末期的症状を呈する自民 その1 「月刊現代」9月号が提起したもの 青山貞一 掲載日2005.8.3 |
日本の戦後政治のメインストリームを歩んできたのが自由民主党、自民党であることを否定するものは、まずいないだろう。 何度となく分裂、破裂しそうになっても、また一端下野してもすぐに政権与党の座に君臨してきたことも、まぎれもない事実だ。 だが、ここ一年を振り返ると、そこにはまさに自民党の末期的症状、それも組織の保身を一義とする、はたから見ると実に見苦しい、なりふりかまわぬ自民党の姿が見て取れる。 果たしてこんな自民党に、日本丸の舵取りをまかせてよいか、と考える日本人が多くなってきていると思う。 私は生まれてこの方、これほど国民益から離れ、ただただ自分たちの組織保身に暴走する自民党を見たことがない! それを例証する事柄は、まさに枚挙にいとまがない。 本特集では、具体的な事実を例として自民党の末期的症状を検証したい。 最近の自民党を巡る出来事で一番こっけいなのは、月刊現代9月号が発刊されたとたんに、問題の本質、すなわち「自民党政治家によるNHKの番組への政治的介入」がどこかにすっ飛んだことだ。 自民党の武部幹事長は、今後、朝日新聞の取材を拒否する決定をしたのだ。これなど問題のすり替えもはなはだしい。まったくの筋違いではなかろうか。 私は8月1日、月刊現代9月号を購入、22頁に及ぶ魚住昭氏のレポを読んだ。それも2回読んだ。おそらく誰が読んでも、22頁から読者に伝わってくるのは、やっぱり自民党の政治家がNHKに圧力をかけた、と言うことだ。同時に、くだんのNHK幹部と朝日の記者とのやりとりは長時間におよんでいるが、一字一句のやりとりを読めば、与党政治家からの政治介入、圧力はいわば日常化していることが読み取れる。 著者の魚住氏はれっきとした元共同通信の記者あがりのフリージャーナリスト、その魚住氏は月刊現代9月号のスクープ記事の冒頭で次のように述べている。「それをお読みになれば、これまでウソをつき、われわれを誑(たぶら)かしてきたのは誰かということがはっきりおわかりになるだろう。そしてNHKという巨大な放送局が抱え込んだ闇の深さに改めて驚かされるに違いない」と。 まさにそうだ。この間、安倍晋三、中川昭一、自民党の両幹部議員は、まさに口汚く朝日新聞を罵り、罵倒してきた。「誤報だ」、「捏造だ」、「朝日は誤れ」と!。だが魚住リポートが顕示する事実が真実であるなら、なぜ、武部自民党幹事長は、今後、「朝日の取材お断り」などと日本一の大規模公党としてあるまじきことを公言したのか? これはけっして大人気ないとか、子供の喧嘩などでかたずけられる問題ではない。 自民党幹事長は朝日新聞の取材を拒否する理由として、「わが党の国会議員が、不当、卑劣な方法による取材で、被害を受けることがないように、自粛してもらうことにした」などと言っている。まさにこれは事の本質そっちのけの言い逃れ、問題のすり替えではないか。 国民が最も注目してきたのは、安倍、中川と言う自民党の若手有力議員がNHKと言う公共テレビ放送の番組内容に政治的圧力や介入を国民の見えないところでしていたかどうか、その一点である。 誤報だ、捏造だ、誤れと朝日新聞に言ってきた安倍、中川両氏は、魚住氏が朝日新聞インタビューをスクープし、全面的にテープおこしした一問一答の内容のどこに問題があるのか、インタビューに答えたことと違うのかこそ、一字一句示すべきではないのか! それこそ、国民が最も知りたいこと、重視することである。問題は到底、「朝日新聞記者の取材資料の流出」ではないはずだ。 一方、この間、自民党議員はくだんの朝日新聞の記者が左翼記者である....と繰り返し発言してきた。 だが、繰り返すが、この問題の本質は、朝日の本田記者が左翼であるか右翼であるか、この際まったく関係ない、と思う。仮に番組のテーマ、素材がいわゆる右翼系のひとびとに気に入るかどうかは、この際、問題の本質ではないだろう。 私たちから見れば、武部自民党幹事長が言っていることは、今までさんざん安倍、中川両衆議院議員がマスコミの前で公言してきたことが、魚住氏のリポートによって事実と違うことがわかり、右往左往しうろたえた挙句、公党として言ってはいけないことを言ってしまった・ おそらく朝日新聞はNHKへの政治介入に関して当初出した記事が問題となった後、 朝日が報じたくても報じるのが難しかった安倍、中川両衆議院議員とのやりとりの詳細が月刊現代9月号に出た。自民党としてみれば、インタビューが録音されていれば、とっくに朝日は出していると踏んで、誤報、捏造云々と言ってきたわけだが、まさかこのような形でインタビューの一問一答、一字一句が公になるとは思っていなかった。 突如公表された一問一答、一字一句の自民党はうろたえ、朝日新聞に問題のすり替え、つまり「取材内容が流出した責任を取れ」と言っているにすぎない。笑止である。 もちろん、この一件では、私がすでに論評しているように、朝日新聞社側の落ち度、問題も多々あると思える。この点については、魚住氏も月刊現代も指摘している。ただ、腐っても日本を代表する巨大メディア(朝日新聞)が読者に訴えようとしたこと、すなわち放送法第三条に明らかにもとる政治介入の事実が魚住リポートで明るみに出たことはまず、間違いないところだ。 これが日本を代表する公党がすることであろうか? インタビュー内容が録音されているはずがない、万一、録音されていても、それらが公表されることはありえないと判断し、強弁を繰り返していたひとたちは、一体どう責任をとるのであろうか。大いに見ものである。 国民益から離れ、自民党と言う組織の保身しか眼中にない、まさに自民党の末期症状を公衆の面前に示した。 参考 放送法第三条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。 その2へ |