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ホリエモンが提起した「放送」と「通信」の融合
〜メディアとしてのアマチュア無線〜


青山貞一
 
掲載日2005.4.17
初出:ハムの目(巻頭言)
月刊ファイブナイン 2005年5月号

 ここ数ヶ月、ホリエモンことライブドアの堀江貴文社長のニッポン放送さらにはフジテレビの乗っ取り騒動によって、はからずも通信(インターネット)と放送(ラジオ・テレビなど)の違いや電波の公共性の議論が連日賑わった。電波法や放送法と言う一般の人々に聞き慣れない用語もマスメディアを飛び交った。

 この一年、ホリエモン氏は社会に向かって多くの問題提起をしている。が、その核心は、インターネットメディアを使った「放送」と「通信」の融合によるシナジー効果、すなわち相乗効果にあるようだ。 ホリエモン氏は、インターネット通信の爆発的な普及によって、このまま行くとテレビなど既存報道メディアは下火になるとか、新聞など既存ジャーナリズムそのもののは不要になるなど、過激な発言を繰り返し、既存メディアを痛烈に批判した。

 批判の矛先は多数あるがそのひとつのは、既存の放送メディアとジャーナリズムの一方通行性にあるようだ。テレビ、ラジオ、新聞に象徴される既存メディアは、ワンウエイすなわち視聴者や読者に一方的にニュースなどの情報を流がすが、受け手からの批判は編集権や放送権を盾に受けつけない、そんなところに批判の背景があるようだ。

 他方、インターネットの爆発的普及は双方向性にある。従来からある身近な通信、たとえば固定電話や携帯電話は一対一通信を基本としている。これに対しインターネットはメーリングリストやホームページ、ブログなどで分かるように一対一は当然だが、一対nさらにはn対nの通信も可能となる。しかも免許は不要、大した金もいらず多目的通信が楽しめる。ここに大きな特徴がある。

 確かに既存のテレビやラジオなど電波メディアや大新聞は、一方通行的で視聴者や読者は絶えず受け身とならざるを得ない。他方、インターネットは誰でもが情報の受け手としてだけでなく、送り手になれる。しかも市販のストリーミング技術を使えば動画配信によってミニテレビ局すら開設が可能である。

 閑話休題。

 アマチュア無線は、よくよく考えれば、放送と同じように限られた公共資源、電波を使いながらも既存のテレビやラジオのように一方通行ではなく、インターネット同様、一対一の双方向通信が可能。それだけでなく、一対nさらにはラウンドテーブルのようにn対n通信も可能だ。まさにアマチュア無線は電波を使いながらも放送にはない双方向性があり、国家免許制度はあるものの身近にかつ廉価に使えるきわめてすぐれたメディアである。

 仮に、テレビ局がデジタル化によって双方向化を取り入れるとなると日本全体で数兆円いや数10兆円規模の巨額な投資が必要となり、視聴者も大きな負担を強いられる。他方、インターネットでテレビやラジオのような生放送的通信が可能であるとは言っても、同時に見れる数は、せいぜい数百人規模であって、限界がある。

 私たちのアマチュア無線は、既存の放送メディアはもとより、インターネットメディアを含む最新のデジタル通信技術をもない、極めて費用対効果にすぐれた双方向通信であるという大きな特徴をもっている。日頃、私たちは、このような特徴や恩恵をあまり意識することもない。公共性が高い限られた電波資源を優先的に使っていると言う認識にも乏しいようだ。

 この際、ホリエモン氏の過激な問題提起をきっかけに、インターネットとアマチュア無線の融合など、私たちもメディアとしてのアマチュア無線の将来像を議論してみたらどうだろうか?