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3.11以降の日本F
災害廃棄物で防波・防潮堤防を!

青山貞一
掲載月日:2012年3月22日
 独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁


 以下は、2012年3月20日、東京都港区にある政策学校一新塾で代表理事、青山貞一が行った基調講演の一部である。今後、何回かに分けて基調講演の内容をお伝えしてゆきたい!




ミニ講義をする青山貞一、東京港区に政策学校一新塾にて
2012.3.20


ミニ講義をする青山貞一、東京港区に政策学校一新塾にて
2012.3.20


◆瓦礫撤去後のまち復興のメドたたず
  〜まちづくりのグランドデザインが不可欠


 今回現地視察した被災地域に共通しているのは、3.11から5ヶ月以上経っているものの、瓦礫処理の目処が立った自治体(大槌町、陸前高田市、大船渡市)でも、今後のまちの復興にほとんどメドがたっていないことである。

 これは、まち復興のグランドデザインが明確になっていないことにあると思える。すなわち、一応瓦礫の整理(処分はまだ)はしたものの、今後、まちをどう復興するか? 

 今までのように臨海部の平地にまちを再建するのか? 

 それとも高台や丘陵、林野を切り開きそこに住宅を造成するのか? 

 などが明確になっていないことを意味する。


土台だけ残った市街地。岩手県大槌町にて
撮影:青山貞一


岩手県陸前高田市にて
撮影:青山貞一

復興は安全で安心、環境に配慮した
 持続可能なまちづくりのグランドデザインから


 復旧、復興が大幅に遅れているのは、中央集権国家の中枢、国が思考停止、機能不全に陥っているからである!

 基礎自治体、県がそれなりの防災まちづくり、土地利用計画などを考えても、国の省庁があれこれ難癖を付け、最後は補助金、特別交付金を「エサ」に、自治体の提案を押し込んできたからである。

 いわば、3.11以降の最大の課題は、グランドデザインの不在である。

 復興のための各種のインフラ整備はじめ巨額の資金がともなうものであり、ここで間違えると将来に大きな禍根を残すこともある。さらに平地にまちを復興する場合、将来、再度大きな津波がきた場合にどう物理的に対応するかという大きな課題がある。

 青山貞一、池田こみちは、この重要課題について、高台移転についてはすでに提案したが、災害廃棄物(がれき)の処理に関しても、がれき処理に連動し、海岸側に20−30mの防波堤(防潮堤)を構築する政策提言をしてきた。

 この政策提言は、欧州諸外国における実例をもとに、日本の廃棄物処理法、沿岸法など現行法とも齟齬がない形で構築が可能であり、費用対効果にも優れた方法であると考えている。

 しかし、東日本大震災の瓦礫の処理に関連し、日本政府(環境省)は、私たちが30年間批判してきた燃やして埋めるやり方を瓦礫に適用しようとしている。

 日本固有の「燃やして埋める方式」は、汚染を大気、水、土に広げるだけで、本質的な問題解決にならないことは間違いない。ましてや低レベルとはいえ放射性物質を含む場合は論外である。これについては諸外国も注目している。

 またがれき広域処理はじめ瓦礫処理を目の前の瓦礫をなくすだけの処理は、今回、まちづくり、とくに津波対策との関連では問題解決にならない。

 津波対策を考慮した瓦礫処理として私はひとつの大胆な計画を提案してきた! 

 それは沿岸域の陸側最先端部分に、コンクリート構造物で管理型処分場に類する堰堤、防波堤型の処分場をつくることである。

 以下に私たちが提案する防波堤型の瓦礫処理の概念図を以下に示す。



出典:青山貞一、池田こみち

 これは堤防型の管理型最終処分場の中に、瓦礫類を燃やさず埋め立てることになる。 規模は、たとえば堤防ブロック一つ当たり、幅(30m〜50m)×長さ(50〜100m)×高さ(15〜30m)とする。この防潮堤、防波堤を兼ねた瓦礫の処分場を地域の実情に合わせ、10、20と連たんさせることになる。

