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China Bear Rescue
(中国熊救出プロジェクト)

池田こみち

掲載日:2007年2月18日



 聞き慣れないプロジェクトである。週末の夜はケーブルテレビでAnimal Planetを楽しんでいる。民放のくだらない番組をみるよりよほど癒され、勉強にもなるからだ。

 18日日曜日午後9時から、一時間のドキュメンタリー番組「China Bear Rescue」の放送があった。このところ、日本でも野生動物との共生が大きな問題となっているが、この番組が明らかにした中国における熊の虐待の実態はすさまじかった。2008年8月に予定されている北京オリンピックの開催に向け、一匹でも熊の救出を進めようと、AAF(Asia Animal Foundation)が取り組みを進めている。

 日本でも「熊の肝/胃」は昔から漢方薬として珍重され、多くの熊が胆嚢や胆汁を摘出されるためだけに殺されてきた歴史がある。しかし、日本では現在では密猟などで未だにそのような行為が行われている可能性が無くはないが、熊の胆汁を産業としては「生産」するようなことはしていない。

 しかし、中国では現在もなお、全国で7000頭以上の熊(主にツキノワグマ)が胆汁を生産するために熊牧場の檻につながれ見るに耐えない虐待的な扱いを受けているのである。

 中国ではつい最近まで熊の胆汁を生産する産業が政府から認可されていた。そのため、牧場主は野生の熊を罠で捕獲し、牧場に連れ帰る。その際、熊は罠に挟まれて、多くの場合、片手あるいは片足の先を失っている。あるいは首や腰などに罠の傷を受ける場合もあるという。

 牧場に連れて行かれた熊は、爪と犬歯を抜かれ、狭い檻に入れられる。そして、胆汁を常時採取できるように、麻酔もせず直に腹部にカテーテル(プラスチックかゴム製チューブ、金属の場合もある)を差し込まれ、定期的に搾汁される。カテーテルの先は鋭くとがった金属の部品が装着されていて、常に胆嚢を傷つけ汁を出させる状態となっているとのこと。

 もっとすさまじいところでは、熊の胴体に金属製コルセットを装着し、腹部に胆汁を採取するための袋を取り付け、定期的に麻酔を掛けて溜まった胆汁をとり、袋を新たに装着するというまさに拷問とおなじ扱いでクマを飼い殺しにしているというのである。

 あまりの苦痛と精神的なストレスのため、檻に頭や体をぶつけ続け(自傷行為)鼻の軟骨を砕いてしまったり、頭部の毛がすりむけ傷だらけになったりする熊も多い。また、腹部カテーテル挿入部分からは雑菌がはいり化膿し、傷口も治療もされないまま感染症を併発したり、化膿菌が脳にまで入り込み脳の異常を来す熊、生長阻害を引き起こす熊、腹部腫瘍が悪化している熊などすべての熊が複数の病気を抱えているのである。

 漢方薬として熊の胆汁はいまでも中国で販売されており、高値で取引されているようだが、消費者はそうした熊の取扱、熊牧場の実態はいっさいしらされておらず、ようやくここ数年少しずつその実態が報じられるようになった。インターネットで公表したところ、数日の間に数百満ヒットにも達し、人々の関心の高さがようやく政府を動かすきっかけにもなったようである。

 そうしたなか、来年にせまった北京オリンピックまでに、人間の人権問題だけでなく、野生動物に対するこうした酷い取扱を少しでも改善しようと、AAFが立ち上がった。

 2000年以降積極的な活動を展開している。まず、中国政府に今後は熊牧場の営業認可を与えないことなどを説得し、順次既に発行された熊牧場のライセンスを買取保証金を出して他の産業に転業してもらうという措置を進めているそうだ。

 当面、中国政府とも連携し、500頭の熊を救出し、必要な治療を受けさせた後、残された熊の余生を少しでも快適な環境で暮らさせてやろうと言うプロジェクトである。現時点で217頭が救出されているが、まだまだ7千を超える数の熊が日々苦痛に喘いでいるという。

 最近では、熊牧場の牧場主がライセンスの買取価格をつり上げてなかなか熊の解放に応じないという問題が生じている。また、貧しい農村部では、なぜ熊に金をかけて、人間には金をかけないのか、といった不満も噴出し、政府の指導もまだまだ徹底していないとのことである。

 AAFは香港に拠点をおき、Jill Robinsonさんが1998年に設立した動物保護財団である。イギリス、アメリカ、ドイツ、オーストラリアなどからの寄付金と中国国内の専門家、ボランティアなどの協力を得て活動を進めている。熊の胃にかわる漢方の薬草は多くあると言うことなので、熊の胃を珍重する慣習を少しずつでも見直していこうとする動きも始まっているようだ。

 日本では2006年のツキノワグマ捕殺数が4000頭を超えている。胆汁を取るために虐待している中国の実態とはことなるものの、この国の動物保護、動物との共生はまだまだお粗末な状態であることにはかわりない。日本クマネットワークでは、このままでは日本のツキノワグマの絶滅も危惧されると警鐘を鳴らしているが、早急な対策が必要である。


詳細は以下のURLを参照されたい。
 China Bear Rescue Project
 http://www.animalsasia.org/index.php?module=2&lg=en

 なお、アニマルプラネットでは今月、何回かChina Bear Rescue の再放送が予定されているので是非ご覧頂きたい。