日本政府は北朝鮮のロケット打ち上げに関連し、ことさら大騒ぎをしてきた。さらに4月4日、政府は誤報を発した。もとより何一つクロスチェック、ダブルチェックをすることもなく誤報を発したのだが、当然のこととして大メディアはそれを一方的に垂れ流した。
北朝鮮の「銀河2号」の発射写真
出典:北朝鮮
麻生総理はじめ政府関係者は、この世紀の大誤報をいわば笑ってごまかすようだが、そもそも北朝鮮の人工衛星であれ、弾道ミサイルであれロケットを本気で打ち落とすこと自体、果たして可能か?と誰しもが思うだろう。
日本は米国ブッシュ政権のいいなりに、イージス艦2隻、迎撃ミサイル3基を目が飛び出るほどの高額で買わされてているが、やれもしないのに実勢配備したといえる。
しかし、4日の誤報でも明らかになったように、日本の迎撃態勢はお粗末そのもの、「鉄砲の弾を鉄砲で撃ち落とすようなもの」と鴻池官房副長官が述べたように、そもそも迎撃など技術的にも、まさに容易でなく、無理であろう。
地対空誘導弾パトリオット(PAC3)
技術的に見ると、北朝鮮の銀河2号が日本上空を通過する10分後には地上から300kmを飛ぶことになる。イージス艦から発射されるミサイルSM−3の上昇限度は250kmまでだから、まったく届かない。さらに地対空誘導弾パトリオット、いわゆるPAC3の射程はせいぜい設置位置から半径20km程度。近くに落ちてきた破片を破壊することしかできない。
ちなみに日本政府、マスコミは日本の上空、上空と発表しているが、地上100km以上は国際条約で他国の上空でも自由に通過させることは可能である。各国の人工衛星、毎日のように100km以上の上空を飛んでいる。
その意味で言えば、4月5日、昼の北朝鮮の実験がそれなりに成功したことで、ホット胸をおろしているのは政治家を中心に日本の防衛族、防衛省関係者ではなかろうか?
実戦配備し、もし日本の領空を侵犯したとして、それにPAC3で応戦し打ち落とせなければ日本政府は世界的に恥をさらすことになることは間違いないからだ。
ところで今回の一件で極めて不可思議なのは、本来、極秘であるはずのイージス艦や迎撃ミサイルPAC3の配備場所などをマスコミに大々的に公開していることだ。
本来、この種の場所は極秘でなければならない。なぜなら当然のこととして、もし戦争状態になれば真っ先に相手の攻撃を受ける場所であるからだ。
岩手と秋田に地対空の誘導弾パトリオット実戦配備されるPAC3や関係車両数10台が国土幹線自動車道を北上する映像までテレビ各局は垂れ流していた。実勢配備されたPAC3もライブでテレビに映されていた。
さらに麻生首相は国民に危機を煽りつづけ、非公開が大前提のミサイル破壊措置命令まで公開したのはなぜか?
「『愛国』と『腐敗』、日米防衛利権の構造」の著者でジャーナリストの野田峯雄氏は、日刊ゲンダイのインタビューに答え次のように述べている。
「政府は自ら実戦化した部隊をつくり、戦闘への備えを進めています。これが本気なら、PAC3配備という隠して当然の軍事行動について、なぜマスコミを集めて見せびらかすのか。原子力発電所の燃料運び込みですら、ダミーの車両を走らせる細心の注意を払っています。それなのに軍事機密はジャジャ漏れで偽装工作もしない。常識では考えられないことをやっているのです」
「政府は自ら実戦化した部隊をつくり、戦闘への備えを進めています。これが本気なら、PAC3配備という隠して当然の軍事行動について、なぜマスコミを集めて見せびらかすのか。原子力発電所の燃料運び込みですら、ダミーの車両を走らせる細心の注意を払っています。それなのに軍事機密はジャジャ漏れで偽装工作もしない。常識では考えられないことをやっているのです」
そんな防衛のイロハにもとる配備を行ったのはなぜか?何でかくも政府・自民党は北朝鮮ミサイル問題で大騒ぎしたのか?
それはいうまでなく、政府・自民党は北朝鮮の脅威を煽り続けることで、イージス艦やPAC3はじめ超カネ喰い虫のミサイルディフェンス計画、通称MD計画を推し進め、関係する企業、商社ともども8000億円になんなんとする防衛利権を掌中にしようとしているからに他ならない、と考える。
野田氏は日刊ゲンダイのインビューに応え次のように述べている。
「(MD)計画を推進する米国に両手を引っ張られ、日本は小泉政権の2004年度からMDに予算を付けてきました。その総額は、2009年度概算要求額を含めると8087億円に上ります。これに群がっているのが、日米の軍需企業群と政治家達。とかく政治家は安全保障とか憂国の情とかきれい事を並べますが、本当の動機は不純。北朝鮮危機は防衛利権で甘い汁を吸う連中に利用されているわけです」
一艘で1350億円もするイージス艦
たとえばイージス艦は半径500km以内にいる敵の戦闘機、ミサイルを瞬時にキャッチし、迎撃ミサイルを発射する高性能レーダーを備えた戦艦と言われている。
イージス艦は三菱重工で作られているが各種の設計図は米国から供与されており、その価格は三菱重工、アメリカへのライセンス料、商社に払う仲介料などで明細は明らかにされていないが総額で一艘あたり1,350億円とされている。
以下は古いデータだが、2001年度の世界の軍需企業売り上げランキングである。
表 2001年度の世界の軍需企業売り上げランキング 単位:億ドル
おそらく野田氏が指摘する点は、百も承知のハズの新聞、テレビの大メディアは、利権問題にはまったく触れず、ただ日本政府の大本営的発表を垂れ流している。
誤報までそのまま垂れ流しているのは、分野は違うが小沢代表公設秘書にかかわる検察リークの情報の垂れ流し同様、まさに今の日本の思考停止、機能不全の大メディアの実態を如実に示していると言えよう。
日本の経済も外交も実態は何も変わっていないのに、麻生内閣支持率がこの数日で10%以上も上がったと言うのだから、いつもながら「おめでたい国民」という他はない。まさに、政府・メディア合作の「情報操作による緒世論誘導」、いや、「政官業学報の癒着」が一層強固な物となっている。
<参考・引用>
1)8000億円投入迎撃ミサイル利権、日刊ゲンダイ、2009年4月4日
2)青山貞一:エネルギー権益からみたアフガン戦争「世界」岩波書店