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鹿児島県の風力発電事情

  池田こみち

掲載日:2014年6月4日
独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁



 真夏日が続く5月末の5日間、鹿児島県薩摩川内市に出かけた。

 2012年6月に災害瓦礫広域処理の問題で鹿児島市内での講演を行うために立ち寄って以来2年目の帰郷となる。


鹿児島県 薩摩川内市   出典:グーグルマップ

鹿児島県の風力発電事情

 2013年度末のNEDOのデータによると、鹿児島県は、青森県、北海道に次いで、全国第三番目に風力発電の規模が大きい県である。総出力218,415kW、全139基となっている(自家発電・試験運転を含む)。

 図1は、鹿児島県内の風力発電施設位置図、表1は、施設概要リストである。


図1 鹿児島県内の風力発電位置図        出典:NEDO

表1 鹿児島県内の風力発電施設リスト 

出典:NEDO

 その中でも最大規模を誇るのは、九州電力が設置した長島風力発電所(長島ウィンドヒル)であり、総出力50,400kW(2400kw×21基)が2008年10月に営業を開始している。

 今回は時間の関係で長島までは行かれなかったが、川内原発視察の際に、現在試運転中の柳山ウィンドファームの風車を見ることが出来た。まさに、原発のすぐ目と鼻の先の丘陵に12基が既に完成していた。


図2−1 柳山ウィンドファーム風車の位置 


図2−2 柳山ウィンドファームの位置  
    
 薩摩川内市高江町柳山から久見崎町笠山周辺に12基が立ち並んでいる様子をグーグルマップ上にイメージしたものがあったので図3に示す(文字は筆者が挿入したもの)。


図3 全12基が配置されたイメージ図 
 出典:薩摩川内市 次世代エネルギーウェブサイト より作成
    http://jisedai-energy-satsumasendai.jp/ene-facility/2595/

 実際に、川内港の甑島行き高速フェリーのターミナル付近や河口大橋から風車を臨むことができた。まだ稼働前なので回ってはいなかったが、雄大なその姿は、原発のすぐ近くにあるためか、なぜか一層希望に満ちているように見えた。


写真1 丘の上の風車(港から臨む) 


写真2 同 (橋の上から臨む)  


写真3 同 (拡大写真)     

 平成25年12月には1基目が、平成26年3月中には12基全基が建設され、現在は5基が試運転中となっている。運転開始は、平成26年10月を予定しており、約15,000世帯へ供給できる発電能力を備えている。

風車の概要は以下の通りとなっている。

(1)風車メーカー   エネルコン社(ドイツ)
(2)機種名      E−82
(3)最大出力     2,300kW
(4)風車全高     119m
(5)風車ブレード径  82m


写真4 風車の概要
 出典:(株)柳山ウィンドファーム Webサイトより

 現時点での鹿児島県内の売電用風力発電総出力は約21万キロワット程度となっているが、今後、風力発電の潜在エネルギー賦存量は非常に大きいと思われる。なんといっても、二つの半島(薩摩半島・大隅半島)があり、熊本から南下して、桜島を中心に据えた錦江湾をまわり宮崎までの海岸線は2,722kmに及ぶ。

 台風の通り道ではあるが、同時に常に海風が豊かに吹いている。まさに、下北半島と津軽半島の二つの半島が陸奥湾を抱えている青森県と同じ条件と言うことになる。

 ちなみに、総務省がとりまとめた、「再生可能エネルギー資源等の賦存量等 の調査についての統一的なガイドライン〜 再生可能エネルギー資源等の活用による 「緑の分権改革」 の推進のために 〜」平成23年3月、緑の分権改革推進会議 第四分科会 のレポートに掲載されている、再生可能エネルギー資源等の賦存量一覧(都道府県別、その1)を見ると、太陽光発電、太陽熱利用、陸上風力、洋上風力の4つとも鹿児島県のうちで、賦存量は上位にあるが、中でも陸上風力は北海道を除くと、青森、岩手に次いで第三位、洋上風力は北海道を除くとダントツの一位となっている。

鹿児島県の再生可能エネルギー賦存量
 太陽光発電 13,103,685,161MWh (北海道を除くと7位)
 太陽熱利用  47,173,266TJ (北海道を除くと7位)
 陸上風力 145,511,255MWh (北海道を除くと3位)
 洋上風力 3,172,185,997MWh (北海道を除くと1位)

 これまで、九州電力の玄海原発と川内原発が九州全域の電力需要の4割を賄ってきたが、現在はそれらがすべて停止した状態となっている。原発稼動中はピーク電力の補充用に用いていた火力発電所全9カ所(石炭3カ所、LNG2カ所、石油4カ所)がフル稼動して補っている。それでも電力はなんとか賄っていけているのであり、各企業も努力している。

 薩摩川内市内の大手企業の一つである製紙メーカー、中越パルプ工業は、メガソーラーやバイオマス発電の設備を設置し、FIT(再生エネルギー固定価格買取制度)を利用した発電事業に乗り出している。

−−−以下 株式会社 紙業タイムス社「Future 5/13号」より抜粋−−−−−

 同社はこれまで、森林資源の有効活用を目的に、鹿児島県を中心とした九州中南部で間伐材や竹材の集荷拡大に努めてきた。この経験と同地域での強い集荷基盤を活かし、さらなる未利用間伐材の利用促進を図るため、木質バイオマス燃料を使用した発電事業に参入するもの。

 また太陽光発電事業については、薩摩川内市が進めている「次世代エネルギー導入を通じたまちづくり」の一環として、遊休社有地に太陽光発電設備を設置し、発電事業に参入する。

<バイオマス燃料発電設備>
〔設置場所〕川内工場内
〔発電能力〕約25MW
〔売電量〕約154GWh/年
〔売上高〕約48億円/年
〔投資額〕約85億円
〔使用燃料〕未利用木材等の木質バイオマス燃料
〔発電開始時期〕2015年11月

<太陽光発電設備>
〔発電所名〕中越パルプ工業 唐浜メガソーラー発電所
〔所在地〕鹿児島県薩摩川内市
〔発電能力〕1,810kW
〔想定発電量〕1,900MWh/年
〔売上高〕約7,000万円/年
〔投資額〕約5億円
〔発電開始時期〕2013年8月

出典:中越パルプ工業=バイオマス&太陽光発電で売電事業に参入 
   Paper Mail
   
http://www.kpps.jp/papermall/knowledge/NEWS/KNP0003201

 九電は、原発が停止しているために火力発電所の燃料費その他のコストがかさみ、2000億円以上の出費となると経営の窮状を訴えているが、その上、再稼働のための各種準備や第3号機の増設などに向け、原発維持のためのコストは天井知らずであり、電力消費者の負担は増すばかりとなる。

 この機会に、既に稼動から30年が経過した川内原発1号機の停止に踏み切り、鹿児島県の豊かな自然エネルギー資源を生かした自然エネルギー基地への転換を官民挙げて進めるべきではないだろうか。

 原発の足下から眺めた柳山ウィンドファームは、そのことを訴えかけているように思えてならなかった。

つづく