世界の風力発電10年で10倍に 〜日本は13位に後退〜 朝日新聞2007年2月6日(火)夕刊・科学面 |
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世界風力エネルギー協会(WWEA)は1月29日、世界の風力発電設備量が過去10年間で10倍に増え、昨年末で計7390万キロワットに達したと発表した。日本は13位で、2年前の8位から後退した。 国内の太陽光や風力など自然エネルギーの利用目標も、低い値に決まった。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「人による温暖化は間違いない」という報告書を出すなど、脱化石燃料政策の強化が求められているなか、日本の自然エネルギー政策からは勢いが消えている。(編集委員・竹内敬二) 風力は自然エネルギーの柱になっている。WWEAの報告書によると、世界の風力発電設備は、昨年だけで25%も増えた。ドイツ、スペイン、米国がトップ3だ。 日本は139万キ回ワットで13位。2年前より5割増やしたが、2年前は8位、昨年は10位と、順位はずるずる後退してきた。現在、計画段階のものが少なく、今後も伸び悩むとみられている。 同じ2年間で、フランスは4倍、中国、ポルトガルは3倍、インドは2倍になった。WWEAは2010年には1億6千万キロワットになると強気の予想を出している。 WWEAの発表と同じ日、経済産業椙の諮問機関である総合資源エネルギー調査会のRPS小委員会は、自然エネルギーの利用を電力会社に義務づける「RPS制度」での目標を決めた。電力会社は目標量を自然エネルギーで発電するか、買い入れる必要がある。対象はバイオマス、風力、太陽光、小水力、地熱。 03〜10年度までの義務量は決まっており、今回は11〜14年度の案を決めた。10年度の122億キロワット時(全電力量の約1.35%)から、14年度は160億キロワツト時(1.63%)と、3割増となった。 過去の3年間では電力会社は余裕をもって義務量を達成しており、大幅アツプも予想された。しかし「今後の伸びは非常に厳しい。14年度では年間1千億円ほどの負担になる」という電力業界の声に配慮して、低い伸びにとどまった。 小委員会は昨年12月、RPS値の議論の参考にするため国際エネルギー機関(IEA)の再生可能エネルギー担当、P・テュレイさんを招いた。 同氏は、30年における自然エネルギー(水力を除く)の普及を「欧州連合(EU)は電力の約24%、日本は8〜9%」と予想した。日本が自然エネルギーへの好意的な政策を維持した場合でも、この程度と説明した。 ◆導入のカギは政策 自然エネルギーは、増やすも止めるも政策次第だ。 かつて「風力ならデンマーク」と言われた。89年、電力会社が買い取り価格を保証する制度が始まって爆発的に伸び、今では電力の20%を風力がまかなう。しかし、03年以降の建設分で買い取り価格が下げられ、建設がピタツと止まった。 「太陽光なら日本」だった。導入量で長年トップを走り、03年には2位ドイツの2倍もあった。 ところが、ドイツは、04年に太陽光発電の電気を高く買う制度を始めたことで急増し、05年末に日本を抜いた。日本では、トップの座を維持するのに効果があった政府補助金の減額が続き、06年には消えてしまった。 ■風力発電の導入量 (06年末、世界の合計は7390万kW、カッコ内は04年末の順位)
■日本の自然エネルギーによる発電の導入計画(RPS値) <グラフ略> ■太陽光発電の導入量 <グラフ略> |