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徳島県「上勝町」のゼロウエイスト実践を長野で聞く
青山 貞一

掲載日:2004.6.6

 青山は、4月下旬、弁護士仲間の全国組織、ゴミ弁連が開催した茨城県「水戸総会」のパネル討議で、笠松和市町長と隣り合わせとなったこともあり、ぜひ一度長野にお呼びし、お話をを伺えればと、別途お願いしていた。偶然にも、長野県廃棄物対策課も、笠松町長に講演をお願いしていたのだ。

 2004年6月4日、全国で3000余ある市町村のなかで、とりわけ個性、独創的をもち、何よりも具体的にそれらのアイディアを創意工夫をもとに実践している徳島県上勝町(かみかつ)の笠松和市町長を長野市におよびし講演会を開いた。

 講演会当日は、県民、市町村職員、県職員、県議会議員、企業関係者など約400名が講演会に参加、熱心に町長の熱弁に耳を傾けた。今回、上勝町長を長野に呼んだのは、現在、長野県が進める廃棄物条例制定を担当する長野県廃棄物対策課である。

 ところで、なぜ、廃棄物対策課が上勝町長をお呼びし講演会を開催したかだ。

 上勝町は、人口規模2000ちょっとの小さな町、それも町域の75%が森林と言う、長野のような町だが、その上勝町が日本で最初に廃棄物ゼロ、すなわち「ゼロ・ウエイスト」宣言をしたのである。昨年9月のことだ。

 町では町長はじめ全町民が「ゴミは資源だ!」を合い言葉に実に34種類の分別を実践している。上勝町はゴミの発生抑制とともに「脱焼却」、「脱埋め立て」を理念とし、真の循環型社会づくりを全町民参加で実践している。

 上勝町の「ゼロ・ウエイスト」宣言は、昨年6月、私が代表取締役を務める株式会社環境総合研究所とかのグリーンピース・ジャパンが東京都豊島区のサンシャインビル会議室で共同開催した「ゼロ・ウエイスト」の国際セミナーに、米国から参加したセント・ローレンス大学のポール・コネット教授が、セミナー終了後、グリーンピースの佐藤潤一さんとともに、現地を訪れ笠松町長と議論、したのがきっかけとなっている。

 閑話休題

 講演会終了後、上勝町長は県庁1階にあるガラス張りの知事室を訪れ、田中康夫県知事らと約1時間懇談し、私も参加した。

 知事との懇談では、ゴミ問題だけでなく、町民の発意、創意工夫をもとに、現在主要なまち産業に発展した数々のプロジェクトについて、町長が持参したCD−ROM(PDF)を知事に見せながら懇談した。

 やはり、日本にも「観客民主主義」や「手続民主主義」など、議論ばかりでなく、行動、実践を優先し、成果をあげているまちがある。それも町の75%が森林の徳島県の片田舎の町で。長野県内の市町村は、まさに上勝町を見習うべきだ、と思う。


長野県庁知事1F室にて、左から青山貞一長野県環境保全研究所長、笠松和市上勝町長、
田中康夫長野県知事


長野県庁1階のガラス張り知事室で懇談する笠松町長


長野県庁玄関前で。左から青山、笠松町長、今井県議会議員


 以下は上勝町のゴミゼロ宣言と行動宣言。
 町長の配付資料より
上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言及び行動宣言

〈前文〉

 上勝町は、平成9年廃棄物処理法の改正を受け、徳島県が策定した循環型廃棄物処理施設広域整備構想に基づき、県の指導のもと平成12年度小松島市と勝名5町村で、東部Iブロックごみ処理広域整備協議会を設立し、最先端の大型(日量100トン以上)ごみ焼却場の建設について、調査研究を継続しておりますが、設置場所や建設規模などにおいてその目処は全く立っていません。

 今後において小松島市外5町村の広域ごみ焼却施設ができると仮定しても、膨大な経費と管理運営費が必要となり、こうした施設の建設は、平成12年度に政府が策定した「循環型社会形成推進基本法」とは逆行するものであり、しかも、将来のごみの分別資源回収が進むと焼却量が減少し、この焼却施設の管理運営が成り立たなくなることは明白であります。

 また、一般廃棄物最終処分場の建設については平成12年7月上勝町大字福原、通称蔭行に3.36haの用地を確保しましたが、処分場建設には多額の経費と管理を要することから当分の間は建設を見送り、第2期松茂空港拡張工事周辺整備事業の徳島東部臨海最終処分場対策協議会による建設計画に加入、現在平成18年度完成を目標に工事が進められています。

 この最終処分場は、徳島県と徳島市外16市町村が加入していますが、総事業費139億円、完成後の管理運営は、財団法人徳島県環境整備公社に委託し管理運営費は、県と関係市町村が処分量に応じて負担することになっています。

