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アメリカからやって来た
反焼却運動家が見た
日本のガス化溶融炉


池田こみち
(環境総合研究所)


2007年4月16日


無断転載禁


 アメリカで反公害・反焼却運動に取り組んでいるNGO、Green Action forHealth & Environmental Justice(http://www.greenaction.org/)の代表であるBradley Angel氏が4月末に1週間ほど来日した。マレーシアとフィリピンを訪問し、日本のメーカーによる焼却炉建設に反対する市民グループと交流するのに先だって日本に立ち寄り、日本のごみ焼却の実状(特にガス化溶融炉の普及や事故の実態)についてNGOと交流し、施設の見学をしたいとの申し出があった。



 そこで、ダイオキシン問題に取り組むNGO「止めよう!ダイオキシン東日本ネットワーク」(事務局長 藤原寿和氏)が受け皿となって来日の運びとなったものである。

 私は、同ネットワーク事務局からの依頼もあり、交流学習会と流山市に建設された荏原製作所の流動床式ガス化溶融炉の施設見学に通訳として参加する機会を得た。

 Bradley氏とは初対面だったが、Green Peace USAからGreen Actionに転身して10年余を経て反焼却運動については20年以上の実績をもつ人物だけあって、小柄ながらパワフルな活動家であることが話からもよく伝わってきた。彼自身のお母様が若くして癌で亡くなっていることもあり、環境中に有害物質を排出するごみの焼却にはことのほか関心が強く、これまで米国内で多くの実績(建設阻止)を積み上げている。

 特に、メーカーなど事業者サイドが住民向けに提供している情報には多くの嘘や曖昧な表現、裏付けのない表現が多いことを厳しく糾弾し、「売らんかな」の姿勢を批判している。同団体のMissionについては、ホームページを参照されたい。単に反公害だけでなく、環境正義の実現を使命としている点が特筆される。http://www.greenaction.org/org/mission.shtml

 さて、今回は、流山市のガス化溶融炉(流山市クリーンセンター)の見学に同行した際の、Bradley氏の質疑応答を紹介しながら、改めて焼却炉、溶融炉という得体の知れない技術に慣れきった日本の問題点を考えてみたい。

<流山市クリーンセンターのごみ焼却施設概要>
http://www.city.nagareyama.chiba.jp/section/risaikuru/cleancenter/index.htm

・施設規模 69t/24h×3炉 計207t/日
・受入供給設備 ピットアンドクレーン方式
・溶融焼却設備 ガス化溶融炉(流動床式)
・燃焼ガス冷却設備 廃熱ボイラ方式
・排ガス処理設備 ろ過式集じん器、湿式有害ガス除去装置、触媒脱硝設備
・余熱利用設備 発電(最大3,000kw)、給湯、冷暖房、地域融和施設に供給
・通風設備 平衡通風方式、煙突(120m)
・灰出し設備 鉄分・アルミ・不燃物(バンカ方式)
・水砕スラグ (ピットアンドクレーン方式)
・給水設備 圧力給水方式
・排水処理設備 凝集沈殿、ろ過方式

 上記の施設は、「廃棄物循環型処理施設」であり、かつ「地域融和型処理施設」であることを基本理念として建設されているとのことである。

 施設を訪れると、数名の職員が玄関で迎えてくれ、1階ロビーに続くリサイクル活動施設などを案内し、2階の学習室へと誘導される。学習室では、約20分ほどの紹介ビデオを見せられた後、質疑応答、そして、ヘルメット、防塵マスクを着用してプラント見学へと出発する。



 紹介ビデオはプラントメーカーである荏原製作所が製作したものとのことで、冒頭から、「青い空と江戸川の水の流れに調和した建物・施設のデザイン」というナレーションで施設の全景が映し出された。その後、「循環型施設」であること、「ゼロ・エミッション・クローズドループ」を実現していること、「電力や熱供給をしていて、発電規模は3000kw/hであること」、「ダイオキシンや重金属類の有害物質は高度な処理システムにより除去され、きれいな排ガス、きれいなスラグが排出されること」などが主な内容となっている。

 ビデオを見終わったBradley氏はすかさず、以下の質問を矢継ぎ早に施設側担当者にぶつけた。

1)発電量は3,000kW/hとのことだが、それは3炉が最大限稼働したときの出力であり、通常はそこまでの発電効率は達成できないのでは?この施設はその電力で運転されているのか?

2)「循環型」、「ゼロ・エミッション」とのことだがスラグや灰が排出され、それを処理しているのでは?

3)「有害物質が出ない」とのことだが、それを証明するデータはあるのか。スラグ中や灰に含まれる金属類のデータは?副次的な汚染は全く出していないとは言えないのではないか?

