30年間の軌跡 総目次はここをクリック   

   環境総合研究所
自主調査研究、30年間の軌跡


福島県の甲状腺検査暫定総括
Fukushima Prefecture
thyroid inspection court overview
概要、論考、論文、報告、記事、文献

執筆主担当:鷹取敦 Teiichi Aoyama
掲載月日:2017年6月10日
独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁

<概要>

 チェルノブイリ原発事故後に影響地域における小児の甲状腺がんが増加したことが明らかになってることから、東京電力福島第一原発事故後、福島県は、県民健康調査の一貫として、事故時に18歳以下だった子供を対象として甲状腺検査を実施してきた。

 甲状腺がんの検査はこれまで検診等の対象となっていないこと、多くの甲状腺がんは進行が遅いことから、原発事故による被ばくの影響がなかった場合、子供にどれくらいの割合で甲状腺がんが潜在しているか明らかではなかった。

 福島県は、事故のあった2011年度から2013年度まで一回目の検査(先行検査)、2014年度以降は2年ずつ(本格検査)を実施し、県民健康調査の検討会が開催される度に、甲状腺がんが見つかった人数を公表、それがテレビ、新聞等のメディアを通じて報道されてきた。

 福島県は、みつかった甲状腺がんは、実測および推計した甲状腺被ばく線量を根拠に、被ばくによるものではないとの説明のみを繰り返してきた。しかし、実測された甲状腺被ばくはごく一部の子供にすぎないこと、被ばくの影響でないと分かっているのであれば、そもそも甲状腺検査を行う必要性がないことから、県の説明は説得力がない。

 県の対外的な説明がきわめて不十分であり、その結果をメディアはただ報道するだけなので、一般の人の印象としては、原発事故による甲状腺がんが次々と発見されているかのような印象を受けるのは当然である。

 そこで、環境総合研究所では独自調査として、推計線量による予断を持たずに、被ばくによって甲状腺がんが増えた場合にはどのように検査時年齢別の甲状腺がん発見の割合が変化するか、そのためにはどのように定量的な検証を行う必要があるか、あらかじめ評価の方法を定め、公表されたデータを用いて検証を続けてきた。

 その結果、2011年度から2017年度までの公表データを環境総合研究所が独自に検証する限り、事故の被ばくより、子供の甲状腺がんが顕著に増加したとは言えない、つまり見つかっている甲状腺がんの大半が被ばくによるもの、とは言えないことがわかった。被ばくによって甲状腺がんが増加するのであれば、今後はより大きく増えるはずなので、引き続き検証を行う。

 また、原発事故がなければ行う必要がなかった検査によって、本来見つける必要のなかった甲状腺がんを見つけてしまったことによる弊害が指摘されており、検査を継続している福島県の不作為、傍観している国の無責任も明らかとなった。

執筆担当:鷹取敦

タイトル 主担当 掲載媒体
福島県内小児甲状腺がんの予備的疫学調査 環境総合研究所 独立系メディア E-wave Tokyo Web
放射性ヨウ素による内部被ばくと小児甲状腺がん 鷹取 敦 独立系メディア E-wave Tokyo Web
放射線と甲状腺がんに関する国際ワークショップ 参加記 鷹取 敦 独立系メディア E-wave Tokyo Web
福島県の甲状腺検査(1)甲状腺がんの割合を比較することの困難さ  鷹取 敦 独立系メディア E-wave Tokyo Web
福島県の甲状腺検査(2)年齢の影響、細胞診受診割合の影響と補正 鷹取 敦 独立系メディア E-wave Tokyo Web
福島県の甲状腺検査(3)地域別の甲状腺がんの割合(補正前と補正後) 鷹取 敦 独立系メディア E-wave Tokyo Web
福島県の甲状腺検査・15年9月末データより甲状腺がんの割合の検討 鷹取 敦 独立系メディア E-wave Tokyo Web
福島県内の甲状腺がん検査問題(質疑30問 約1時間) 鷹取 敦 You Tube


関連テーマ 福島第一原発事故と健康影響  <概要>--関連論考・論文--関連記事・資料