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「共謀罪」成立当面阻止!
〜直ちに、次の闘いに備えよう


弁護士 海渡 雄一

2006年6月1日



 ぬか喜びになってはいけないと思いつつ、どうやら、今国会における共謀罪の成立 は避けられる見通しがはっきりしてきたようである。強行採決が見送られた5月19 日以降の状況を振り返ってみよう。

1 5月19日以降の経緯

 5月19日に強行採決が予定されていたが、これが河野洋平衆議院議長の裁定によ り、延期された。その背後では、会期延長をしたくない小泉首相の意思が働いていた という報道もなされている。

 5月26日以降、法務委員会石原委員長の提案で、与野党の実務者協議会が準備会 合も含めて断続的に開催されてきた。

 この実務者協議会は自民党、公明党、民主党の 三党で構成されていて、正式の一度目が5月29日、二度目が5月30日に開催された。

 5月30日法務委員会理事会が開催され、この協議会の途中経過が報告された。

 こ の中で、修正のための検討事項として@逮捕の要件、A共謀の定義の明確化B共謀罪 と対象犯罪の吸収関係C対象犯罪が実行されなかったとき、自首のときの刑の減軽・ 免除についてD共謀罪の対象犯罪E対象犯罪の選定と犯罪の国際的な性質、の6点が 理事会に報告された。6月1日には次の理事会がセットされている。

2 首相と自民党幹事長が確認

 ところが、5月31日昼の段階で、共同通信によれば,【政府、与党は31日、 「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正案の今国会成立を断念した。

 小泉純一郎 首相が自民党本部で武部勤幹事長らと会談し、会期延長しないことを確認、「次の国 会できちんと仕上げるよう野党と段取りを付けるべきだ」と、同改正案を継続審議と し、秋の臨時国会で成立を期すよう指示した。】ということとなった。

 この報道は各 紙が確認しており、もうこの結論が動くことはあるまい。明日以降も警戒態勢は解か ないで、国会の動向に注目する必要はあるが、政府与党の高いレベルでなされた判断 が覆される可能性は小さい。

3 水面下で続いていた与野党のデッドヒート

 実は、今日の31日の段階に至っても、法務委員会与党理事は与党最終修正案なる ものを野党側に提示し、来週には採決を求めるという最後の努力を継続していた。

 この最終案は上記の6点について一定の譲歩を示したものであるが、犯罪の越境的 性質は要件とされず、また、600を超える対象犯罪も過失犯などごくわずかな例を はずそうとしたものにとどまり、なお抜本的な修正案とはいえないものであった。

4 今国会における共謀罪成立を阻止した!

 このように、法務委員会の与党理事とその背後にいた法務省は最後まで、共謀罪法 案の今国会中の成立、ないしせめてもの衆議院での可決を求めて必死で活動してい た。

 しかし、結局国会日程との関係で、今国会での成立は完全に難しくなり、衆議院 での採決も見送られる見通しとなったのである。これは、基本的人権を抑圧し、我が 国の刑事司法体系を変えてしまうと指摘された悪法について、与党絶対多数という不 利な国会状況の下で、大多数の国民が反対している世論を作り出して、これを背景に 闘い、その成立を阻止したのであり、1950年代の警職法改正を阻止したとき以来 の、我が国の民主主義政治の歴史上、画期的な出来事と言っていいであろう。

5 6.13に集まって、秋の臨時国会に向けた運動の方向性を話し合おう。

今国会の終盤である6月13日に、共謀罪反対の市民集会が開かれることとなっ た。主催は超党派国会議員と市民団体である。

 国会会期末で、強行採決の危機に備えるために設定された集会であったが、今国会 における法案成立の危機はほぼ乗り越えつつある。しかし、政府与党が共謀罪の成立 をあきらめたわけではない。

 法務省はどんなに修正してでも、共謀罪を作りたいと考 えているようであり、秋の臨時国会では問題は再浮上するだろう。国会の休会中も与 野党協議続けられることとなるかもしれない。ここで、反対の手をゆるめてはならな いのである。

 集会のチラシのうち、テキスト部分を以下に抽出して、メールする。この会場は1 000人もはいる大きさである。ぜひ、この会場を満員にして、秋に向けた共謀罪反 対運動ののろしをあげよう!