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◆環境総合研究所(東京都)・福島県内小児甲状腺がんの予備的疫学調査
◆青山貞一:甲状腺(ホルモン)システムと甲状腺がんについて ◆鷹取敦:放射性ヨウ素による内部被ばくと小児甲状腺がん ◆甲状腺と甲状腺ホルモンについて 甲状腺はのど仏近くに位置しています。甲状腺は、T4という甲状腺ホルモンを主に産生していて、T4が血液などに運ばれ肝臓に入りT3という甲状腺ホルモンに変わり、体内に作用します。 甲状腺の位置 出典:旭川医科大学公式Web 甲状腺の位置 出典:がん治療ナビ いわゆる甲状腺ホルモン (サイロイドホルモン、Thyroid hormone)とは、甲状腺から分泌され、一般に全身の細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きをもっています。 脊椎動物では、甲状腺ホルモンは広く確認されており、ホルモンの化合物の構造に種差はなく、分泌腺の形状、分泌様式などは非常によく保存されています。そして何よりも、甲状腺ホルモンは人間を含む脊椎動物の生存に非常に重要なホルモンであるといえます。 下図は甲状腺の機能、役割を示したシステム図です。 甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)とは、頚部前面に位置する内分泌器官で、甲状腺ホルモン、カルシトニンなどのホルモンを分泌します。 Source: English Wikipedia
◆甲状腺ホルモンに関連する疾患 代表的なものにバセドウ病(Basedow's disease)(別名:グレーヴス病; Graves' disease)があります。 バセドウ病は手足の振るえ(振戦)、眼球突出、動悸、甲状腺腫脹、多汗、体重減少、高血糖、高血圧などをおこします。 反対に、甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態が甲状腺機能低下症ですが、この原因として代表的なものに慢性甲状腺炎(橋本病)があります。 全身倦怠感(からだのだるさ)、発汗減少、体重増加、便秘などを生じる。小児では身長の伸びの低下によって分泌の不足に気づかれることも多いとされています。 ◆甲状腺がんについて 以下の出典は、愛知県がんセンター中央病院の公式Webです。 甲状腺は頸部の正面下方に、喉頭(のどぼとけ)につづく気管を取り巻くように、位置します。蝶のような形でサイロキシンという全身の細胞の新陳代謝に関与するホルモンを分泌します。 ここに発生する甲状腺がんは5種類の組織型別に、頻度、悪性度、転移の起こり方などに、それぞれ特徴があります(以下の表参照)。 表.組織型別にみた甲状腺がん(1997-2007, 386例)
甲状腺がんの頻度は、全がん症例の1%程度である。性別は女性に多く、男性の約3倍であり、また年齢では、50代、40代、30代の順に多いです。 最も多く、最も予後のよい乳頭がんはリンパ節転移をよく起こし、硬いしこり(腫瘤)をつくります。つぎに多い濾胞がんは肺や骨へ転移しやすく、良性のしこりに似ています。 これを分化がんとまとめる。カルシトニンをつくる細胞から発生する髄様がんは遺伝性のものがあります。これに対して未分化がんは幸い少ないが(2%)、全身のがんの中、もっとも悪性です。 主訴のうち一番多いのは、甲状腺のしこりである。それは殆どの場合に自覚症状がありません。 つまり何の痛みも異物感も感じないわけです。 たまたま鏡で見てはれていることをみつけたり、何気なくさわってみてわかったり、人にいわれたり、職場の定期検診でみつけられたり、他の疾患で受診して、その医師に指摘されたといったことを契機にして、甲状腺腫に気づき、当科を訪れています。 二番目に多い主訴は頸部リンパ節腫大であり、これも自覚症状がないことが多いです。これは、まずリンパ節転移がさきに見つかって、あとから本来の原発巣が甲状腺とわかる場合です。 少しずつでも大きくなる傾向にある甲状腺腫と頸部リンパ節の腫大は、専門医に診てもらわなくてはなりません。 甲状腺がんの診断には触診が重要です。がんらしい硬さ、不平滑な表面と形、そしてその可動性を診ることによって70〜90%まで診断はつきます。 