 以下に平面図を示す。


出典:青山貞一、池田こみち

 処分場の上には、表土をかぶせ低木などを植える。

 当然、時間がたてば表土は沈降、沈下する。

 必要に応じ、たとえば福島県の場合には、遮断型として管理型処分場の上にコンクリートのフタを付ける。福島県内の海岸では、放射性物質を含む土砂、瓦礫が多くなるので、遮断型とすれば万全である。

 もちろん、建設廃材などの有機物を含める場合は、メタンガス発酵への対応も考慮する。もっとも有効なのは、オーストラリアで開発され、台湾などが使っているメタンガスを集め発電に利用する方法である。

 また瓦礫は分別し、この処分場に処分するのではなく、仮置し、将来、リサイクルなりリユースできるものはすればよい。

 こうすることで、ほとんど瓦礫類を遠隔地に運ぶ必要も、燃やす必要もなくなる。環境汚染は通常の管理型処分場と同じであるから、2次処理まですれば排水を公共用水域に流すことも可能である。

 ただし、福島県の場合は、放射性物質を含む瓦礫となる可能性が大なので、遮断型とし内部に雨水、海水が入り込まないような構造とし、放射性物質を含む排水が外部に出ない構造とする。

 一方、宮城県、岩手県など、放射性物質を含む瓦礫がほとんど存在しない場合は、コンクリート構造の管理型処分場とし、コンクリートのフタを付けない場合は、2次処理まで可能な水処理施設を50〜100mの間隔でつける。

 コンクリート構造物は汚染水の重力浸透を防ぐので水処理装置を常時モニタリングしながら監視すれば汚染の問題は深刻にならないであろう。

 10年以上経ったら、小高い古墳状の緑地でありスーパー堤防となる。もちろん、この場合には、その内側の平地でまちづくりが可能となるので、新たに山を削ったり造成する必要もない。

 この方式のヒントは、北イタリアでミラノ北にあるセベソにある。またスーパー堤防はオランダのペッテンやデンフェルダー地方にある。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防の断面概念図
出典:青山貞一、池田こみち

 以下の写真はオランダのペッテンにあるスーパー堤防である。

 堤防の海側は自転車道路となっており、自転車が高速で走行している。オランダのペッテンの堤防では、それより海側の波打ち際は散歩道や犬の散歩道、ドッグランとなっており、鎖を解かれた犬が喜んで泳いでいた。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防
撮影:青山貞一

 また堤防の陸側は、牛、羊などの家畜の放牧場となっていた。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防
撮影:青山貞一

 さらに上の断面イメージにあるように、陸側にはもう一つの防波堤があり二段構えとなっていた。その外側には、以下のようなかわいらしい住宅がたくさんあった。

防波堤の内側の住居
撮影:青山貞一

 費用対効果は計算していないが、従来の日本の運んで燃やして埋める方式に比べれば環境負荷、環境汚染は大幅に少ないし、もとより大津波を考慮したフリーハンドのまちづくりが、震災以前の従来の平場で行えることになる。となれば高台を造成したり、隣地開発し大規模な住宅地を造成する場合に比べ、B/Cは絶大だと思う。


 私たちの提案にほぼ類することを南相馬市長がBS11のInsideOutで提案している!! 

 やはり思考停止、機能不全の国と違い、基礎自治体の首長には、一石二鳥はおろか一石三鳥、一石四鳥の工夫が見える。


南相馬市櫻井市長との議論する青山貞一。南相馬市長室応接にて
撮影:鷹取 敦

桜井市長・防潮堤にガレキ埋め立て
 
 昨日のBS11・InsideOutで南相馬市桜井勝延市長が出演。

  防潮堤を早く作るにはガレキを埋め立てるのがベストだ。しかし環境省はこれを許可しない。

  このままでは、土砂を他から持ってきて埋め立てるしかないが、こんなことをやっていては何年かかるか分からない。

 ガレキを埋め立てるとすれば、30キロある海岸線の防潮堤には福島のガレキだけでは到底足らない。岩手や宮城のガレキも受け入れなければならない。

  以上のように発言していた。環境省はあくまでもガレキを全国に拡散する方針のようだ。しかし桜井市長のアイデアは至極当然の発想だ。

 桜井市長は最後に、震災復興の最大のカギは「住民の命を最も大切にすると云う意思の存在だ」と云っていた。

 伊藤


つづく