警戒事象は、原子力規制委員会→北海道(→総合振興局・振興局→その他の道内市町村)→関係町村(PAZ3自治体、UPZ10自治体)さらに、関係防止機関として、岩内警察署、倶知安・余市・寿郡警察署、岩内・寿郡地方消防組合消防本部、要諦山麓・北後志消防組合本部に通報される仕組みとなっている。
特定事象は原子力事業者(原子力防災管理者)である電力会社から同時並列に国の原子力規制委員会、北海道庁、関係町村(PAZ3自治体、UPZの10自治体)、さらに、関係防止機関として、岩内警察署、倶知安・余市・寿郡警察署、岩内・寿郡地方消防組合消防本部、要諦山麓・北後志消防組合本部に通報流れる仕組みとなっている。
緊急事態宣言は、上記の原子力緊急事態により内閣総理大臣が緊急事態を宣言を宣言することを指す。
以下は、前出のニセコ町における初期レベル、警戒レベル、緊急事態レベルに対応した体制である。
出典:ニセコ町原子力防災計画
ここでいくつかの疑義がある。緊急事態レベル(敷地境界付近等)で500μSv/hと言う非常に高いレベルの放射線量が検出されないと、第3非常配備、すなわち緊急事態レベルにならないという問題である。
確かに、内閣総理大臣の緊急事態宣言により町長等が最終的に町民の待避、避難などを伴う緊急事態レベルであるとしても、福島第一原発事故の場合、その段階では、風向、風速、地形によるが数10km離れた地点で50μSv/hが観測されている。
2013年4月以降、UPZ圏に多数設置された放射線量測定器は、設置管理者である国以外に北海道、市町村、さらに住民まで誰でも見ることが可能であり、初期レベル以降、測定値が急激に上昇している場合には、町長の判断で緊急事態レベルに準ずる措置ができないものかと考える。
また敷地境界付近ないし施設内での5mSv/h〜10mSv/hは、原発施設の作業員にとっても外部被曝量として非常に高い値であり、同時に吸引する放射性物質などからの内部被曝量をあわせると、暴露時間いかんでは健康、生命に影響を及ぼす値であると推察できることもあり、第 15 条 (原子力緊急事態)の現場における事態、状況との関連もあるが、より低いレベルで緊急事態レベルとすべきであろう。
<参考> EAL(緊急活動レベル)及びOIL(行政介入レベル)について
ところで、第6回委員会では、7月下旬に原子力規制委員会が公表したいわゆる新基準のうち、EAL(緊急活動レベル)、OIL(待避・退避等のための行政介入レベル)については、依然として明確になっていなかった。
従来から原子力防災計画策定委員会で議論してきたのは、それらEAL及びOILのレベルの値、たとえばEALが時間当たりで500μSv/h、OILが時間当たりで50μSvという値の妥当性である。
これは上記の緊急事態レベルに相当するものであろうが、やはり高すぎるのではないか、そしてより低いOILレベルあるいは時間当たりの上昇率などに基づき、ニセコ町長が独自の行政判断を下せないものかなどについて議論してきた。
これらレベルは、従来から世界各国のレベルを見ると、いずれも非常に高いことが分かる。
以下は委員会当初に青山が参考資料として提出したものである。ただし、以下は原発から10km程度離れた地域のであり、30km圏(UPZ)のものではない。
累積線量を暴露時間で単純に割った値は、屋内待避で約200μSv/h、避難で約300μSv/hであり、ともに非常に高い値となっている。仮にこの値の半分が等価線量(内部被曝)であるとしても、屋内待避で約100μSv/h、避難で約150μSv/hであり、依然として高い。
もっぱら、以下の各国の行政介入レベルは原発から5〜10km程度離れた地域における値である。
・16カ国の屋内退避基準(行政介入レベル)
実効線量 原発からの距離
16カ国の幅 5〜10mSv
全体の2/3の国 10mSv
カナダ 1日 5mSv 10km
オーストラリア 2日 10mSv
フランス 2日 10mSv 10km
ドイツ 2日 10mSv
スウェーデン 2日 10mSv 12〜15km
米国 4日 10〜50mSv
日本(日数不明) 10〜50mSv 8〜10km
・16カ国の避難基準(行政介入レベル)
実効線量
16カ国の幅 10〜300mSv 原発からの距離
カナダ 7日 50mSv 7km
フランス 7日 50mSv 5km
日本 7日 50mSv