出典:愛知県がんセンター中央病院 ◆甲状腺がんの触診について 下にある甲状腺がんのイメージ図を見ると、甲状腺がん、とくに乳頭がんができた場合、それなりの大きさになれば、自分で触っても分かること、すなわち触診の意味が分かりますね。イメージ図は片方だけにがんがある場合ですが,実際には両方にシンメトリーにできることもあるそうです。 甲状腺がんのイメージ 右側の白いおでき状のものが「甲状腺がん」 ところで甲状腺は、英語で Thyroid gland と言います。残念ながら日本語サイトでは、甲状腺がんの写真やイメージはほとんど掲載されていませんが、英語サイトで検索すると Thyroid gland cancer の例が具体的写真やイメージ図で多数見つかります。この辺にも、問題がありそうです。 というのも、このようなイメージが分かっていれば、冒頭に述べたように、甲状腺がん(とくに乳頭がん)ができた場合は、自分で触診すればその存在が分かるからです。 私も改めて自分の甲状腺を触診してみましたが、触診におけるひとつのポイントは、左右対称にできた小さながんはわかりづらいですが、両手で左右同時に触診して、どちらかが腫れている場合には、よく分かるはずです。 ◆甲状腺がんの臨床病期別 5年相対生存率 以下にあるように、甲状腺癌は、数あるがんのうち、第Wステージでも、もっとも生存率が高いがんというデータがある。すなわち、早期発見はもとより、第Uステージ、第Vステージでも生存率は100%近く、末期に近い第Wステージで80.4%となっている。 ・全がん協 部位別 臨床病期別 5年相対生存率 日本で用いられているがんの進展度(ステージ)W 単位:% http://www.gunma-cc.jp/sarukihan/seizonritu/seizonritu2003c.html Tステージ Wステージ 甲状腺癌 100 80.4 前立腺癌 100 66.7 咽頭癌 94.8 47.9 乳がん 99 43.5 膀胱癌 93.1 34.3 卵巣癌 89 31.4 子宮頸癌 93.6 18.2 子宮体癌 95.6 30.3 食道癌 81.5 22.6 直腸癌 98.7 19.1 結腸癌 99.6 17.1 胃がん 98.1 14.3 腺癌 88.5 14.1 肝臓癌 70.3 19.9 気管・肺癌 68.8 4.3 胆嚢 67.3 4.8 膵臓癌 40.7 3.7 ◆追記 私の事例 言うまでも無く甲状腺は人間が必要とするホルモン(内分泌)の一大製造工場であるとともに、T4という甲状腺ホルモンを産生し、T4が血液などに運ばれ肝臓に入りT3という甲状腺ホルモンに変わり、体内に作用します。 この甲状腺が機能不全となると甲状腺ホルモンの分泌が増大したり,逆に枯渇することで人体に甚大な疾病をもたらします。 私自身、3年前、第二頸椎を骨折し,大手術を受けたとき持病の重篤な気管支ぜんそくを持っていたため、ぜんそく発作があると手術ができないため、連日大量のステロイド(これもホルモンです)を投与されました。 大手術後、3ヶ月後から、私は動機、息切れが激しくなり階段が上れなくなるだけなく、50mも満足に歩けなくなりました。 その後、(2011年3月)以前から準備していましたイタリア、沖縄に現地調査に行きましたが、車での移動はまだしも、徒歩による移動はまったく困難となり、それぞれ同行してくれた池田、鷹取に大きな迷惑をかけることになりました。 しかし、3月末、沖縄から帰っても症状は悪くなるばかりでした。 数ヶ月間、原因が分からず、町医者だけでなく、慈恵医大学病院でも原因が分からず、途方に暮れました。 その後、ひょんなことから、甲状腺疾病のテレビ番組を見て、甲状腺ホルモン分泌に異常があると、動機、息切れを生ずることを知りました。 最終的に自分で内外の文献を調べ分かったのは、手術は成功し一命は取り戻したのですが、大量のステロイド投与のため、結果的に甲状腺が自らのホルモン生産能力を著しく低下させてしまった結果と分かりました。ホルモン生産工場の閉鎖です。 仕方なく、吸入ステロイドに切り替えていた重度なぜんそくコントロール剤ですが、一部を錠剤のステロイドに切り替えたところ、ピタッと動機、息切れが直りました。 なお、2010年11月の第二頸椎骨折時に慈恵医科大学脳神経外科に20日間入院し、CTスキャナー、レントゲンを頻繁に受けました。が、これら放射線の積算被ばくと甲状腺ホルモン分泌との因果関係はいまのところ不明です。 |