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瓦礫受入除外自治体に
340億円の交付金の笑止千万

池田こみち
掲載月日:2012年12月23日
 独立系メディア E−wave


 年末になって、いまさらのように「瓦礫受け入れ除外なのに14団体に340億円復興予算」というニュースが流れ、怒りを新たにした読者も多いことだろう。

 この一年、瓦礫の広域処理の問題点を全国各地で講演してきたが、受入を表明している自治体の多くは、そもそも受入の余力がなかったり、たまたまバグフィルターの替え時だったり、焼却施設の老朽化に伴う更新時期が近づいていたりだったりで、明らかに物取り的というか便乗商法的な「受入表明」であることが見え見えのところが多かった。

「政府は今年3月、がれきの広域処理が進まないため、テコ入れとして、交付金を含む支援策を決定。」とあるが、今年3月の時点では、岩手、宮城両県の災害廃棄物処理については、すべてゼネコンに発注済みであり、2013年度末までに処理できる見通しとなっていた。それに加えて今年5月には瓦礫発生量の大幅な見直し(下方修正)があり、ますます広域処理は不要なことが明らかとなっていた。

 テコ入れするのは広域処理受入を税金のばらまきで進めることではなく、既に発注された6000億円にものぼる災害廃棄物処理事業の進捗管理であったはずだ。

 それにもかかわらず、広域処理が進まないためのテコ入れで交付金、というのは明らかに環境省予算を死守するためのばらまきであり、到底許されるものではない。まして、それが実際に受け入れずに「検討しただけ」だったり、「検討すらしていない」自治体や一部事務組合にも交付金が行っていたとなれば、何をか況やである。

 2011年4月の時点では、環境省の呼びかけ(広域処理への協力要請)に対し、500以上の自治体が受入協力を表明したというのであるから、その時点で、すでにほとんどの自治体や組合は「検討」したのである。にもかかわらず、年末になって思惑通り受入が進まない事態となったのは、国の無策そのものなのに、今度は札束で頬を叩くようなやり方で無理矢理受入を進めようとするというのだからまさに笑止千万である。結果としてこの2年間で1兆700億円の予算が災害廃棄物の広域処理に投じられてしまった。

 そもそも、「検討」というのは何を指しているのだろうか。

 ・焼却施設や処分場などの既存施設における受入余力の検討(余力がない場合、いか  にして、民間処分場などを巻き込んで受入を強行できるかの検討) ・費用負担の検討(実際上は100%国の負担なので、どの程度事務費、固定費として  うまみがあるかの検討になる)
 ・住民合意の検討(マスコミが広域処理の必要性を喧伝していることもあり、反対派
  を非国民呼ばわりし、「絆」で乗り切れるかどうかの検討)
 ・安全性の検討(自治体版御用学者を集めて、政府の定めた基準より厳しい基準を
  俄づくりし、慎重を装えば受け入れられるかどうかの検討)
 ・試験焼却などの検討(既成事実として少量を運び込み、安全性をPRすれば本格受入
  に持ち込めるかどうかの検討)

 いずれもありそうな、というか実際にあった各種検討である。いずれも懸命な市民はすぐに見破り反対運動を強化する。こうした行政の暴走をきちんと監視し是正するのが議会の役割だが、それもこの間まともに機能しなかった。それどころ、最終的に合意形成手続きは無視され、反対住民の一部をみせしめ的に逮捕したり、という非民主的な暴挙が各地で起きている。

 マスコミは今になっていろいろな批判を始めているが、これまで自分たちがなんら検証もせず、がれきの広域処理が必要だと行政のお先棒を担ぎ、推進してきたことについて、いかにメディアの体をなしていなかったのか、反省して欲しい。