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岩手県・宮城県における
災害廃棄物の焼却処理の全貌

池田こみち(環境総合研究所)

掲載月日:2012年4月18日
 独立系メディア E−wave


 環境省は、2011年末、博報堂に総額9億円で広域処理と除染の広報事業を委託した。また、2012年度も15億円が広域処理の広報費として支出されることとなっている。

■細野環境大臣の北九州市での問題発言

 広報事業の一環として細野環境大臣は全国を回り、駅前広場や街頭でチラシを撒き、メガホンを片手に「みんなの力でがれき処理」キャンペーンに余念がない。各地での市民の反応は次第に厳しいものとなっている。そんな中、3月25日には北九州市小倉駅前において街頭演説が行われ、細野大臣は重要な事実誤認発言を行った。

IWJ記者:「現在、石巻市には何トンぐらいの瓦礫があって、そのうちのどれくらいの量を北九州市で処理していただきたいと考えているのでしょうか」

 この質問に対して、細野大臣は、がれき受入の協力要請に来たにもかかわらず、まったく数字が頭に入っていない様子で即答できず、きょろきょろと同行していたであろう環境省の担当者に確認しながら、次のように答えた。

細野大臣:「だいたい岩手県分くらいで、400万トン、500万トンくらいです。
ただその中には広域処理で燃やせるものと燃やせないものがありますので、広域処理で燃やせるものはその中の・・・・、石巻のがれきのこれだけ、という量はまだ具体的にお示しをしていません」(強風のため一部聴取不可)

IWJ記者:「北九州市で一年間にだいたい何万トンのがれきを処理できるかご存じですか」

細野大臣:「...北九州市では、仮設の焼却施設を作っていますので、今一応仮設だけで300万×5ですから、それこそ1000万トン以上のがれきを処理できるようにはなっていますね。...」

詳細は以下のIWJの動画を参照のこと。

【IWJ福岡】北九州市での震災がれき受け入れについて 細野環境大臣
http://www.youtube.com/watch?v=h0qxqLp4-BI

 これを聞いて、北九州市市民ならずとも、いったいどうなっているのだろうか、と疑問をもった人は多いはずだ。市民への何の説明もなく遠く北九州市で1000万トン規模の処理能力をもつ焼却炉の建設が進んでいる?それだけで全体の1/2近くが処理できるではないかと。(すべて可燃性のものと仮定して)

 さっそく北九州市災害廃棄物専用ダイヤルに電話して確認したところ、細野大臣の発言がまったくの間違いであることがわかった。

 「北九州市は環境省からの協力要請に対して、既設焼却炉を前提とした場合、約4万トン/年を受け入れることが可能と回答しているが、実際に受け入れるかどうかを含め、これから市として検討していく予定であり、現在焼却炉をつくっているという事実はなく、1000万トン云々は石巻市での仮設焼却炉の間違いだと思います」という説明であった。


■岩手県・宮城県での仮設焼却炉の整備状況

 それでは、岩手県・宮城県における仮設焼却炉の整備状況はどのようになっているのか最新の情報を整理してみた。大田区議の奈須りえ議員がそれぞれの県の担当者に確認した情報を元に、一覧表にしたものを以下に示す。宮城県、岩手県では県のホームページに仮設焼却炉の情報を掲載している。以下は、アセスメントの概要等を示す情報一覧である。石巻ブロックだけで、総額2000億円弱となっている。

 ◇各ブロックの災害廃棄物処理の概要について
  http://www.pref.miyagi.jp/shinsaihaitai/proposal/index.htm

 ◇仮設焼却施設の生活環境影響調査結果の縦覧について
  http://www.pref.miyagi.jp/shinsaihaitai/assessment/index..htm

 ◇岩手/宮城 仮設焼却炉整備状況 一覧表 .gifファイル 添付


 環境省は、災害瓦礫処理を23年度〜25年度末までの3年間で行う予定としており、その予算は1兆円を超えている。そのうちの初年度分に相当する1/3は順調に執行されているとのことなので、まさに、広域処理以前に、地元での仮設焼却炉の設置が一大事業となっていることがわかる。

 それなのに環境省はなぜかくも広域での焼却にこだわるのか。1日あたりの処理能力が合計で4000t規模の焼却炉が完成すれば、広域処理の必要はなくなるのではないか。建設した仮設焼却炉をあと2年使用しただけで閉鎖→廃棄しようというのだろうか。

 その必要性と環境面、経済面からの妥当性を検証する必要がありそうだ。各地で既に焼却処理されている岩手、宮城の瓦礫を焼却した結果、飛灰から3000Bq/kgを超える放射性セシウムが検出されている。焼却して多少でも煙突から大気に拡散し、高濃度に濃縮された焼却残渣を管理型処分場に埋めることによる、今後の環境汚染について国は責任をとれるのだろうか。

 少なくとも、現状のままの焼却炉の監視体制では不十分であることは間違いない。未規制物質も対象とした長期的な環境監視が不可欠である。

 そもそも日本の従来からの焼却に偏重した廃棄物の焼却主義そのものに問題がある。