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説明責任を果たさぬ
「新党日本」
(3)

〜案の定、分裂へ〜


青山貞一

掲載月日:2007年7月5日


 筆者は、昨年秋、荒井議員が首班指名で安倍総理に投票したときから、新党日本について、以下の論考を書くとともに、昨年秋から再三にわたり田中康夫代表に説明責任を果たすよう、申し入れしていた。
 
◆青山貞一説明責任を果たさぬ「新党日本」(3)
◆青山貞一:説明責任を果たさぬ「新党日本」(2)
◆青山貞一:説明責任を果たさぬ「新党日本」(1)

 だが、田中代表はまったく説明責任を果たさぬばかりか、いわばとぼけて、自ら参議院選挙に出馬すると宣言し、さらに同選挙にジャーナリストの有田氏を同党候補とすると発表した。

 結局、案の定と言うべきだろう。

 本日(2007年7月5日)、ぐちゃぐちゃとなっている党内の矛盾が明るみに出るだけでなく、新党日本に残された2人の国会議員、すなわち滝衆議院、荒井参議院は離党を宣言した。

新党日本が事実上分裂・荒井氏ら「解党」要求
日経新聞

 新党日本の荒井広幸幹事長と滝実総務会長は5日午前の役員会で、田中康夫代表に「解党」を要求した。田中氏は拒否、同党は事実上の分裂状態となった。同党関係者が明らかにした。

 同日中にも荒井、滝両氏が記者会見する。選挙後の対応を巡る意見対立などが背景にあるとみられる。同党は田中氏ら2人を参院選に擁立する方針。

 同党は2005年9月、田中氏と郵政民営化法案に反対し自民党を離党した議員らで結成した。現在、国会議員は衆院の滝氏と参院の荒井氏の2人。(14:02)

新党日本 荒井・滝両氏離党へ
2007年7月5日 NHK

荒井、滝両氏は、5日午後、記者会見し、「田中代表は、参議院選挙の選挙公約に、党内でまったく議論をしていない憲法9条に関する政策を盛り込んだ。田中氏の党運営は不誠実で、新党日本は選挙で国民の審判を受けるに値しない」と田中氏の党運営を批判し、党の解党を求めました。

 これを受けて、田中氏は記者会見し、「解党は有権者に対する冒とくであり、受け入れない。参議院選挙は新党日本で戦う」と述べ、解党を受け入れない考えを示し、両氏は新党日本を離党することになりました。

 荒井氏は、去年、総理大臣の指名選挙で安倍総理大臣に投票していますが、「今のところ、どの党派にも所属することは考えていない」と述べています。また、滝氏も、当面、無所属議員で活動するとしています。

 新党日本は、おととし8月、郵政民営化関連法案に反対した自民党の国会議員らが結成した政党で、荒井、滝両氏が離党することで、党所属の国会議員はいなくなります。

7月5日 18時22分

新党日本が事実上分裂 荒井氏ら解党要求
2007年7月5日 中日新聞

 新党日本の幹事長荒井広幸参院議員と総務会長の滝実衆院議員は、参院選の公約をめぐり田中康夫代表と対立、五日の役員会で「解党」を要求した。田中代表は「有権者の信頼を裏切ることになる」などとして拒否した。

 荒井、滝両氏は同日午後、今後の対応を協議する予定。要求の背景には、与党との連携など参院選後の対応に関する思惑の違いがあるとみられ、同党は事実上の分裂状態となった。同党関係者が明らかにした。

 田中代表は共同通信の取材に「新党日本として百万票を超える有権者の負託を受けており、解党を認めることはできない」と話した。

 同党は六月四日に、田中代表ら二人を参院選の比例代表に擁立すると記者会見で発表。二十七日に参院選公約の詳細を公表した。荒井、滝両氏は、一切連絡がなかった上、「憲法九条の第一項、第二項目を堅持」など容認できない内容が含まれていると主張、修正をめぐって田中代表らと断続的に協議したが物別れとなったという。 新党日本の現在の所属議員は荒井、滝の両氏だけとなっている。

 今回、新党日本に残っていた国会議員が離党した背景には、もともと自民党に所属した荒井議員だけでなく、滝議員が郵政民営化法問題で自民党を追い出されたものの、その考え、政策の大部分が<自民党>にあったころがある。

 これほど理念、政策がまったく異なる政治家が同じ政党内にいること自体、大問題であり、当初から新党日本は国民新党同様、選挙互助会と揶揄されていた。

 他方、荒井議員が記者会見でいったように、田中康夫氏は、新党日本を結成した当初から、ほとんど荒井、滝議員のみならず、他の議員(当時は荒井、滝以外の議員もいた)とほとんどコミュニケーションをとらず、一方的、勝手に、さまざまなことを決めていた、といっても過言ではない。

 もし、本気で新党日本のことを考えるなら、仮に当初、理念、政策が違っていたとしても、徹底的に議論しあい、その溝を埋めるべきである。もし、そうでないのなら、はじめから世間から揶揄されるように、それぞれの政治家が次の選挙までの腰掛けとして、まさに選挙互助会として政党を利用していたに過ぎない。

 このことは、当然、田中康夫氏にも妥当する。

 田中氏は筆者にも繰り返し、「新党日本は直近の選挙、すなわちあの郵政民営化をめぐる衆議院議員選挙で100万票以上を獲得しており、政党要件を満たしている」と述べていた。さらに、これも何度か書いたことだが、国会議員が党に在籍すれば、それなりの政党交付金(政党助成金)が党に入る。

