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環境総合研究所 
自主調査研究 30年間の軌跡


ムラサキイガイを生物指標とした
市民参加の海水中のダイオキシン調査監視活動

Citizen participatory monitoring activity of
Dioxins in the Sea water by Mussel
as a biological indicaterPine Beedle as biological indicator

概要、論考、論文、報告、記事、文献

主担当:池田こみち
掲載月日:2017年6月10日
独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁

<全体概要>

 1990年代半ばから一部の専門家や市民運動家の間で指摘されていたダイオキシン問題は、99年に所沢市における焼却炉周辺の環境汚染が明らかになったことにより一気に一般市民の関心事となりました。大気中のダイオキシン類濃度については、身近な松葉を用いて市民が監視活動を始めていましたが、2000年に荏原製作所藤沢工場の廃棄物焼却炉の排ガス洗浄装置からの排水が、未処理のまま雨水管を通じて公共用水域に排出されたことによって引き起こされた未曾有のダイオキシン汚染事件をきっかけに、河川や海洋のダイオキシン汚染の実態を市民が自ら測定し把握する方法として、ムラサキイガイ(ムール貝)を生物指標とする監視活動が始まりました。

 一旦、環境中に排出されたダイオキシン類は、最終的に海に流出していきます。荏原製作所藤沢工場の事件では、高濃度のダイオキシン類を含む焼却灰が直接、河川(引地川)に排出され、5kmほどで江ノ島の西の湘南海岸に到達し魚介類はもとより湘南海岸でサーフィンやダイビングを楽しむ人々にも影響を及ぼす可能性があるとして心配されました。

 河口や海ではプランクトンから小魚・魚類・鳥類と食物連鎖でダイオキシン類をはじめとする有害物質は生物濃縮され、最終的に人間の食卓に戻ってきます。ヒトが体に取り込むダイオキシン類のおよそ90%は食物からと言われ、中でも魚介類からの摂取割合が50%以上と群を抜いて高いと言われています。

 二枚貝のムラサキイガイは定住型で、世界中の海域に広く生息しており、海洋汚染の適切な指標生物と考えられ、多数の環境汚染物質のモニタリングに利用されていることもわかりました。

 この事件が発覚し、行政は工場の排水口周辺の河川水や海水のダイオキシン類濃度の測定を行いましたが、排水が止まってからは水中に高い濃度のダイオキシン類は検出されませんでした。一方で、環境庁は前年の平成11年9月24日、「ダイオキシン類緊急全国一斉調査結果について−平成10年度実施−」と題して水生生物中のダイオキシン類の濃度分析データを公表していました。

 その結果をみると、全国公共用水域(N=368)の平均値が2.1pg-TEQ/g、最高値が30pg-TEQ/gでしたが、その中で、藤沢市引地川のコイ、フナの濃度は全体的に高い東京や神奈川県内の魚類の中でも群を抜いていることが分かりました。

 また、一般的に、魚介類では濃縮率の関係からダイオキシン類(PCDD/PCDF)に比べてコプラナーPCBの濃度が高いのですが、引地川の魚類では、PCDD/PCDFとコプラナーPCBの割合が他と異なっていることも分かりました。

 このことは、日々変動する水質だけを監視していても海洋や河川の汚染の実態をはあくすることは出来ないという事実です。

 そこで、環境総合研究所では、藤沢市民や湘南海岸で活動するサーファーの協力を得て、河口付近のムラサキイガイを採取し、第三者的に蓄積されたダイオキシン類濃度を測定することとしたのです。

 当初は、荏原製作所藤沢工場の事件を背景に、引地川河口を対象として調査を行いましたが、その後、サーフライダーズ・ファウンデーションの協力を得て、日本全国のサーファーが自分たちが活動する海洋をターゲットにムラサキイガイを採取し、比較調査を行う事となりました。

執筆:池田こみち

−−−未了
<関連する報告、論考>
タイトル 主担当 掲載媒体
日本の近海・沿岸魚貝のダイオキシン濃度に関するリスクアセスメント〜国・自治体の公表データをもとにした評価〜 青山貞一 独立系メディア E-wave Tokyo Web
市民参加のムラサキイガイを生物指標とした全国海水中のダイオキシン汚染の実態調査 池田こみち 独立系メディア E-wave Tokyo Web
魚介類に含まれるダイオキシン類の評価に関する研究 池田こみち 独立系メディア E-wave Tokyo Web
Author: Komichi Ikeda, Teiichi Aoyama, Atsushi Takatori, Masuo Ueda, Hideaki Miyata and Branko Vrzic Title: CITIZEN PARTICIPATORY SEA WATER MONITORING BY BLUE MUSSEL AS A BIO-MONITOR Komichi Ikeda International Symposium on Halogenated Environmental Organic Pollutants and POPs


<関連する新聞記事>


出典:中日新聞(平成12年10月9日掲載記事)



出典:環境総合研究所・独立系メディア E-wave Tokyo 平成12年10月



出典:環境総合研究所・独立系メディア E-wave Tokyo 平成12年10月



出典:環境総合研究所・独立系メディア E-wave Tokyo 平成12年12月