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「華氏911」のムーア監督ほえる
ブッシュを追い出す
米大統領選 ケリー氏支援の政治宣伝?

 
 東京新聞 2004年7月8日(木)

掲載日:2004.7.8
 
「マイケル・ムーアはデブで間抜けな白人の大男」と題する本の表紙


「華氏911」のムーア監督ほえる
ブッシュを追い出す  米大統領選 ケリー氏支援の政治宣伝?


 
ブッシュ米政権を痛烈に批判したマイケル・ムーア監督(五〇)の最新作「華氏911」が、大ヒットを記録している。六日、ニューヨークで本紙など海外メディアと記者会見した同監督は、今秋の米大統領選で「ブッシュをホワイトハウスから追い出す」と気炎を上げた。(ニューヨーク・寺本政司)

 「華氏911」は六月二十五日、米国とカナダで一斉に封切られた。公開わずか三日間で、米ドキュメンタリー作品としての過去最高の興行収入を記録。先週から上映館数が倍の千七百二十五館に増え、同収入は六千万ドル(約六十五億四千万円)を突破した。ノースカロライナ州など米軍施設がある地方都市でも満員の盛況という。

 映画の反響について「これまで投票に行かなかった多くの米国人が映画を見て、今回は投票しようという気になっている。非常にハッピーだ。彼らの多くは『なぜ、今までこんな事実を知らされなかったのか』と疑問を感じている」と述べ、返す刀で「米メディアはブッシュのチアリーダーとなり、真実を伝えるという自らの仕事を放棄した。イラクで既に八百六十人の若い兵士が命を落としている。メディアが役割を果たしていたら、こんなことにならなかった」とメディアの姿勢を批判した。

 映画では、米軍の爆撃で血みどろになったイラクの子供や、イスラム過激派に引きずり回される米国人遺体の映像。その合問にブッシュ政権首脳の笑顔が入り「戦争で多くの犠牲者が出る一方、彼らは石油利権の確保に満足しています」とナレーショシが流れる。配給予定だったウォルト・ディズニーは「政治色が強すぎる」と配給を拒否したほどだ。

 ブッシュ支持の保守派は、政治宣伝と批判している。ムーア氏はこれに対しこう反論した。 「この映画の使命は、ブッシュをホワイトハウスから追い出すことだ。貧困層の若者たちが国のために殺されていく姿を見るのはもううんざりだ。適切な人物が大統領選で勝利すれば、平和や経済的な公平性が実現され、テロも消滅するだろう。映画の中で私の意見や理論を盛り込んでいるのは確かだが、指摘した出来事はすべて事実だ」

 今年の仏カンヌ映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した同映画だけに、ブッシュ批判は映画をヒットさせるための話題づくりではないのかとの指摘がある。 「昨年の米アカデミー賞授賞式のスピーチで、私は(『ブッシュよ。恥を知れ』などの)政権批判をした。公の場であのような発言はリスクを負うことだったが、米国人はいつか真実に気づくと信じていた」と説明した。

 ならば、民主党のケリー侯補を勝たせるためとの見方にも「ケリーとは会ったこともないし、話したこともない。大体、民主党のためにこの映画を作ったわけではない」と否定した。

宣伝スタッフにゴア氏の報道官

 しかし、映画の宣伝スタッフには、二〇〇〇年にブッシュ氏と大統領選を戦ったゴア前副大統領の報道官の姿がある。ムーア氏は、ケリー候補がエドワーズ氏を副大統領候補に選んだことを「賢明な選択」と評価。前回選挙で応援した第三党のネーダー候補については、リベラル票が割れることから「今回は投票しないよう呼びかける」と話す。

 その上で「外国の人に知ってもらいたいのは、米国人全員がブッシュ支持ではないことだ。米有権者の半分が投票するとしてブッシユ支持は40%で、残りの60%は反ブッシュのはずだ。

 前回はフロリダ州(の集計作業)の票がブッシュに盗まれた。今回は不正がないよう、厳しく監視しなければならない」と強調した。


 以下は、東京新聞記者によるマイケルムーアインタビューについての記事。

東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20040707/eve_____kok_____000.shtml

イラク日本人人質事件『小泉首相がもたらした恥』
『華氏911』のマイケル・ムーア監督会見

 【ニューヨーク=寺本政司】ブッシュ政権やイラク戦争を痛烈に批判した米ドキュメンタリー映画「華氏911」のマイケル・ムーア監督は六日、ニューヨーク市内で、本紙など海外メディアと記者会見した。同監督は「(イラクでの)日本人人質事件は小泉(純一郎)首相が日本にもたらした恥だ」と述べ、米国のイラク政策に追随した日本政府を非難した。

 フリーライターの今井紀明さんら日本人三人が四月、イラクの武装グループに拉致=その後解放=され、銃を突きつけられる生々しい映像も映画に使用し、戦争の泥沼化を表現する。本紙がこの場面について質問した。

 ムーア監督は「日本が受けた恥について触れたものだ」と指摘。その理由として「日本は広島、長崎に原爆を投下されて以来、戦後五十年以上にわたってあらゆる武力を放棄し、平和を提唱してきた国だったのに、日本人がああいう形で(戦争に)巻き込まれたからだ」と説明した。

 自衛隊派遣など米国に追随する日本政府の姿勢が、「日本にとっては本当に悲しい日」を招いたと批判した。

 また「日本人の多数がイラク戦争に反対しているのであれば」とした上で、「自由で民主的な社会に必要なことを次の選挙でやらなければいけない」と述べ、参議院選挙などで“ノー”の意思表示をするよう求めた。

 「華氏911」は先月二十五日に米国とカナダで一斉公開され、興行収入は先週末で六千万ドル(約六十五億四千万円)と米ドキュメンタリーの過去最高記録を更新中。今年五月の仏カンヌ映画祭で最高賞のパル厶ドール賞を受賞した。日本公開は八月下旬の予定。