4)「環境にやさしい」「地域共生型」とのことだが、二酸化炭素も排出するのでは?

5)年間の稼働日数からして、停止していることもあると思われるが、炉を再度立ち上げるときには他に燃料は使わないのか?灯油を使っているとの話だが。

<施設側の答えの概要>

1)確かにご指摘の通り。3,000kW/hは3炉が稼働したときの最大出力であり、通 常はせいぜい2,000kW/h程度であるので、ビデオでその点を明確にしていなかった。発電した電力は施設の運転に使用するが、不足するため東電から購入している。(補足:18年度の電気料金は1億192万円)

2)確かに、すべてが処理されて何も残らないということではない。金属類の資源は取り出して利用しているが、焼却灰の処理に伴い、溶融スラグが残る。これについては、製鉄会社が無償で引き取っている。また、飛灰も出る。これについては、セメント会社にトン当たり8万円で買い取ってもらっている。

3)ダイオキシン類や重金属類が全く出ないということではない。基準値よりも低 い値が維持されていると言う趣旨で説明した。灰には鉛などが検出されている ので全く汚染を出さないように受け取られると困る。

4)焼却すると言うことは二酸化炭素を排出することであり、その意味では、昨今 の地球温暖化防止の観点から、課題であるとも言える。

5)定期検査等により一旦、炉が停止した場合、炉が冷えてしまうため、灯油によ り助燃している。その量は稼働当初は約137万リットルに達していたが、徐々に少なくなり、06年度は約70万Lまで減少している(補足:灯油代金は5千万円を超えている)。ただし、減らせる量には限界があり、せいぜい60万L程度まで。(補足:この施設では、屎尿汚泥を日量3トン程度投入しているため、ごみの水分量が高くまた温度も下がりやすい)

注)補足情報は、当日も同行し、同施設を何回も取材しているフリーライター津川敬氏の取材メモより。

 要するに、ビデオやパンフレットでは、きれい事を並べ立てているけれども、しっかりと内容を詰めていくと、あちこちに問題が露呈する。環境にやさしい、と言いながら、温暖化のさなか膨大な量の化石燃料をごみ処理のために消費し、膨大な灯油代と電気代を支払う羽目になっている。また、循環型で汚染を出さない、といいながら、測定している有害物質の項目は極めて限られており、飛灰には有害金属である鉛なども検出されている。そうしたデータのわかりやすい開示、提供は行われていない。

 流山市では、市内の小学校生が必ずこの施設を見学することとなっているとのことだが、プロパガンダ的なビデオの上映と説明、施設見学によって、「ガス化溶融炉」や「焼却処理」がまったく問題のないすぐれた技術であり、システムであると思いこまされてしまうことは極めて重大な問題ではないだろうか。

 焼却に慣れきった私たち日本人だが、企業や行政の説明を鵜呑みにしすぎてはいないだろうか。一般廃棄物処理は税金で賄われている公共事業そのものである。

技術の選択から立地の選定はもとより、ごみそのものをどうやって減らし、燃やしたり埋めたりしないですむか、そのシステム作りにこそもっと頭と時間を使うべきである。少なくとも、子供たちを無防備に「施設見学」に送り出すことだけは見直すべきである。敢えて見学を実施する場合には、今回のBradley氏のように、廃棄物処理のかかえる問題点や本来のあり方などについて、しっかり理解しそして、事業者や行政に対して、はっきりと問題点の指摘ができ、冷静なものの見方ができる大人の付き添いが不可欠である。

 なお、Bradley氏はその後フィリピンとマレーシアを訪れ、荏原製作所のガス化溶融炉導入を阻止した市民グループと交流したとのことである。市民力こそが環境を守る最大の力というべきではないだろうか。彼の地でも、事業者側は、「ガス化溶融炉は従来型の焼却炉と異なり、100%環境に安全な施設である」と言い放ち、市民の顰蹙を買ったとのことである。


Subject: Re: hello from bradley angel!
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Hello!

I am now back in San Francisco after an amazing, education, inspiring trip to Japan, Malaysia and the Philippines. It was so nice to meet you, and thank you for all your knowledge, translation and assistance.

The information we learned at the Ebara tour has been very powerful in Malaysia and Philippines, due to the fact that the plant managers admitted that so many of the company's key claims were not true. I met community members and activists who have been fighting Ebara in Broga, Malaysia, and alerted them to what we learned during our tour. I got to share that information with activists, reporters, government and community members in Malaysia and the Philippines.

I am attaching a few photos for you!

Sincerely,

Bradley Angel