エントランスへはここをクリック   

日本人は「北朝鮮」を
どこまで笑えるのか?

〜渡辺淳一氏のコラムを読んで〜

青山貞一
 
掲載日2005.8.6


 自民党の安部、中川両衆議院議員によるNHK番組制作への政治介入の記事を月刊現代9月号を読んでいたら、同雑誌の後の方に「語り継ぐ戦争の記憶、21人の証言」と言う、大特集があった。

 その「語り継ぐ戦争の記憶、21人の証言」と言う大特集の執筆者は、思想信条でみれば左も右もいる。職業で見れば政治家もいれば野球監督もいる、と言うように実に多種多様で面白い。

 そのなかで、興味深い思うコラムがあった。

 渡辺淳一さんのコラムだ。

 表題は、「今の日本政府は金正日独裁政権と何が違うのか」である。

 日本のマスコミ、特にテレビ朝日など民報テレビは、これでもか、これでもかと連日連夜、北朝鮮問題を特集している。そのスタンス、アティチュードは、きまっている。金正日独裁政権の悪行の暴露と罵倒である。まぁ、それはそれでよいだろう。

 だが、渡辺氏がコラムのなかで言うように、「いま日本人は、『金正日の独裁政権はけしからん』と偉そうなこと」を言えるのであろうか。我々は極めて形式的な戦後補償などだけで、過去してきたことをチャラにできるのであろうか?

 つい半世紀前まで、日本は今の北朝鮮以上のことをしていなかったのであろうか、と思います。

 それは渡辺淳一さんの以下の一説を読めば明らかです。

 「加害者は加害の事実を急速に忘れますが、被害者は永遠に忘れないで、子々孫々にまで伝えてゆく。このあたりは論理ではなく、感情論で、だからそれに対するに、いくら理屈を言っても通じるものではない。やはり感情論で、被害者の立場になって、まず素直に謝るべきです。

 (日本の)植民地政策、強制連行、強制労働、そして数多くの命を奪った日本の軍事政権が、いかにアジア各国に傷跡を残したか、その事実を日本は次世代に伝える必要があります。※()は筆者が補足

 善良だった隣のおじさんやお兄さんが、ひとつ間違うと、あの戦争中のような鬼になる。そういう人間の怖さと弱さが日本人のなかにも潜んでいる。そのことを肝に銘じて、自分を見詰めて生きていくことが、大事だと思います。」

 まさにその通りだと思う。

 もちろん、今の北朝鮮、金正日体制が良いなどと思うひとはいない。しかし、問題はそれを声高に批判、罵倒するひとびとのなかに、先に渡辺さんが指摘する人間の怖さと弱さが潜んでいることを日々実感する。

 日本国、日本人、私たちの先祖が過去してきたことを、被害者だけでなく、加害者が子々孫々に語り継ぐ必要性が、今こそ大切であると思った。中国、韓国などが子々孫々まで語り継ぐだけでなく、日本でも子々孫々まで語り継がねばならないのである。

 なお、この「語り継ぐ戦争の記憶、21人の証言」には、中曽根大勲位氏のコラムから有馬稲子さんのコラムまで、非戦時世代の私にとって本当に学ぶことが多いと感じた。