飯館村の土、土壌からですね。濃度の高いセシウムが検出されという発表がありました。これ通常の1600倍という数字なんだそうですが、セシウムが土から検出されるというのはどういう意味なんですか? 放射性のセシウムを含んだ雲がですね、流れていって土にくっついたとうことです。

(水野)はー、これ土にくっついたというのを除去するというのは?

(小出)土を捨てる以外にありません。

(水野)土をすてるというのは、どこにすてる?

(小出)捨てれないですよね

(水の)捨ててもなくならないですよね。どっかの土がまた汚れますよね。

(小出)そうです。同じ事です。

(水野)土という事は、そこで育てた作物を食べると、口に入れたときに内部被曝になりますよね。

(小出)もちろん、内部被曝することになります。

(小出)土の上に暮らしていたらどうなるんですか?今日報道された1キログラム当たり16万ベクレルという値のセシウムですね、これがあるとすると、その土地は放射線管理区域にしないといけない。それは、「放射線管理区域」は、一般人が立ち入ってはいけない区域。日本の法律の基準をはるかに超えている。

(平野)小出先生、今日枝野官房長官が、きのう私がお聞きした「スピーデイ」による試算結果の報告を受けたと記者会見しまして、原発から30q圏外の一部で、100ミリシーベルトになりうる地域もみられるな、と。直ちに避難や国内退避をしなければならない状況とは判断していないと。これは、私は非常に矛盾しているなと。

(小出)私も矛盾しているともいます。

(平野)これ〜、どうなんですかね?30q圏外の人たちもやはり深刻になんらかの措置をとらなければならない事態になってるんじゃないかと。

(小出)もとろんそう思います。日本の法律も、世界の法律もそうですけれど、放射線を被爆するということは、あらゆることで危険なことであるということを大前提にしているわけですね。だから労働者の場合は1年間にこれ以上浴びては行けないという基準を決めて老いる訳で、一般人も基準を決めていおる訳で。

一般人が浴びてはいけないというのは、1年間に1ミリシーベルトという値なんです。それがすでに100ミリシーベルトを超えてしまっているというのは、とてつもないことが起きていると考えないといけない。「直ちに、なんとか」と言っている場合ではない。と私は思います。

(平野)諸外国、例えばアメリカが80キロ圏外というのは、まっとうな判断ですよね。

(小出)そうです。

(水野)ただ今すぐ退避を広げるというと、まあパニックににになる人もいるんじゃないかと心配しますが。

(小出)私もそう思います。それはもう苦しい事です。

(水野)納得のいく説明があってできることですね。これは。 

(小出)でももう説明のしようがないんですよね。許容限度を超えた被曝というのが、ものすごく広範囲で広がってる訳ですし、40キロも離れた飯立町では、放射線量の管理区域(一般人立ち入り禁止区域)にしなければならないほどの土地の汚染が起きている、ということになると並大抵なことでは避難とか、そういう対策をとりようがなくなってきている。

(水野)福島の飯立村のセシウム、半減期30年なると教えていただきましたね。ことの深刻さが日ごとに少しずつかんじられているのですが、原発には外部電力が通じたり中央制御室では照明がついたりと、希望的にうけとりたいですが。
小)私もそう受け取りたい。だからといってポンプは未だに動かない訳ですし、3号機の火事というのも、ひょっとして電気を通したから故に起きたかもしれないと伺っているのです。これからどう乗り切っていかれるのかという不安もぬぐい去れずにいるのです。