 事実、以下のデータを見れば分かるように、2006年、2007年と、新党日本は、前回の衆院選挙で一定以上の票を得ていることで、政党要件を満たしており、国会議員が在籍したことから政党交付金は、以下のように合計で2億円以上得ていることになる。

●2005年の政党交付金支給額

自民党 157億7951万4000円
民主党 117億6529万8000円
公明党 29億4374万1000円
社民党 10億2242万2000円
自由連合 1億1950万5000円
国民新党 6094万7000円
新党日本 4003万円

●2006年の政党交付金支給額(06年1月18日確定)

  • 総額317億3,100万円。
自民党 168億4,600万円(+14億2,700万円)
民主党 104億7,800万円(−17億1,400万円)
公明党 28億5,800万円(−1億1,300万円)
社民党 10億600万円(−2,200万円)
国民新党 2億6,600万円
新党日本 1億6,000万円
●2007年の政党交付金支給額

    
推定するに2006年度同様、政党交付金が新党日本に
    支払われるものと思う。

 すでに書いたことだが、2006年8月、長野県知事に落選した田中氏が参院選挙出馬を考えた前提は以下である思う。

 すなわち、

 (1)仮に国会議員が一人もいなくなっても政党要件を満たしていること、

 (2)自分とまったく理念、政策が違おうと、国会議員がいれば上記のように政党交付金が入ってくる

という前提があったからだと思える。

 筆者は、(1)はまだしも、(2)が書いた通りだとすれば、それは有権者、国民に対し実に不見識、不謹慎なことであると思う。

 今日の記者会見で、荒井、滝の両議員は、田中代表に新党日本の「解党」を要求した。おそらくその理由は、解党とすれば、上記の(1)、(2)いずれもがなくなる、すなわち日本新党は政党でもなくなり、当然政党交付金ももらえなくなることを意味する。

 一方、荒井、滝の両議員が離党した場合はどうか?

 離党すれば新党日本には政党交付金はでなくなるが、政党としての要件は残存する。したがって、新党日本は今回の参議院選挙、次回の国政選挙に政党として生きながらえることになる。

 政党と政治団体とでは、さまざまな点で雲泥の差となる。法律上圧倒的に不利な条件で選挙運動を強いられている。 
  • 衆院選では選挙区で政見放送に出演できない
  • 衆院選で比例区の重複立候補が認められていない
  • 政党は比例区に1人からでも候補を立てられるが、政治団体は衆院では定数の10分の2以上、参院では10人以上(選挙区と含めて)候補を立てなければならない
 田中氏が今日の会見でいろいろ言い訳しながら、「解党」を拒否したのは、上記のように一気に(1)と(2)を失うからである。

 一方、両議員には原則的に離党の自由がある。もちろん、滝議員が衆院の比例復活なので、本来、他の政党に入る自由はない。田中氏は、その点で高をくくっていたようだ。離党となれば滝議員も筋が通りにくいからだ。

 すでに離党を宣言しているが、両者が離党すると、国会議員はひとりもいなくなるから、新党日本には今後政党交付金がでなくなることになる。

 今回の一件は、どっちもどっち的な側面があることは言うまでもないが、あまにりも国民、有権者をバカにした話しである。

 かくもこれほど醜態をさらすことになったのは、田中康夫氏自身が、今回の参議院議員選挙で政党としての新党日本から出馬することがあるからであろう。

 さらに言えば、ゾロゾロと現役議員が新党日本から離脱していったのは、いうまでもない荒井議員が会見で明言していたように、田中氏があまにりも独善的で、コミュニケーションが無く、党運営だけでなく、理念、政策面でもまともな議論を他の議員との間でしてこなかったからである。 

<参考>政党要件及び政党交付金について

 日本では、政治資金規正法・政党助成法(法人格付与法は政党助成法と同じ定義)でそれぞれ似ているが微妙に異なる要件を定めている。すなわち、政治団体のうち、所属する国会議員(衆議院議員又は参議院議員)を5人以上有するものであるか、近い国政選挙[1]で全国を通して2%以上の得票(選挙区・比例代表区いずれか)を得たもの[2]を政党と定めている。

  近い国政選挙とは、
前回の衆議院総選挙
前回の参議院通常選挙
前々回の参議院通常選挙(ただし、公職選挙法上はカウント対象外) のいずれかを指す。

 政党要件における国会議員の資格は衆議院解散日から選挙投票日までの前衆議院議員、任期満了後から選挙投票日までの国会議員も含む。

  政党助成法上はさらに国会議員を有することを要件としている 小政党・地方政党が法律に従って現実の政党概念や政党分析、政党システム分析から追放されるわけではない。しかし、こと国政選挙に関していえば、政党とその他の政治団体・無所属候補の扱いの差は大きい。

 たとえば、法律で認められたポスター枚数は、公職選挙法上の政党には候補者とは別枠で枚数が認められているなどである。政党以外の候補は

衆院選では選挙区で政見放送に出演できない
衆院選で比例区の重複立候補が認められていない

 政党は比例区に1人からでも候補を立てられるが、政治団体は衆院では定数の10分の2以上、参院では10人以上(選挙区と含めて)候補を立てなければならない など、法律上圧倒的に不利な条件で選挙運動を強いられている。

 その他、政治資金規正法上の政党に該当すると団体献金が受けられるようになる等の点で差異があり、政党助成法上の政党になれば国から政党助成金が受けられるようになるなど、他の政治団体と異なる取扱がなされている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』等