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豊洲の土壌汚染の多岐に渡る問題

鷹取 敦

掲載日:2007年4月17日


 これまでに報道されているように、豊洲の新市場用地である東京ガス跡地からは高濃度の汚染が検出されていた。当初、汚染を理由に東京都への売却を拒否していた東京ガスは、3月末までに汚染土壌の処理を「完了」したという。

 東京都がインターネットで公開している豊洲新市場に関するウェブサイトでは、この汚染土壌の実態についても、処理方法についても、汚染土壌の行き先についてまともな説明がない。汚染されている土壌は「処理」し、新たな土壌を運び込むことだけが明らかにされている。

 本日発売のサンデー毎日(4/29号)の記事で、豊洲「新市場」用地の土壌汚染について新たな問題が指摘されている。この記事では、豊洲に運び込まれた土壌がまともに汚染の検査をされていないこと等について指摘したものである。詳細は掲載誌を読んでいただくとして、筆者は記者より取材を受けて「検査」の問題点等について述べたので問題点の概要を紹介しておきたい。
  1. 豊洲に持ち込まれた土壌の多くは建設発生土、道路工事によって発生した土などで、その多くについて4割が汚染の検査が行われていないとの証言がある。検査を行ったと主張している東京都の説明でも2000立方メートルに1検体という非常に少ないサンプリング検査であり代表性がない。

  2. 豊洲にあった汚染土壌の一部(汚染濃度が処分場の受け入れ基準以下とされているもの。ただし受け入れ基準は環境基準より10倍緩い)は汚染処理が行われず、そのまま中央防波堤に持ち込まれている。

  3. 豊洲の配水管から強アルカリの水が排出されているが、衆院環境委員会での議員の指摘に対して、敷地には施設が存在していないので法令上の問題はない(水質汚濁防止法の対象ではない)と答弁し、東京都の各部署も自分の問題ではないと責任を回避している。

  4. 土壌汚染対策法は2003年の施行以降のみについて適用とされているため、豊洲の汚染には適用されない。法律を定めた時点で国は豊洲の汚染問題を把握しており、意図的に例外規定を入れたのではと指摘されている。
以上のように、これまでに報じられた豊洲の土壌汚染の存在自体以外にも、多くの問題があることが分かる。

 筆者はこれらの問題のうち、1、2を中心にリスクの問題、検査方法の問題等を中心について取材に応じてコメントした。

 また、3.については別のメディアから取材を受けて関連する問題を指摘した。用地内には「たまり水」が存在していたが、その水は雨水であるか地下水であるかにかかわらず、当然、汚染土壌からの汚染の影響を受けていると考えるべきである。しかし3.で国が答弁しているように、法律の対象でないことから、東京都は汚染の調査もせず、作業員に汚染の存在も知らせずに、たまり水の埋め立て作業が行われ、汚染されている可能性が極めて高い水が東京湾に放流されたと聞いた。

 石原知事が言うように単に再調査の必要性について検討すればよい、という単純な問題ではない。また、法律の問題点の多くの問題点がここでも明らかとなっているのであるから、土壌汚染対策法を所管する環境省も他人事のような他人事であってはならない。