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橋梁談合

 その2
 公団OBの優雅な天下り

横田一
 
初出:日刊ゲンダイ
掲載日2005.8.24

 道路公団民営化が骨抜き案で決着してから4ヶ月後の04年4月2日。霞ヶ関のビルに、談合の仕切り屋の神田創造・横河ブリッジ顧問(当時)が現れた。このビルの一室では、公団で幹部職を経験した技術系OBだけが参加できる「金曜会」(会員数は約140名)が開かれていたのだ。

 元公団理事の神田容疑者(7月12日に独禁法違反容疑で逮捕)も会員の一人。公団からは現職の高速道路部長が参加し、配布された「平成16年度の高速道路建設事業の概要」について説明。骨抜き民営化案と一緒に導入された「新直轄方式」(高速道路を税金で建設)でも、公団が国交省から建設を受託するとの“朗報”が伝えられた。公団の仕事量が確保され、OBと現職との太いパイプが維持できることが明らかになった瞬間だった。

 OBを受入れる側の橋梁受注業者は、こう話す。

 「道路公団や国交省の役人が建設会社に天下ると、役員クラスで約2000万円、管理職でも約1500万円の高給を手にすることができる。県庁土木部出身だと1000万円前後になりますが、OBは先輩の立場を活かして、発注担当者から事業計画や予定価格などを聞き出してくるのです。これを“ボーリング”と我々は呼んでいますが、現職とのパイプ役をすることで、高給を手にできる特権階級なのです」。

 たしかに「金曜会」の名簿を見開くと、公団OBの優雅な天下り人生が透けてみえてくる。天下り先は「五洋建設(株)」「(株)フジタ」「大成建設」「清水建設」「鴻池組」などの大手ゼネコンが勢ぞろいし、その役職も社長・副社長・常務・顧問などの役員ポストが目白押しだ。ちなみに横河ブリッジに天下った神田顧問の場合、本社の4階に個室が用意され、秘書付きという社長並の待遇だった。

 先の業者はこう続ける。「叩き上げ社員とOBとでは人事の系列が全く違います。部外者が見れば、社内の出世競争に参加していないOBがいきなり役員になるのは不可解に思うかも知れないが、これが建設業界の慣例なのです。簡単にいえば、OBを受け入れることで仕事が回ってくる。一緒に“お土産”の工事がついてくることも珍しくありません」

 天下り効果は数字にも明確に現れている。OBを受け入れた業者の平均受注額(00〜04年)は約205億円であるのに対し、OBを受け入れていない業者の平均は約51億円にすぎない。「天下りを禁止しない限り、OBのいる業者が優遇される官製談合は続く」と建設業者が強調するのはこのためだ。

 しかし道路族と手打ちをした小泉首相は、従来通りの道路建設が可能なインチキ民営化で妥協し、天下りも野放しにもした。公団OBが優雅な天下り人生を送れるのは、彼らの利権の源(道路建設と天下り)を絶たなかった小泉政権の怠慢の産物なのだ。