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説明責任を果たさぬ
「新党日本」(2)


青山貞一
 
掲載日:2007.6.5


◆青山貞一説明責任を果たさぬ「新党日本」(3)
◆青山貞一:説明責任を果たさぬ「新党日本」(2)
◆青山貞一:説明責任を果たさぬ「新党日本」(1)

 新党日本の荒井広幸幹事長が昨年秋の首班指名で安倍総理に一票入れたこと、さらに福島県知事選では自公が押す候補者を新党日本が推薦したことに対し、田中康夫新党日本代表が何ら荒井幹事長の処分が行えなかったことを<その1>に書いた。

 その背景には、新党日本が何ら理念、政策など、政党として最も重要なものを基軸に設立されたわけでなく、ことのはじめから<選挙互助会>としてできたものであることがある。

 当初参加した議員の半分は、国民新党に移り、兄弟政党の国民新党からは厳しい離縁状を突きつけられた。

 にもかかわらず、田中代表が新党日本にいすわるのは、新党日本が政党要件をまがりなりに満たし、前号で示したようにかなりの政党交付金があること、そしてそれらをベースにして田中康夫氏自身が国政選挙に打って出たいからに他ならない。

 新党日本が、まったく政党としての体裁をなしていなくとも、いかなる非難、指弾を受けても、ただ黙っているのは、そのようないわば私的な理由があるからだと思える。

 しかし、少なくとも公党であり、国民の税金から政党交付金(助成金)を受けている以上、田中代表には荒井議員がしてきたことへの説明を国民にする義務がある。

 それをしないまま、参議院議員選挙に打って出て、「比例区では新党日本へ」などと国民に呼びかけるのは、「詐欺行為」であると言われても仕方ないだろう。

 ......

 田中康夫氏は、日刊ゲンダイのコラム「奇っ怪ニッポン」で、ことあるたびに安倍首相を激しく批判、非難してきた。

 にもかかわらず新党日本に所属する2人の国会議員のひとりである荒井広幸参議院議員、新党日本幹事長が安倍総理の親衛隊的な対応をしてきたのには、以下の朝日新聞記事にあるように荒井氏と安倍氏との間に、ただならぬ関係があるからである。

 

『ニッポン人脈記』「安倍政権の空気(10)

荒井広幸(あらいひろゆき)(48)は、福島県議から総選挙に出て落選したとき、安倍の父で政界の実力者だった晋太郎(しんたろう)から「おれも落選した」と励まされた。93年、安倍とともに初当選。2人で食事に行き、「桃園の誓い」を結ぶ。 

 荒井「あなたを総理にしたい。だから努力して下さい」


 安倍「私も努力します」

 以来、「親分」「荒井ちゃん」の仲に。下野した自民党に官僚は手のひらを返すように冷淡になった。大物議員への法案説明も課長クラス。「これは覚えておかなくちゃね」。2人で胸に刻んだ。

 安倍が腰を痛めてひそかに入院した時、荒井だけは何度も見舞いに行った。安部が隣室の少女の死に心を痛めていた様子が忘れられない。

 荒井の父は電報配達、母は電話交換手をしていた。母は泊まりの番があり、「ぼくはカギっ子のはしり」。小泉の郵政改革には早くから反対を唱えた。「郵便局は官ではなく公。公だから、国民負担を抑えながら必要なサービスを提供できる」

 荒井にとって、郵便は「草の根」の人々を守る制度である。衆院で落選、参院議員になっていた郵政国会で造反し、自民党を離党した。いま新党日本の幹事長。しかし、昨秋の首相指名では安倍に一票を入れた。

 9日、衛藤の復党が決まった。昨年12月にはいち早く古屋、古川らが復党している。いずれも安倍の強い意向からだ。荒井はいまの安倍をこう見る。

 「小泉は切り捨てた。だが、切り捨ては、われわれ『草の根』の心ではない。われわれは排除ではなく、包容なんです」

 反郵政組の復党は、安倍が「育ての親」小泉の影をふっきろうとする意思の表れかもしれない。

『朝日新聞夕刊』2007316


 荒井氏と安倍氏の個人的関係は分かるとしても、少なくとも公党の一員である荒井議員の対応はきわめて理解できないものがあり、それを放置する田中代表がこの問題で押し黙っていることはきわめて不誠実である。

 朝日新聞の記事の最後の部分を読むと、荒井議員は機あらば自民党への復党に期待を寄せ、安倍総理が小泉の影から脱却すれば、荒井議員を自民党に復党させることもいとわないとも見える。

 田中康夫氏にすれば、選挙互助会、新党日本を利用して国会議員となれば、あとは荒井議員が自民党に復党しても構わないのではないかとさえ思える。

つづく