今回の避難基準 7日 100mSv
米国 4日 10〜50mSv
ドイツ 7日 100mSv
スウェーデン 7日 50mSv 12〜15km
・16カ国の等価線量屋外退避基準(行政の介入レベル)
等価線量
16カ国の幅 10〜500 mSv
日本 7日 500mSv
出典:原子力規制委員会 |
日本の原子力規制委員会は、暫定値としてEALを500μSv/h、UPZ(30km圏)を50μSv/hを提案している。このOILは、以下の諸外国の値の半分以下に相当するが、福島第一原発事故直後の浪江町、飯舘村など約30km圏で50〜60μSv/hが計測されている。このときの大熊町の福島第一原発の正門近くで200μSv/hが観測されていることからしても、このOILは依然と高いと思える。
以下は、単純な正規プリュームモデルを使い有効煙突高が50mと100mの場合の風下30km地点での地表面での1時間当たりの空間放射線量(μSv/h)をシミュレーションしたものである。ただし、地形は一切考慮していない。大気安定度はDである。有効煙突高が100mの場合、30km風下で20μSv/hが計算値としてでている。したがって、せいぜい原発施設近くでEALが200μSv/hの場合、UPZ圏でOILが20μSv/h程度がぎりぎり妥当なレベルではなかろうか?
図 有効煙突高が50mと100mの場合の風下30km地点での
地表面での1時間当たりの空間放射線量の計算値
出典:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所(東京)
以下は原子力規制委員会のPAZ、,UPZ内、UPZ外の3つのゾーンに対応した防護措置実施のフローの例である。以下では、原発事故数時間以内から数日後、1週間以内、一ヶ月以内の時間経過との関連においてOIL1からOIL5まで5段階の行政介入レベルを設定しているが、具体的なレベルの数値は書かれていない。
出典:原子力規正委員会
その他、安定ヨウ素剤の摂取については次回の委員会で議論することになっているが、以下のような記事もある。これについては、環境総合研究所の鷹取敦氏は、次のように述べている。
「アレルギー等で安定ヨウ素剤服用の副作用が大きい人への対処はあいまいなままのヨウ素剤の提供はリスクを伴う。アレルギー体質など飲まない方がいい人を予めどう把握するのか、いざという時に自分だけ飲めない人のリスクと恐怖にどう対処するのか等の問題がある。 「優先的に避難させる」という人もいるが、避難する前、避難する過程での吸入による被ばくを軽減させることが目的なので、「優先避難」だけでは解決できないと思う。」
◆NHK・ヨウ素剤 40歳以上も服用認める
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130720/k10013169321000.html
7月20日 7時13分
原子力発電所での事故の際、甲状腺の被ばくを防ぐヨウ素剤について、国の原子力規制委員会は、これまで「服用の必要はない」としていた40歳以上も、「リスクが残るという懸念がある」として、希望があれば服用を認めることになりました。
原発で事故が起きた際、甲状腺の被ばくを防ぐために服用するヨウ素剤について、6月見直された国の防災指針では、半径5キロを目安に事前に配布することや、自治体が配布の前に住民向けの説明会を開くことが盛り込まれました。
原子力規制委員会は、自治体から要望を受けて、ヨウ素剤の配布や服用のルールをまとめた解説書を作成しました。
解説書には、服用の具体的な方法や副作用に関する説明のほか、これまで「服用の必要はない」としていた40歳以上も、希望があれば服用を認めることが盛り込まれています。
また40歳以上について、「近年の研究をみると、甲状腺がんの発生のリスクは年令とともに減るが、高齢者においてもそのリスクが残るという懸念がある」と説明しています。
原子力規制庁の森本英香次長は、19日の会見で、「ヨウ素剤は甲状腺の機能を下げるリスクもあるため、自治体には副作用についてもしっかりと説明してほしい」と話しています。
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つづく
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