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なんにも考えていない小泉のノー天気

田中康夫

初出:奇っ怪ニッポン
2005年5月19日 掲載
掲載日:2005.5.12


 「保守」を自任する面々は何故、「臣・小泉純一郎」こそは国賊なるぞ、と糾弾しないのでしょう?

 巨額の国費を用いた外遊先のモスクワで繰り広げられし対ドイツ戦勝60周年記念式典とは、早い話が、ウラジミール・プーチン大統領の強権的中央集権体制を改めて信任する一大イヴェントだったのですから。
“後出しジャンケン”をしたのが、往時のソビエト社会主義共和国連邦です。1945年8月、敗戦の様相を呈していた日本と旧満州に攻め入り、南樺太を始めとして併合した後、フィンランドへも侵略を行い、バルト3国を併合したのです。

 であればこそ、リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国の中で今回の式典に出席したのは、親ロシア政権のエストニアのみだったのです。戦争には必然的に勝ち負けが生じます。が、であるにせよ、否、であればこそ、戦勝国が絶対的に善で、戦敗国は絶対的に悪、との二元論に立脚する限り、不毛な遺恨が燻(くすぶ)り続けるのみです。

 虎視眈々と自身の失脚を守旧派が画策するのを知ってか知らずしてか、今後も中華人民共和国の胡錦涛国家主席が日本と台湾の存在を「脅威」として有効活用し、自らの政権基盤を維持・強化していくであろうように、今回のイヴェントを経てプーチンは、北方領土問題は解決済み、と巧言したのです。
 であればこそ、ジョージ・W・ブッシュちゃんは、舎弟の純ちゃんに助け船を出したのです。即ち、ヤルタ会談の全てを認めるべき内容には非ず、との発言をです。

 45年2月に米英ソ首脳が集ったヤルタ会談に於ける戦後統治の骨子を固定化しようとするプーチンとは対照的です。歴史を紐解く迄もなく、樺太南部、千島列島の権益はソビエトに帰属すると定めたのがヤルタ会談だからです。

 にも拘らず、「親ならぬオヤ?ブッシュの心、子ならぬ狐?小泉知らず」と申し上げるべきか、我らが亡国指導者・純ちゃんは、「二度と戦争は起こしてはならない、と皆が誓い合った意義有る式典だったねぇ」などと“明後日な発言”に自ら酔いしれていたのです。

 呵々。越権的にチェチェンを始めとする内紛を誘発させている指導者が主人公を演じた式典が、恒久平和を確認する時空たり得る筈もありません。それが証拠に、チェチェンの反ロシア勢力は毎年、戦勝記念日に併せてテロを起こし続けているではありませんか。何故、日本国内の保守派は、屈辱改め恥辱的指導者だと糾弾しないのでしょう? 恐らくは今後も、北方列島問題は現状維持の儘(まま)です。而(しか)して、対中国、対韓国は今後も、混迷の極みでありましょう。何れも国益を損ねる迷走です。政治生命を賭けると純ちゃんが高言する郵政民営化で全国津々浦々を更に過疎化させ、同じく靖国参拝で対中・韓関係を更に悪化させる。還暦を過ぎて猶(なお)、朝立ちで目覚めちゃうんだ、と公言する純ちゃんには、性事生命の四文字がお似合いなのです。