平成20年度から本格的にスタートしようとしている東京23区での廃プラ焼却に先立って、7年ぶりに松葉を生物指標とする大気中のダイオキシン類濃度の測定・監視活動が行われた。
99年の夏、大規模な松葉によるダイオキシン調査が行われた時は、所沢のダイオキシン問題が大きな関心を集めた後であり、都心部よりも、都心から50kmほどの郊外地域の汚染が明らかになった。
それから、7年が経過し、その間にダイオキシン類対策特別措置法が制定され、排ガス中のダイオキシン類の規制は強化され、古い焼却炉、小型焼却炉などは閉鎖あるいは更新され、日本全体で500以上も焼却炉が減り、大気中のダイオキシン類濃度も全国平均で0.55pg-TEQ/m3から0.051pg-TEQ/m3へと大幅に改善された。
しかし、国際的に見ると、それでもまだ日本の大気中のダイオキシン類濃度は欧米の諸都市に比べて5〜6倍も高い状態が続いている。特に大規模な焼却炉が集中する大都市や発生源周辺地域では依然として高い濃度なのである。そうしたなかで、廃棄物の最終処分場の延命化のため、これまで分別されていた廃プラスチックを埋立から焼却へと切り替える大政策転換がいよいよ始まろうとしている。
23区では長い間、廃プラは「燃えないごみ」として分別してきた。それが、いきなり、「燃えるごみ」に区分するように180度転換する。この大転換については依然十分な説明がなされておらず、区民の理解と合意が得られていない。
今、なぜ廃プラを焼却しなければいけないのか、処分場の延命だけでなく、焼却施設の余剰能力の活用のためではないのか、発電効率も低いまま、「発電するから有効利用」と言えるのか、焼却することによる新たな環境リスクはどこまで検証されているのか、課題が積み残されたままである。
今回、23区南生活クラブ生協は、来年度からの本格廃プラ焼却に先立って、都内の大気中ダイオキシン類濃度を測定した。そして、数年後、廃プラ焼却後に再度測定してその違いを見るためである。
問題はダイオキシンだけではないが、少なくともようやく改善してきている都内の大気中ダイオキシン類濃度がそのことにより再び増加に転じることがあってはならない。
「廃プラを焼却する」という選択の前に、もっと議論すべきことがあったはずである。廃プラが増え続ける現状をどうするのか、排出事業者の責任はどうするのか、温暖化が問題になる中、さらに焼却を強化することはどうなのか。
今回の調査が、改めて、区民の廃棄物に対する問題意識を喚起し、次世代に向かってビジョンのある廃棄物政策の立案にむけた議論のスタートとなることが期待されている。
朝日新聞 2007年7月15日朝刊 東京版
ダイオキシン濃度が「改善」
市民調査・99年度比
市民が今年実施した松葉に蓄積したダイオキシン調査の報告集会が14日、世田谷区内で開かれ、99年度に実施した調査と比べ、濃度が改善していることが分かった。
調査は23区南生活クラブ生協の主催で、99年度に続き2度目。今年2月〜3月に世田谷、目黒、大田、品川、江東、江戸川の6区10地域の255地点でクロマツを採取し、ダイオキシンの濃度をはかった。
報告によると、最も毒性の高いダイオキシン類に換算した濃度は、松葉1グラム当たりで最高2.6ピコグラム(ピコは1兆分の1)だった。99年度の調査では、最高6.9ピコグラムで全域で大幅に改善した。
23区は08年から廃プラスチックの焼却処理を全域で予定している。集会では「濃度が改善されたとはいえ、プラスチックを燃やせば、今後、ダイオキシン濃度が高まる可能性がある」という懸念の声も聞かれた。
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