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隠された大口事業所のエネルギー消費の実態!

地球温暖化防止情報公開訴訟を提起
〜2003年度省エネ法定期報告の分析から〜

気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵


掲載日:2005.7.29
PRESS RELEASE      2004年7月29日
                          

 省エネ法においては、指定工場に対して、毎年の定期報告の中で「燃料等」 と「電気」の消費量の報告義務があるが、この情報はこれまで公開されず、温 暖化対策の策定に活かされてきていない。
 気候ネットワークでは、2004年6月2日に2000年度報告の情報公開情報につい て分析し初めて実態を公表した。さらに、2004年8月に2003年度分の報告情報 の開示請求を行い、2005年3月までに24次にわたって順次回答を得た。しかし ながら、今回の開示請求においても、対象事業所の15%について開示されな かったため、全容を理解するには至らなかった。

 省エネ法に基づく報告情報は、実効性のある温暖化対策を策定、実施、評 価、見直しを行うための前提として不可欠の情報であり、本来、非開示とされ るべき情報ではない。気候ネットワークでは経済産業大臣に対して審査請求を 申立ててきたが進展が見られないため、代表的事業所についての非開示決定の 取消を求める訴えを提起することとした。
 開示された資料から明らかになった主な点は以下のとおりである。

1.753(15%)事業所について非開示!

 開示率では若干の改善(2000度分開示請求での非開示率は17%)がみられた ものの、今回も、対象5037事業所のうち753事業所(15%)について 開示されなかった。うち、高炉による製鉄、石油精製、セメントなどエネルギ ー多消費の業種では、ほぼ100%非開示であった。他方、食品製造業やゴム製 品製造業等に含まれる一部業種には1,2の事業者のみが非開示であった業種 もある。いずれも非開示の理由は、「製品当たりのエネルギーコストが類推さ れ、競合他社の競争上の不利益や販売先事業者との価格交渉上の不利益が生じ ること等が想定される」というものである。エネルギーコストが1%に満たな い業種の事業所までこれを名目に非開示としている例もあり、経済産業大臣は 公開・非公開の判断を当該事業者に委ねたものといわざるをえない。

2.上位約200の大口排出事業所でわが国の総CO2排出量の過半を占める!

 開示事業所からの排出量はわが国の総CO2排出量の約38%を占める。

 うち、1〜50位で25%、51〜100位で6%、101〜500位で5 %、その余の約4000事業所分で2%である。上位50位までは、1事業所を除 いて発電所である。

 また、開示されなかった事業所からの排出量はわが国の総排出量の約23% を占めると推定される。うち、高炉による製鉄、セメント、石油精製業の上位 約80事業所からの排出が19%を占めると推計される。

 こうした実態は、2000年度分(同上位約200事業所で47%)と同様であり、 2003年度分でよりその割合が高くなっている。

 また、今回は業務部門の報告対象となり、959事業所について開示された (開示率98%)直接排出量で300千t−CO2、電力配分後のCO2で1,400万 t-CO2である。この値は電力配分後でもわが国の総排出量に対して約1.1%にと どまる。

※グラフ等に関しては、HPをご参照ください。
http://www.jca.apc.org/kikonet/iken/kokunai/2005-7-29.htm

3.開示されなかった事業所の情報は重要! 非開示決定の取消訴訟を提起!

 このように、開示されなかった754事業所のうち、特に大規模排出事業所 の日本の総排出量に占める割合は極めて大きく、温暖化対策を実効性あるもの とするために不可欠の情報である。また、事業所ごとの取組みを評価するため に、CO2排出量だけでなく、エネルギー種別ごとの使用量の経年的変化が明ら かになることが必要である。

 2005年度通常国会で地球温暖化対策推進法が改正され、一定規模の排出量を 有する事業所について、ガスごとの排出量の算定・報告・公表制度が導入さ れ、開示請求権が盛り込まれたが、CO2についてはエネルギー種別ごとの情報 は含まれておらず、かつ、事業者保護に重きが置かれた秘密保護条項が盛り込 まれているため、その実効性が懸念されている。

 情報公開法は、行政機関にその保有する情報の原則公開を義務付けている。 同法第2条イ項で保護しているのは製法等のいわゆる企業秘密であり、燃料や 電気の消費量の開示によって当該事業者の正当な利益が害されるものではな い。人類の安全に重大な影響をもたらす地球温暖化にかかる情報においてはな おさらである。特定事業者と経済産業省の秘密主義が、深刻化する温暖化対策 の前提となる情報基盤の整備すらを遅らせているといわざるをえない。

 気候ネットワークは経済産業大臣に対して順次、審査請求を申し立ててきた が、いまだ開示されないため、本日、名古屋地裁及び大阪地裁に代表的事業所 についての非開示決定の取消しを求める行政訴訟を提起した。東京地裁にも近 日中に提起する予定である。