今日のコラム論説 北朝鮮の「核保有」で 憂慮される課題(2) 青山貞一 2006年11月5日 |
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◆青山貞一:北朝鮮の「核保有」で憂慮される課題(1) 「北朝鮮の「核保有」で憂慮される課題(1)」を執筆している最中に、DPRK報道官が6カ国会議開催に際し、以下の立場の表明を行った。
日本の新聞各紙は、たとえば「暴走を続ける独裁国家は、一体何を考えているのか?」(ディリースポーツ)と感情的になり、「北朝鮮の核実験や拉致問題で厳しい姿勢を取る日本を強くけん制するとともに、協議が進展しなかった場合の責任を日本に押しつける布石と見られる」(読売新聞)など、後述する内容から見るとトンチンカンなことをと書いている。 いずれにしても「北朝鮮は、これまでも6カ国協議で拉致問題を取り上げようとする日本の出方を批判。「日本は協議への参加資格はない」などと主張してきたことがあるが、日朝の関係正常化も目標の一つとして盛り込まれた昨年9月の共同声明以降、日本の参加を強く牽制(けんせい)したのは初めて」(サンケイ新聞記事)なのは確かである。 その背景に何があったのかを考えることがきわめて重要となるのは言うまでもない。 上記は共同通信の配信速報だが、DPRK自身の生の声を聞いてみよう。
なぜ、かくもDPRKがいままでになく日本に対し、強弁姿勢となったのか?これが 「北朝鮮の「核保有」で憂慮される課題(2)」の主題である。 ここで読み取れるのは、6カ国協議そのものが、もともとDPRKの核開発に関する停止を定めた米国との枠組み合意(1994年)においてDPRKと米国の間で行われた協議をもととしていることである。 日本は拉致問題やミサイル実験などをからめて6各国協議に臨んでいるが、DPRKは最大の関心は「一にも二にも米国」にある。DPRKは核保有を切り札に金融制裁など各種の制裁措置の解除を要求している。 「北朝鮮の「核保有」で憂慮される課題(1)」で明らかにしたように、米国はクリントン政権時代からDPRKの核開発、核保有を阻止すべく、硬軟両様、アメとムチで対応したきた。しかし、クリントン政権がDPRKとの約束を反故にしたことに象徴されるように、あくまでも米国との直接協議を要求するDPRKの要求に正面から応えてこなった歴史がある。 一方、ブッシュ政権は「悪の枢軸」発言で分かるように、当初からDPRKを敵視した結果、北朝鮮はミサイル実験、偽札製造、麻薬製造など、どんどん国際社会からの離反、孤立を強め、ついには米国がもっとも恐れていた核実験までしてしまったのである。 中国の仲裁で6各国協議が行われたものの、DPRKはあくまでも米国に矛先を絞ってきた。そうこうしているちに、イラク問題で手一杯、財政も悪化し、そもそも支持率が40%を下回っているブッシュ政権は、「北朝鮮の「核保有」で憂慮される課題(1)」において書いたように、 本来、DPRK問題に正面から取り組むべきブッシュ政権が、6各国協議はまだしも、2国間協議で責任を持ってDPRKと国交の正常化を行うとは到底思えない。かといって、DPRKが核実験を行い、核保有を宣言している以上、イラクのときのような物理的な政権交代(レジーム・チェンジ)を行う余裕はない。 もちろん、中期的には上述のように共和党が連邦議会における与党の座から転げ落ち、2年後の大統領選挙で民主党政権ができることになれば、その民主党政権がクリントン政権時代の政策失敗の後始末の一環として、DPRKとの約束を果たし核問題の解決に向かうと言うシナリオもないことはない。 だが、果たしてこれから2年と言う時間のなかで、核保有国となったDPRKの金正日体制が座して死を待つなどとは考えられない。いずれにしても、DPRKの核保有問題の多くの原因はこれらは米国の失政、失敗,にある。それをどうするかが大きな課題となる。 というジレンマ、トリレンマに遭遇することになったのである。 しかも、米国の将来を決する中間選挙はこの11月7日に迫っているのである。 そこでブッシュ政権が最後の考えたサプライズは、今や国際社会でもっとも懸念、憂慮される懸案事項であるDPRK問題の電撃的対応であったはずだ。ひょっとすると米朝が国交正常化までこぎ着けるのではないかという日刊ゲンダイの以下の記事もあながち穿っているとも言えない。 もっぱら、DPRKは、そのような米国、ブッシュ政権の足下を見透かしていたとも思える。 今回の6各国協議再開は、まさにハード、ソフトあらゆる手段を行使し、揺さぶりをかけていたDPRKと、中間選挙を間近に控えたブッシュ政権の思惑が一致したところにあるのではないかと思える。 それがDPRKの日本へのいつにない強腰発言となったのではないか! 以下の日刊ゲンダイの速報は、6カ国協議再開の裏側をえぐっている。 それにしても、「暴走を続ける独裁国家は、一体何を考えているのか?」(ディリースポーツ)、「北朝鮮の核実験や拉致問題で厳しい姿勢を取る日本を強くけん制するとともに、協議が進展しなかった場合の責任を日本に押しつける布石と見られる」(読売新聞)などと書いている日本の大メディアの思考停止でワンパターンさには今更ながら呆れる。
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