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日本のテレビ、新聞など大メディアがスポンサーの顔色を見てニュースの取捨選択や番組制作をしていることは、今やよく知られるところである。 今年3月の決算では、在京テレビ局の多くがテレビ事業単独で赤字が見込まれている。景気が極度に悪化してくると、一層、新聞社やテレビ局がスポンサーに気を遣うことが憂慮される。 「独立系メディア」では、以前から日本の大メディアが海外で起こった原発事後や核燃料廃棄物再処理などに関連した事故を、まともに報道していないことを実例を挙げ批判してきた。 ※独立系メディア アーカイブ<原発・核> ※青山貞一:スウェーデン原発事故と日本のメディア ※青山貞一:英セラフィールド再処理施設から漏れ出る放射能汚染(1) そんな中、社団法人日本広告審査機構(通称、JARO)が東京電力など電力会社でつくる電気事業連合会(通称、電事連)が雑誌に掲載した広告に関連し、原発がCO2を出さないというだけで「クリーン」であるという表現は適切ではない、という裁定を電事連に出していたことが分かった。この裁定は昨年11月25日付で出されていた。 下はそれを伝える西日本新聞の記事である。
神奈川県の苦情申し立て人が言われる通り、「事故時の放射能汚染の危険性があり、到底クリーンとは言えない」ことは言うに及ばない事実である。 日本でも東海村のJCO事故はじめ過去、数多くの原発事故が起きている。 海外では米国のスリーマイルズ島原発事故、ウクライナのチェルノブイリ原発事故など深刻な原発事故が起き、広範囲にわたり深刻な放射能汚染が起きている。 さらに原発で使用済みの核燃料の再処理を巡り、イギリスのセラフィールド核燃料処理工場では膨大な量のプルトニウムが環境中に放出されている。 ※主な原発事故 今回、JAROが出した「原子力発電にクリーンという表現を使うことはなじまない」という裁定は、至極もっともなことである。 冒頭述べたように、日本の新聞やテレビなどの大メディアが一大広告主である電事連や原子力産業会議、さらに東京電力などに気を遣い、原発事故や核燃料サイクルに関わる様々な問題をまともに報道せず、取り上げてこなかったことこそ重大問題であるといえるが、今回のJAROの裁定は遅きに失したとは言え、広告主だけでなくメディアに対しても、大きな影響を与えるものと期待できる。 電力会社は一般の私企業と異なる公益事業であり、電気事業法にもとづく電気の供給義務だけでなく、国民の健康、安全、環境問題に正面から取り組むべき義務を負っている。 にもかかわらず、全国各地の原発立地や原発稼働に関わる問題では、情報の公開、説明責任、企業の社会的責任を果たしているとは言えない。各地で起きている原発訴訟をみても、そのことが言える。
JAROの裁定には法的拘束力はない。しかし、電事連は原発=温暖化防止=クリーンなエネルギー源など、事業者による短絡的な情報操作による「世論誘導広告」は厳に慎むべきであると思う。 |