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「調査報道」皆無、
大メディア・ホリエモン報道
の奇怪

日刊ゲンダイ

2006年2月2日

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検察の取り調べ中に容疑の中身が毎日、大新聞に報じられ大罪人にされているが、この国の大マスコミは今までなぜこの錬金術を調査報道しなかったのか

この国の大新聞テレビは記者クラブの発表や関係筋の意図的なリークばかりを頼りに記事をタレ流しているだけで客観的な調査報道は皆無という情けなさ

この国では大マスコミは権力とつるみ、おカミの意に反しないよう世論誘導し、小泉デタラメ政治には目をつむり、ホリエ個人を叩いているが、それでは真相は明らかにはされない
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 まあ、次から次へと出てくるものだ。連日、報じられているライブドア、ホリエモンの悪事である。ガサ入れ直後は財務担当役員の宮内亮治が堀江をかばい、逮捕容疑もマネーライフ買収の偽計、風説の流布だけだったが、その後、ロイヤル信販など他の企業買収でも投資事業組合をかまして、自社株を売り抜けていたことが発覚。それも海外口座を利用して、暴力団のマネロンさながらの手法を取っていたことも報じられた。

 買収企業からライブドア本体への預金付け替え、融資→増資のマッチポンプ、印鑑の乱用、身内がお手盛りで決めた株式交換比率……と、なんだか粉飾決算の手口の教科書みたいだ。

 ちょっと前までは「時代の寵児」だったのに、逮捕されると、極悪人のごとく悪事が出てくる。

 「だったら、もっと前に報じればいいし、そんなヤツをTVで使うなよ」と言いたくなるが、これにはカラクリがある。大マスコミがしたり顔で流しているライブドアの悪事は、ほとんどが検察情報だ。

「司法記者クラブに属している大マスコミにはさまざまな恩恵がある。次席検事が記者会見し、特捜部長、副部長が毎夕、懇談し、夜回り取材にも応じる。禁止されているヒラ検への夜回りも行われている。そんな中で出てきた話、におわされたネタに記者がパクッと飛びつき、右から左に書いているんです」(司法関係者)

 ライブドアが海外口座を使っていたとか、幹部がメールで「99.9%バレない」と書いていたとか、押収した資料を見なければ分からない話が一斉に出てくるのが、いい例だ。世論を味方につけたい検察がメディアを利用し、ネタを小出しにして、堀江叩きをあおっている。電撃逮捕から1週間余り。思惑がらみの検察と、権力にはすぐ尻尾を振る大マスコミによって、ホリエモンは極悪人にされてしまった。

検察の手のひらで踊らされている大メディア

 今さら、希代の錬金術師・堀江をかばう気はないが、これはちょっと怖い話だ。強大な権力を持つ検察がメディアを操り、世論誘導して、社会的制裁まで与える。鈴木宗男議員の贈収賄でも国策捜査、検察ファッショという言葉が使われ、日歯連事件で送検された村岡兼造元官房長官は裁判で、「検察はデタラメ」と主張していたが、ますますエスカレートという気がする。宗男事件でも次から次へと疑惑が報じられたが、起訴されたのは国会での偽証など4項目。もちろん、あおったマスコミは頬かむりだ。

 宗男事件で一緒に捕まった外務省の元主任分析官・佐藤優氏はこう言う。「特捜部は30人しかいない。だから、マスコミにネタをリークし、それを調べさせて、協力させる。調べた記者には新しいネタをリークする。こうやって大手の記者を競わせ、囲い込んでしまうんです。この関係は検察はウソをつかないことを前提に成り立っている。今度の事件でも会計資料が押収されている以上、記者は検証しようがないが、平気で書く。堀江氏を血祭りに上げるお祭り騒ぎにマスコミも加担しているのです」

 テレビには元特捜部長なんかが出ているが、テレビ局の気の使い方は大変らしい。検察にへつらい、癒着し、ネタを押しいただき、検察が思うような記事を書く。ワルが捕まるのは結構だが、検証能力がない大手マスコミの実態も背筋が寒くなってくる。