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平成二七年十一月三日

無極会茶会 無事終了

池田こみち(宗蹊)
掲載月日:2015年11月3日
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※ 独立系メディア E-wave Tokyo 茶道 文化


 今年も好天に恵まれ、無事に無極会が終了しました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。秋の一日、ゆっくりとお楽しみ戴けたら幸いでした。

 今年は6年ぶりに小間(台目席)を担当しました。茶道会館の台目席は三畳台目ですので、10名様くらいでちょうどですが、大勢のお客様でしたので、平均12名、最大14名のお客様にお入り頂きました。


小間(台目席)

 広間とは違った小間の風情を味わって頂けるような道具を選んでみましたが、なかなか思うようには行きません。


床の間


左から池田宗蹊、山形美智子、青山貞一

 下は青山さんとご一緒に参加された斎藤真実さんです。写真から今年も11月3日が好天なことが分かります。 


青山さんとご一緒に参加された斎藤真実さん 


●軸は 雁来紅 大徳寺 伝衣和尚の画賛
    葉鶏頭の水墨画に 「帰去来 来去帰」の文字

 「帰去来」とは、中国、六朝時代の東晋の詩人 陶淵明の詩に由来します。「田園 将(まさ)に蕪(あ)れなんとす 胡(なん)ぞ帰らざる」という一節が有名です。拘束を嫌い、官職を辞して、自然豊かな故郷に帰り心豊かに生きようとする決意を述べた詩ということで、今を生きる私たちの心にも通じるものがあります。 

 この画賛を書かれた伝衣和尚は、大徳寺第六代管長を務め、昭和15年に七十歳で亡くなられています。

 何度目かのお席でお正客をしていただいたお客様とのお話で、ちょうどご自身もリタイヤされたばかりだったこともあり、ご自身の心境とぴったりと感想を述べて頂きました。また、「陶淵明はお酒が好きで飲兵衛だったみたいです。」というエピソードも教えて頂き、お席が和みました。ちょうど茶杓の銘が「林間暖酒」という白楽天の詩からとった銘でしたのでなおさらでした。お酒好きにはこれからの季節、紅葉の落ち葉の焚き火でゆっくりお燗をして一杯というのが何とも言えない愉しみとなります。


●花入 富士の裾野の竹を以て 九つの内 掛け花篭 一閑作


花のアップ

  今年の立冬は11月8日、風炉から炉に切り替わる時期ももうすぐです。11月3日は晩秋の残花をいろいろ篭に入れてみました。7種類です。照葉は、小葉の髄菜、ヒヨドリ上戸の赤い実、白の桔梗、白い蕎麦の花、赤い水引、紫色の野紺菊そして黄色の嵯峨菊でした。せっかくの小間ですので、都会の片隅のお茶席ではありましたが、お客様に自然を感じて頂ければとの思いからです。


●香合 紅葉古木吹き寄せ蒔絵 勧修寺の古木を以て


香合のアップ

  紅葉の古材を以て作られた香合は、小間にぴったりの趣を出しています。蓋と実を合わせた立ち上がりの部分に金彩で吹き寄せの蒔絵(銀杏や紅葉、松葉が散らして描かれています)があり、紅葉の古材の木肌を残してつくられた全体の雰囲気を壊さない地味なしつらえとなっています。


小間全景


風炉・釜と水指


●風炉・釜
 茶道会館の台目席は深三畳の台目席で点前座には台目棚があります。今年は土風炉(雲龍風炉)に雲龍釜の小を使ってみました。土風炉には、川部宗無宗匠の箱書きがあります。また、対となっている小の雲龍釜(道也作)は、利休好みで、鉄の共蓋に掻立環が付いています。胴回りにはその名の通り雲と龍の鋳出し模様があります。利休の時代に小間で使われていた様子を思い浮かべながらお茶を点ててみました。


●水指
 今回使用した水指は、「伊賀耳付き」。どっしりとお座布団の上に座ったような姿で、大きな耳と共蓋のつまみが目立ちます。前面には緑色の釉薬が美しい景色を作り出しています。重いので置き据えとさせて頂きました。私どもの師匠である川部百代先生のご主人である川部宗有宗匠の箱書きがあり、先ほどの風炉とともに、無極会にとってゆかりのあるお道具の一つです。


乾山写し喰篭


蓋を開けたところ


萩 菊形 喰篭

 お菓子は虎屋製のきんとん「初時雨」という銘でした。乾山写しの「武蔵野」と萩焼きの「菊型」の喰篭に入れてみました。お点前はいまひとつうまく出来なくてもせめて美味しいお菓子とお茶を召し仕上がって頂いてお茶会を楽しんで頂ければと思っています。母がきんとんが好きでしたので毎年きんとん製のお菓子を選んでいます。そして、点前は美味しいお茶を点てることに集中するように、心がけています。


主茶碗と茶器

 主茶碗は、井戸形の黒楽で銘は「真砂」でした。小間には黒が似合うように思います。茶器(棗)は先代の家元即中斎による乱菊の自画で、これも金銀や色彩豊かな蒔絵とは異なり、楚々とした美しさがあります。


 外はまだ紅葉には早い茶道会館のお庭でしたが、吹く風は少し冷たく心地よい秋の風でした。せめて、お茶碗で秋の風景を味わって頂こうと、いくつか紅葉の柄の茶碗を使いました。


乾山写し、武蔵野 永楽造


紅葉 銘「時雨」、真葛焼き


蔦の絵、真葛焼き


乾山写し雲錦模様、松阪万古


楓 刷毛目、河合栄之助作


 斯くして、午後4時近くまで水屋はてんてこ舞いして、全15回のお席を終えることができました。


水屋の風景1


水屋の風景2

 最後に、社中一同で記念撮影です。受付係始め、社中一同、お客様と一緒に、恒例の行事を楽しませて頂きました。

 社中を代表し、御礼申し上げます。


池田社中 集合写真


池田社中 集合写真


(完)