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オーストラリア、ニュージーランドにワシントンへの協力を要請
Australia pressures New Zealand to toe the line of Washington
By Yu Lei Global Times
5 Aprl 2019

翻訳:青山貞一 Teiichi Aoyama(東京都市大学名誉教授)
独立系メディア E-wave Tokyo 2021年4月6日
 公開 


2020年10月18日、ニュージーランドのオークランドで記者会見する現職の首相である労働党のジャシンダ・アーダーン党首(前)。(新華社/Guo Lei)
Labor Party leader Jacinda Ardern (front), the incumbent prime minister, addresses a press conference in Auckland, New Zealand, on Oct. 18, 2020. (Xinhua/Guo Lei)

 オーストラリアのメディアNews.com.auは土曜日、「ニュージーランドのファイブアイズの同盟国からは、アーダーン政権が再び北京に呼びかけることに失敗したため、ニュージーランドが中国への対応において弱点になるのではないかという懸念が出ている」と報じた。

 ニュージーランドの中国政策に関する不満を伝える記事は、これだけではない。ワシントン、ロンドン、オタワ、キャンベラと一緒になって中国を非難したり侮辱したりしないウェリントンを非難する記事はたくさんあるようだ。

 米国の保守系ニュースサイト「ワシントン・エグザミナー」は1月11日、「中国へのアピール、ニュージーランドの「ファイブ・アイズ」放棄(Appeasing China, New Zealand abandons the Five Eyes)」と題した記事を掲載した。

 確かに、ウェリントンの対北京政策は、ファイブアイズの同盟国、特にワシントンやキャンベラとは異なる。それには次のような理由がある。一つには、ニュージーランドの経済は世界市場の中では比較的小さく、国際貿易、特に中国市場に大きく依存している。2019年末の時点で、中国はニュージーランドにとって最大の商品市場であり、最大の留学生の供給源であり、2番目の観光客の供給源であった。また、重要な海外投資家でもある。

 ニュージーランドからの輸出品の多くは、米国やオーストラリアからの輸出品に似ている。このような状況の中で、ウェリントンは、中国などの開国した市場との緊密で友好的な関係を維持することを重要視している。1月26日には、中国との自由貿易協定を更新する協定に調印し、ニュージーランドからの輸出品の中国へのアクセスが向上した。

 また、アメリカやオーストラリアが白人中心に外交政策を決定しているのに比べて、今日ではマオリ族が政治的にかなりの地位を占めている。そのため、ウェリントンの政策は内政に重点が置かれ、より現実的なものになる傾向がある。

 米国は他の13カ国を説得して、3月30日にいわゆる「中国で最近行われたWHO主催の研究に関する共通の懸念」を表明する共同声明を発表した。

 ニュージーランド以外の4つの「ファイブ・アイズ」メンバーもこのグループに参加している。この出来事について、News.com.auの記事は、ジャシンダ・アーダーン首相の政権が「ファイブアイズの『泣き所(ソフト・アンダーベリー)』と呼ばれている」と指摘している。

 このような語り口は、オーストラリアの一部のエリート政治家の考え方を反映している。彼らは、自国が南太平洋において米国に次ぐ覇権国であると考えている。そのため、ニュージーランドもオーストラリアに追随すべきだと考えている。しかし、それは希望的観測に過ぎない。ウェリントンは長い間、自国の国益のために独立を保ち、ワシントンやキャンベラからの命令に従うことを嫌ってきた。

 例えば、1984年にニュージーランドは、国全体を非核地帯とする法案を可決し、米国の軍艦が港に停泊することを事実上禁止した。その結果、米国はニュージーランドをオーストラリア・ニュージーランド・米国の軍事同盟から締め出し、外交上の地位を緊密な同盟国から友好国に格下げした。

 アメリカの圧力があっても、ニュージーランドはまだ非核地帯である。

 ファイブアイズの他の4つの同盟国は、中国への圧力を高めるためにニュージーランドに圧力をかけることが予想される。しかし、過去の経験から言って、ウェリントンは簡単には圧力に屈しないだろう。

 実際のところ、ファイブアイズは利害関係だけの同盟である。

 民主主義や自由という共通の価値観を追求するためではなく、それは偽装である。英国の故ウィンストン・チャーチル首相が言ったように、「我々には永続的な友人も永続的な敵もなく、永続的な利益だけがある。(We have no lasting friends, no lasting enemies, only lasting interests. )」である。このことは、1812年にアメリカがイギリスとカナダに宣戦布告したことにも表れている。

 ブレグジット後の時代には、英国は一時的に米国との緊密な関係を維持するかもしれない。アメリカの隣国であるカナダは、ワシントンの牙城から逸脱するほど大胆ではないように見える。オーストラリアは長年にわたり、南太平洋における地域覇権を追求するために米国に依存してきた。

 このような背景から、中国は自分のことは自分でしっかりやることになっている。そして北京は、彼らの潜在的な動きに辛抱強く対抗していくだろう。

 筆者は、中国東部の山東省にある遼城大学の太平洋島嶼国研究センターの主任研究員である。