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日経新聞の2009年4月14日の記事に「トヨタなど、家庭用蓄電システムを2011年メド実用化」というのがあった。
その昔、今から10数年前、私達の環境総合研究所(当時は東京都品川区東五反田の閑静な住宅地に本社あった)を訪れたホンダ(自動車)の企画室の方に、今後、ハイブリッド車、電気自動車が普及するとなると、自動車用に開発されるコンパクトな「蓄電池」に手を加え、家庭用に使える蓄電システムが自動車会社がもつ大きな社会的役割となるはずだ、と話したことがある。 ハイブリッド自動車や電気自動車用の「蓄電システム」に一部手直しして家庭用に使う考えを提案した。 家庭用の太陽光発電パネルはかなり普及している。しかし、まともに使える「蓄電システム」がないため、当時も今も太陽光発電パネルで発電した電気は、昼間は一旦交流に変換し逆潮流させ電力会社に売る。夜間は逆に電力会社から交流の電気を買い使うというのが一般的な方法である。 しかし、もしまともな「蓄電システム」、すなわち「電池」があれば、何もせっかく発電した電気を電力会社に売ることなく、発電した電気を「蓄電システム」に蓄え、夜間など太陽がでていないときに存分使うことができるわけだ。これが可能となれば、分散型の電気エネルギー供給システムが、家庭で可能となり、原子力開発に消費者のカネを投入し続ける電力会社と縁が切れる。 さらに将来、いわゆる「燃料自動車」ができれば、自動車で使う「燃料電池システム」を改良し、家庭用の「分散型発電システム」に使える。いうまでもなく燃料電池は水素(H2)を供給すれば、大気中の酸素(O2)と化合し、H2O、すなわち水とともに電気を生み出す。電気分解の場合と逆の方法で発電が可能だ。 燃料電池は大気汚染や二酸化炭素を一切排出しない究極の発電システムと言われるが、最大の課題は供給する水素をどうつくるかにある。もっとも簡単につくるには石油など化石燃料からつくることだが、そうなると石油からガソリンや軽油をつくりそれを燃料として走る今の自動車と変わらなくなる。変わらないどころか、ガソリンや軽油でエンジンを回す場合に比べ、燃料の使用効率が悪くなり、何をしているのか分からなくなる。 たとえば東京ガスは、すでにエネファームという家庭用のコージェネタイプの燃料電池を売り出している。実際はパナソニックや荏原バラード社から製品が出ている。このシステムはガスを使いお湯と電気を生み出すが、そもそも燃料が化石燃料の都市ガスであること、また発電がわずか定格発電容量1KWなのできわめて中途半端なもの、お話しにならないと思う。しかも約600万円もする。 これは水素自動車でも同じだ。かといって原子力発電や水力発電で得た電気を使い電気分解で水素をつくり燃料自動車用の燃料にするのも、化石燃料を原料に作る場合同様、本末転倒である。 ハイブリッド車、電気自動車、燃料自動車はいずれも、現在のガソリンや軽油を燃料をとして走る自動車の代わりとなるものであり、世界に冠たる日本の自動車会社が手がけることになるのだから、今(当時)のうちから「自動車産業」は同時に家庭用の「分散型発電システム」産業になりうる、というのが私の遠大な提案だった。 なんと言っても自動車分野で量産され、その製造技術をすこし変えれば家庭分野で使えることになれば、非常にリーズナブルな価格でヘビーデューティ−に耐える製品が供給できる、そこが私のねらい目であった。 「蓄電システム」や「燃料電池」を使った家庭用の分散型発電システムは、国内外を問わず膨大な需要があるだから、将来、自動車の需要が頭打ちになっても、自動車産業は十分に生き残れる、というのが私の考えだった。 しかし、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンしか念頭にない自動車会社のひとに、今後、自動車会社は家庭用のエネルギーをまかなう「蓄電池」や「燃料電池」屋になるべし、という私の提案に、ホンダの企画部門のひとは目を白黒させていた。 つづく |