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依然として埋め立てられているPC
〜PCリサイクルの問題点〜


鷹取敦

Feb. 2010
独立系メディア「今日のコラム」


■PCリサイクル制度の概要

 いわゆるPCリサイクル法(資源有効利用促進法)が2001年に施行されてから今度の4月で9年になる。この間、自宅のパソコンを1回、2回、買い換えその際、この制度によりリサイクルに出した方も少なくないだろう。

 2003年10月1日以前に購入した不要な家庭用パソコンを「処分」する時には、ユーザーは「回収再資源料金」をメーカーに支払い、その後送付される「エコゆうパック」伝票を用いて郵便局に集荷してもらう方式である。2003年10月1日以降のパソコンは購入時に回収・資源化のための費用を支払っており「PCリサイクルマーク」が付いているので、「処分」時の費用負担は不要である。

 メーカーは回収された機器を部品単位に分解し、再利用できるものは再利用、できないものは粉砕して金属類、プラスチック類、ガラスなどを取り出して資源化する。なお、メーカーが撤退、倒産している場合、自作PC等は「一般社団法人 パソコン3R推進協会」が有償で引き取ってリサイクルを行う。

 以上が一般に理解されているPCリサイクル法の概要であろう。

 例えば、東京都環境局のウェブサイトには、
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/kouhou/madoguti/
seisou_top.htm#02
 資源有効利用促進法に基づき、平成15年10月1日からパソコンメーカーによる家庭系使用済みパソコンの回収・再資源化が開始されています。パソコンを廃棄する場合は、パソコンメーカー各社の受付窓口(各社ホームページや製品に同梱されるマニュアル・チラシ参照)に電話又はインターネットにて回収依頼をします。その後メーカーから伝票を受け取り、郵便局(簡易郵便局を除く指定回収場所)に直接持ち込むか、郵パックにて送ります。(郵パックの場合、郵便局が自宅まで荷物を取りにきてくれます。)

 品川区のウェブサイトには、
http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/hp/menu000005500/
hpg000005439.htm

 パソコン(モニター含む)は、メーカーでリサイクルするため、粗大ごみ
で収集しません。
お問い合わせ先
  ◆各メーカー
   メーカーが不明な場合は・・
  ◆一般社団法人パソコン3R推進協会
   電話:03-5282-7685
   http://www.pc3r.jp/
とある。


■PCリサイクル制度の大きな抜け穴

 しかしながらこの制度には意外と知られていない大きな抜け穴がある。
 例えば東京に住んでいた人が別の地域に引っ越し、引っ越し先でPCを「処分」しようとした時の自治体の対応の違いに戸惑う場合がある。PCを「粗大ごみ」「もやせないごみ」として無償で引き取る自治体が存在するからである。

 例えば、鹿児島市のウェブサイトには
http://www.city.kagoshima.lg.jp/_1010/shimin/4kankyoricicle/
4-1gomirecicle/4-1-1kateigomi/0002359.html

PCリサイクルマークが付いていないパソコン
 デスクトップ型パソコンは粗大ごみとして、ノートブック型パソコンはもやせないごみとして収集します。

※費用は、PCリサイクルマークが付いたパソコンは無料です。
 それ以前に販売されたものをリサイクルする場合は、排出時に消費者が負担することになります。料金は、デスクトップ型パソコン(本体)とノートブック型パソコンが3,000円、ディスプレイが4,000円になります。
とある。両方を合わせると「粗大ごみ」「もやせないごみ」として収集したPCでも費用を住民が負担しリサイクルされるとも読める。しかし鹿児島市リサイクル推進課(099-216-1290)に問い合わせたところ、実際はごみとして市が無償で収集し埋め立てるということである。

 これはメーカーによるPCの回収はあくまでも「自主回収」であること、PCをごみとして回収するかどうかは最終的には自治体の判断に委ねられていることにその原因がある。

 パソコン3R推進協議会が約550市に対して行ったアンケートによると、
http://www.pc3r.jp/home/faq06.html#q6-1
  1. 全てのパソコンに関する回収ルートが確保されていないとして引き続きごみ収集を継続している市町村
    160自治体

  2. 当協会加盟メーカーのパソコンについては回収ルートが確保されたので収集停止とするが、その他についてはごみ収集または別の回収ルートを指定している市町村
    208自治体

  3. 当協会への加盟の有無を問わずパソコンについては収集停止としている市町村
    180自治体
とある。アンケート実施時点において、相変わらずPCをごみ収集している自治体が約3割、メーカーが3R協会に加盟していないPC(撤退・倒産したメーカー、自作PC等)を含めると三分の二に上る。

 メーカーもしくは3R推進協議会に連絡し、必要な場合には費用を振り込み、郵便局が自宅まで回収に来るのだから、「回収ルートが確保されていない」地域など事実上存在しないはずである。それにも関わらず相変わらずメーカーの自主回収と位置づけ、自治体独自の判断によってリサイクルするか埋め立てるか決めることが出来る制度のまま放置されているのは、当該自治体の責任は当然のことだが、そもそも国の責任であろう。


■リサイクル対象電気製品を広げ分かりやすい制度に改善すべき

 なお、リサイクルの対象となっている機器が狭く限定されていることにも問題がある。現状ではデスクトップ、ノート、一体型PCの本体と、CRT、液晶ディスプレイのみである。パソコンと一緒に使われるプリンタ、スキャナや、ワープロ、ゲーム機等は未だに対象となっていない。家電リサイクル法の対象は、洗濯機、冷蔵・冷凍庫、エアコン、テレビ、乾燥機のみである。PC系と他の家電で制度が分かれているのも分かりにくい。

 以前に紹介したゼロウェイストに取り組んでいるカナダ・ノバスコシア州ではe−ウェイストリサイクルの開始時期は日本よりも遅かったものの、対象となる機器を積極的に広げている。
http://www.gov.ns.ca/nse/waste/ewaste.asp
ノート/デスクトップパソコン、周辺機器、プリンタ、モニタ、テレビ、スキャナ、電話、ファックス、携帯電話、無線機器、音響映像の再生・録画録音機器等(ビデオ、DVDレコーダー、プレーヤーなど)

 費用負担は新品については日本と同様、製品価格に上乗せされ、法律施行以前の製品についてはメーカーが費用負担することとされている。回収は容器等を回収している地域の拠点、環境デポで行われている。ユーザーがリサイクルに出す時点で費用負担が発生しないため、不法投棄も起こりにくい仕組みとなっている。


 日本でも、リサイクルの対象とすべきかどうかという基本的な部分を市町村任せにすることなく、分かりやすく簡潔な制度とし、対象製品を計画的・積極的に拡げていく必要がある。