 また、東部臨海最終処分場が順調に建設されて運営されたとしても、その使用期限が平成19年度から28年度までの10年間に限られており、それ以降はまた別の新たな最終処分場の建設が必要です。

 国の政策は、廃棄物の発生抑制を第一とした「循環型社会」の形成を推進することになっております。しかし一方で、従来型の焼却を中心とした政策が現在も推進されており、基本法が公布された平成12年度でも、焼却炉や埋立地を中心とした廃棄物処理施設の建設・改修に約6,500億円が費やされており、その内約1,900億円が環境省の国庫補助で補われています。

 現在進められているごみの高温(800℃以上)焼却、ガス化溶融炉、RDFによるごみ発電等は、世界中の多くの国が地球温暖化防止を定めた「京都議定書」にも反するものであり、早期にこうした方法は改めなければならないと考えています。

 焼却炉をはじめとした施設建設、そしてそれらへの依存は、環境汚染・住民の不安・自治体の財政圧迫などの深刻な問題を引き起こしております。その高額な施設は、廃棄物の発生を促すものであり、抑制にはつながりません。

 さらに、現行の国の政策では、莫大な補助金を使う、誤った誘導政策によって自治体に過度のごみ処理責任を課すものとなっております。そして、生産者である企業の負担は自治体の負担より少なく、自治体が再利用・再資源化によりごみの減量を推進しようとしても国の補助誘導政策により実施できていないのが実情であり、今後税金による負担は増し、私たちの健康や環境が犠牲になると予想されます。

 私たちは、地球に残された貴重な資源を無駄にし、環境を汚染するごみ処理施設の建設のような処理対策を求めているのではなく、「製造や消費段階においてごみの発生を予防する政策」や「資源が循環する社会システムの構築」を求めております。そのためには、国が法律で拡大生産者責任を明確にし、製造から販売につながる逆ルートで製造業者が有価回収し、再利用、再資源化を進める仕組みを作る必要があります。それによって技術開発が進むとともに新しい仕組みがつくられ、21世紀の中期には、日本が世界に貢献できる可能性を秘めております。

 上勝町は、焼却処理を中心とした政策では次代に対応した循環型社会の形成は不可能であると考え、先人が築き上げてきた郷土「上勝町」を21世紀に生きる子孫に引き継ぎ、環境的、財政的なつけを残さない未来への選択をまさに今、決断すべきであると確信いたします。

 ここに上勝町は、「21世紀持続可能な地域社会」を築くために幅広く上勝町住民、国、徳島県、生産者の協力を強く求め、2010年を目標としたオーストラリアのキャンベラ、カナダのトロント、また2020年を目標としたアメリカのサンフランシスコ、更にはニュージーランドにおける半数以上の自治体のように具体的な長期目標を掲げる「ゼロ・ウェイスト宣言」を採用し、2020年までに焼却・埋め立てに頼らないごみゼロをめざし、本日、別紙のとおり「上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言」及び「上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)行動宣言」をいたします。


上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)行動宣言
  1. 上勝町は、焼却(ガス化溶融炉、RDF発電等も含む)、埋め立てが健康被害、資源損失、環境破壊、財政圧迫につながるものであることを認識し、焼却処理及び埋め立て処理を2020年までに全廃するよう努めます。その達成を確実なものとするため、上勝町自体がその責任を果たす努力を惜しまないことは勿論、国、徳島県、生産者にも最大限の努力を求めていきます。
  2. 上勝町は、地元で発生するごみの徹底的な発生抑制、分別・回収を指導し、2020年までにごみの発生率を最小にし、回収率を最大にできる上勝町にあった、ごみの発生を抑制するための教育システム、分別回収システムの構築をめざします。
  3. 上勝町は国及び徳島県に対し、同様にごみの発生を抑制するために期限付きの高い目標設定を求め、その目標にあった拡大生産者責任の徹底などの法律や条例の改正整備を早急に行うとともに、ごみの発生抑制、分別回収の徹底に役立つ制度の早期確立を求めていきます。
  4. 上勝町は、あらゆる製品の生産企業に対し、2020年を目標にその製品の再利用、再資源化などの再処理経費を、商品に内部化して負担する制度の確立を求めます。これは同時に、2020年を目標にごみが発生しない、または分別回収、再利用、再資源化が容易な製品への切り替えを求めるものであります。また、2020年以降も安全かつ環境負荷の少ない方法で再利用、再資源化できない製品を製造する生産者に対しては、環境負荷にかかる経費を考慮し、それ相応の措置をとるよう求めていきます。
  5. 上勝町は、日本国内の他の市区町村においても、上勝町と同様の目標を定め、相互ネットワーク構築による目標達成への協力体制が今後強まることを願い、積極的な情報交換を行っていきます。 
  6. 以上宣言します。

   平成15年9月19日
                徳島県勝浦郡上勝町