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「崖っぷちの世界」
金融資本主義終焉の
はじまり(1)

青山貞一
掲載月日:2008年10月10日


■金融資本主義終焉の序章

 2008年10月10日の日経平均株価は、あっさり9000円を割り込んだ。大阪市場ではさらに株価が暴落している。一方、外国為替市場でドルやユーロ売りが急進している。円相場は一時、3月以来の1ドル=97円台と急伸し、トヨタはじめ輸出関連株の下げにつながっている。

 このように、金融危機は、5年ぶりの日経平均株価の著しい低下と急激な円高を招来している。

東証一時1000円超安 5年4カ月ぶり9千円割り込む

 10日午前の東京株式市場は、前日の米国株式市場が大幅続落したことで、景気悪化懸念が一層強まり、パニック的な売りが広がった。日経平均株価(225種)は8日に続いて暴落。下げ幅は一時、1042円まで拡大し、取引時間中としては2003年5月下旬以来、約5年5カ月ぶりの安値水準となった。

 午前の終値は、前日比974円12銭安の8183円37銭で、約5年4カ月ぶりに9000円を割り込んだ。全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)も、75・20ポイント安の829・91と下落した。出来高は15億5千万株。

 米国株式市場で、ダウ工業株30種平均が史上3番目の下げ幅で急落したことを受け、金融危機が深刻化したとの不安感から、全面安の展開で、好材料を持つ銘柄も地合いにおされて売られる展開となっている。

 また外国為替市場でドル・ユーロ売りが進んでおり、円相場は一時、3月以来の1ドル=97円台に急伸。輸出関連株の下げにつながった。信用取引を行っている個人投資家を中心に、追加担保(追い証)を差し入れるための売りも増えている。

 さらに中堅生保の大和生命保険(東京)の経営破たんが伝えられ、一層売りが進んだ。

 市場は「各国の政策協調も反転材料にならず、実体経済への悪化懸念が拡大し続けている。恐慌に近い状況」(大手証券)と警戒している。

 東京新聞 2008年10月10日 12時15分


 さらに、日経平均株価は、下げ幅が一時1000円超となり、8115円に急落した。

 ※日経平均、下げ幅一時1000円超 前場で8115円に CNN Japan

 下のグラフは、日経平均株価の過去2ヶ月の推移である。わずか2ヶ月の間に株価は13000円台から8000円台に、5000円、40%近くも近くさがっている。



2008年9月から10月10日までの日経平均株価の推移。 単位は円/日
2ヶ月で40%近くさがっていることが分かる。とくに10月に入ってからの
下げ幅のストライドは大きい(グラフ右の大きな長方形がそれ)。


崖っぷちの世界経済World on the edge

 ところで、以下を見て欲しい。有名な英国のロンドン・エコノミスト最新号の表紙である。表紙には「World on the edge」 とある。直訳すれば「崖っぷちの世界」



 米国のブッシュ政権による政策の失敗で生じた「サブプライムローン」のシステム崩壊に端を発した金融危機は、G7諸国を中心としに相互に結びついた国家経済のグローバル化によって、世界各国、とくに欧米アジアで深刻な事態を迎えている。
 
 2008年10月9日発売の日刊ゲンダイ一面には、上記のロンドン・エコノミスト誌の表紙に加え、AP通信が配信した「閑散としたニューヨークのウォール街の写真」が大きく掲載された。いうなれば The End Of Wall Street? である!

 これは、1884年のウォール街のパニックと題がついた写真だ。 今、まさに米国を原点、源流とした「金融資本主義の危機と終焉」を思わせる。


ノーテンキな国民は日本人

 あまりにも動きが早いとは言え、今回の金融危機問題の深刻さと深さを日本人の多くはほとんど認識できていない。ノーテンキである。

 今後、この金融危機はいつまでつづくのか? いつになったら一段落するのか? さらにG7諸国を中心に欧米日は、とんでもない暗黒の世界に向かうのか、今のところ誰一人として満足な回答を持ち合わせていない。

 昨日の日刊ゲンダイの一面の記事では、ある金融の専門家が「これからは何が起こってもおかしくない。想像を絶することが起こる。日本人も覚悟を決めるべき」と述べている。まさに、その通りだ。自分は株や債権、証券、先物、FXをやっていないから「そんなの関係ない」ではすまない。

 過去を遡れば、財政・経済音痴のブッシュ政権が支援したサブプライムローンのシステム破綻が予見されたが、ノーテンキな国、日本は対岸の火事くらいにしか思っていなかったはずだ。

 大きな原因は、日本の大マスコミが自民党総裁選などや麻生首相や東国原問題では馬鹿騒ぎしても、この種の重大かつリアルタイムで急速に進む問題では、現地取材を含めた特番を組むなどしてないからだ。

 情報番組のコメンテータは総じて不勉強、したり顔で分かったようなことを言うが、問題の本質を理解していないひとが大部分だ。アホ番組を連日垂れ流し、それをあんぐり口を開けて日本人が見ている。実はその背後で、「世界は崖っぷち」に追いやられていたのである。

 9.11やイラク戦争のように、絵や画像を見て見て分かる問題には、日本の大マスコミも視聴率が稼げるから追随する。しかし、今回のような金融危機、それも全体が納豆のように相互に深く関連している問題には、頭がついて行けていない。システム思考がないと、この種のグローバルな金融危機や経済破綻問題にはついて行けない。事実、NHKの解説番組などを見ていても、その場限りの表層的な解説に終始している。


市場原理主義国で国有化が進む異常!

 この数ヶ月、米国の金融危機は、日本の旧住宅金融公庫に類する2つの会社の国有化が行われ、リーマンブラザース破綻後、米国政府による75兆もの公的資金により、投資銀行などの株や不良債権を買い取った。ににもかかわらず、危機は一向に改善の兆しすら見えない。それどころか株価はとどめなく下がっている。

 今後、米国政府は銀行や投資銀行に80〜100兆円規模の公的資金の直接注入を行うことをブッシュ政権の財務担当者は示唆している。

 だが、これら国が過去、博打的な金融資本主義によって巨額な暴利をむさぼってきた投資銀行などの経営が危なくなったからと言って、公的資金を注入したり、不良債権を買い取ることは、資本主義、市場経済を米国自らが否定することに他ならない。

 国民には自己責任を強調しながら、金融資本関連法人には日本一国の一般会計予算に匹敵する公的資金を投入するというのでは、納税者(Tax Payer)意識が著しく高い米国市民が怒り心頭となるのも当然である。

 これはマイケル・ムーアならずとも怒り心頭となる話しだ!

 それは、繰り返すが、市場原理主義の金融資本主義が「官僚社会主義化」することを意味する。


つづく