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環境省、「落札談合防止へ手引き書作成」は果たして有効か

池田こみち

掲載日:2006年4月11日


 日経朝刊(2006/4/11)によると、4月10日、環境省は、ゴミ焼却炉や汚水処理施設などの発注をめぐる談合防止のため、価格だけではなく、業者の技術力なども加味して落札業者を決める総合評価方式の採用を求める市町村向け手引書をまとめたとのこと。これは、去る3月20日に開催された第六回「廃棄物処理施設建設工事に係る入札・契約適正化検討会」においてその案が検討され、最終的に環境省として公表したもののようである。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=6927

 廃棄物処理施設などの主な請負業者は、国内では大手造船会社、鉄鋼メーカーなど20社程度と限定されているため、多くの自治体での入札ではこれまで繰り返し談合が行われ「高値安定」状態が続いていた。国際的にはゴミ処理容量1トン当たりの建設コストは2000万円程度であるのに対し、国内では、ほぼ5000万円が相場とされ、長年にわたり血税が焼却炉に注ぎ込まれ続けてきた国民の側からみると、今更、自治体に国が手引書を配布するといったような生ぬるい対応でどうにかなるとは思えないのだが。

 このほど作成した手引きでは、ごみ焼却炉については、建設費に加え、施設の耐用年数や維持管理費用、ごみ焼却に伴う発電量などを評価対象として加え、既に稼働中の類似施設の稼働状況も参考にするという。しかし、こうしたことは形式的には当然各自治体でも、チェックしてきたはずである。多くの場合、焼却炉などの高額入札に際しては、いきなり入札ではなく、事前に提案書などで書類審査を行い、過去の実績やメンテナンスの容易さ、発電効率などが検討されているケースが多い。その上で、数社に絞り込み入札となるのが一般的ではないだろうか。

 マニュアルの内容を詳細に確認していないのでどこまで子細に談合防止に役立つ手順や内容が記載されているのかは不明だが、あまり期待できないと思うのは筆者だけではないはずである。どんなに細かく技術的な評価を行っても、所詮、自治体職員がメーカー側にはかなうわけがない。談合防止に肝心なことは自治体職員へのマニュアル提供ではなく、業者が談合できないシステムを構築することであり、厳しい罰則規定を供えてた法律の整備である。台湾政府などが既に導入している国際一般競争入札方式の導入も有効な方法だろう。

 環境省はマニュアル作成と同時に、2007年度以降、大都市の契約業務の専門職員やOBを総合評価に慣れていない市町村に派遣し、支援するとしている他、入札額や落札額などの情報を集めてデータベース化し市町村間の共有を図るとしている。落札価格のデータベース化は有効かも知れないが、それよりも重要なのは、故障・トラブル・事故などのデータベース化ではないだろうか。メーカー側とともに、導入した自治体、一部事務組合などプラントオーナー側にも徹底した情報公開と透明性が求められる。プラント側に煙たがられるような第三者機関による定期的な審査検査体制の構築や国際的なモニタリングシステムの導入こそ、メーカー、プラントオーナー(自治体や一部事務組合、第三セクターなどの事業者)、専門家、そして地域住民の間の緊張関係を維持する上で必要なことではないかと思う。

 市町村が求めているのは、必ずしも大都市による契約業務への支援や落札価格に関する市町村間の情報の共有化ではないはずである。どうすれば、高額の焼却炉を導入しなくても地域の廃棄物処理が可能となるのか、多くの代替案を政策レベルで検討する上でのサポートこそが今求められているはずである。大都市の職員やOBの支援などきっと「小さな親切大きなお世話」に違いない。そして、自治体職員より以上に、市長や町長・村長といった首長がどこまで廃棄物問題を理解し、プラント依存でなく政策として議論に耐えられるかが問われている。