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●産廃処分場計画とその経緯 その夕張市で安定型最終処分場の設置をめぐり紛争が起きている。 民間事業者が県に設置許可を申請している安定型最終処分場は、何ら遮水シートも水処理施設もない構造の処分場である。いわば素掘りの土地に5品目に限定し、産業廃棄物の処分を認めるというものだ。 まずは以下の北海道新聞をご覧いただきたい。
道は「安定型の産廃処理施設は、全国で法定品目以外の産廃が投棄されるなど環境汚染が問題化したケースはあるが、道内の約160の同様施設では問題は発生していないという」と言うが、全国規模で環境訴訟、廃棄物施設関連訴訟を担当しているゴミ弁連によれば、安定型の最終処分場の大部分は環境汚染の元凶であり、安定型最終処分場に対し起こされた裁判の圧倒的大部分は、地域住民側の勝訴となっている。 廃棄物処理法では、(1)安定型最終処分場、(2)管理型最終処分場、(3)遮断型最終処分場の3種類がある。(1)から(2)、(2)から(3)に向かうに従ってそれなりに環境保全の配慮がなされている。
(1)の安定型最終処分場は、何ら遮水構造となっておらず、同時に水処理施設もついていない、環境保全面から見て極めてずさんな構造であることが以前から指摘されている。 にもかかわらず、環境省や都道府県は、安定型5品目「だけ」を処分するのだから問題ないの一点張りである。これはおよそ現場、実態を知らない官僚、役人の言い草である。 多くの現場では安定型5品目どころか、夜陰に乗じてありとあらゆる廃棄物が捨てられている。しかも、許可主体の都道府県は、めったに立ち入り検査をしないし、いわゆる行政指導である勧告、公表、命令も出さないから、業者はやりたい放題となる。
こんなものが今時、法的に設置許可されること自体大問題である。 事実、ゴミ弁連が過去10年以上、日本各地でこの産廃の安定型最終処分場相手に訴訟を行い、上記のように圧倒的多くの訴訟で勝訴しているのは、安定型最終処分場が、構造面そして運用面で、いかにいい加減なものであるかを示している。 構造がいい加減であることに加え、処分される廃棄物は法に定められた安定5品目に限定されているにも関わらず、多くの場合、安定型5品目以外のさまざまな廃棄物、それも有害な廃棄物が処分されている。 私が過去調査に関わった多くの場合でも、焼却灰や医療廃棄物などもそのまま廃棄されていた。有機物を含む一般廃棄物が廃棄されている場合もある。その結果、安定型最終処分場から浸出する排水が、川などの表流水や地下水を汚染する。 また仮に操業差し止め訴訟などで地域住民側が勝訴しても、違法に処分された廃棄物を掘削し、汚染を除去する、すなわち原状回復することは事実上困難となるケースが多い。仮に裁判に勝ってもなかなか原状回復が困難となるなど、この安定型最終処分場には問題が山積している。 そもそも、いまどきメロン栽培温室用の使用済みのビニールシートを安定型最終処分場に処分するなどあり得ないだろう。環境に配慮し持続可能なメロン栽培をするためには、生産者はビニールシートのリユース、リサイクル体制をあらかじめ用意するのが当然だ。 以下は地元市民がWebに書いた概要である。 夕張のお山に、産業廃棄物処分場を誘致する計画があります。夕張再生市民会議から送られて参りました情報です、札幌圏の住民のみなさま、また、おいしい夕張メロンや、下流水源利用地域の農産物を購入なさってくださるお客様にとっても農家にとっても観光にとっても、影響のある産業廃棄物処分場の立地ではないかと、憂慮しております。 まさにその通りである! 全国的に有名な夕張メロンを栽培し、販売するのはよいとして、その過程で産廃を自然豊かな夕張市紅葉山地区に埋め立てるなど、言語道断である。 安定型産廃最終処分場の計画地 出典:グーグルマップ その後、市民団体は反対署名を展開し、市8112筆の反対署名をとり、北海道知事に提出した。
これを受け北海道庁で「廃棄物処理施設専門委員会」が開かれ、現地調査も検討するとした。
さらに夕張市の市民団体「夕張メロンと夕張川の水を守る市民ネットワーク」(清野宣昭会長)は処分場の予定地周辺で絶滅危惧(きぐ)種のエゾホトケドジョウやニホンザリガニの生息を確認 したと発表している。
今回のゴミ弁連シンポジウムの翌日、産廃処分場の計画地を視察したが、現地は素晴らしい自然環境と生態系を有する地域であり、レッドデータブックに掲載されている多くの絶滅危惧種が生息していることが分かった。 夕張市紅葉山地区の現地視察 2010年6月21日 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 また現地は地形、地質、土質的に見て極めて脆弱な湿地であり、安定型最終処分場に降り注ぐ降雨が棚田的構造をもつ処分場の上から下に流れ、夕張川の上流に流れ込むことも分かった。 2010年5月15日 読売新聞 にもかかわらず、北海道の「廃棄物処理施設専門委員会」は、以下の新聞記事にあるように、建設計画が「生活環境保全に配慮されている」との意見書を大筋でまとめた。護岸設置などの付帯意見を付けたうえで6月中にも高橋はるみ知事に提出し、その後30日以内に建設が許可される見通しとなった。
つづく |