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説明責任を果たさぬ
「新党日本」
(4)

〜与野党勝敗ラインを左右する荒井議員〜


青山貞一

掲載月日:2007年7月7日

 
◆青山貞一説明責任を果たさぬ「新党日本」(3)
◆青山貞一:説明責任を果たさぬ「新党日本」(2)
◆青山貞一:説明責任を果たさぬ「新党日本」(1)

 本連載は、昨年秋の時の衆院首班指名で安倍総理に一票を入れた新党日本の荒井広幸議員について代表の田中康夫氏が除名はもとより何の処罰もしなかったことことについて第一回目で書いた。

 第二回目では、その荒井広幸参議院議員が昔から安倍首相と懇意、「友人関係」にあることを朝日新聞の『ニッポン人脈記』「安倍政権の空気(10)を例に伝えた。

 そして第三回目では、案の定というか、通常国会終了時に、新党日本に残された2人の国会議員、すなわち荒井、滝が田中康夫氏の党運営が独善的であることを理由に解党を要求し、その後、離党したことを報じた。

 ところで、田中康夫氏が自分が今回の参議院選挙に立候補する「野望」のために、荒井議員問題にこの間ほっかむりを決め込んできたわけだが、そのことが、ここに来て、日本全体を揺るがす大きな問題に発展している。

 まずは以下の記事の後半を読んでいただきたい。

国会閉幕、参院選へ 「過半数」綱引き
朝日新聞

 第166通常国会が閉会した5日、参院選の過半数獲得をめぐる与野党の駆け引きが早くも始まった。民主党の小沢代表が、野党で過半数を取れなかったら「代表をしている意味がない」と辞任する意向を示し、責任論を避ける安倍首相との違いをアピール。首相はテレビ番組で続投への強い意欲を示した。一方、野党内では荒井広幸氏が新党日本を離党し、無所属の松下新平氏も民主党会派を離脱した。ともに非改選の参院議員で、与党の過半数ラインを下げる可能性も出てきた。

....中略

 ■勝敗ライン、与党有利? 参院2議員が野党離脱

 参院選をにらんだ攻防の主舞台だった国会は最後まで波乱含みだった。

 新党日本の荒井広幸氏は5日、滝実衆院議員とともに離党して無所属となることになった。荒井氏は国会内で会見し、「国民に責任を持って公約を訴えられる状況にない」と述べ、田中康夫代表の党運営に対する不満が背景にあることを説明した。

 荒井氏は安倍氏と個人的に親しく、昨秋の首相指名でも投票している。このため、参院選の結果次第で「野党から離脱するのでは」との見方がくすぶっていた。荒井氏は自民党復党は否定したが、「参院選後も無所属であり続けるか」と聞かれ、「将来にわたって今の段階で発言できる状況にない」。

 ただ、より民主党に「痛い話」(自民党の閣僚経験者)となりそうなのが、松下新平氏の会派離脱だ。

 松下氏はこの日、地元の宮崎県庁で会見し、民主党会派からの離脱を表明した。参院選で民主党推薦の立候補予定者を支援せず、別の候補を支援することが理由で、松下氏は「与党か、野党かと言われれば、ちょうど真ん中」と語った。

 参院選で与党は、現状なら64議席を獲得しなければ過半数を維持できない。しかし、仮に今回は非改選の荒井、松下両氏が与党になるとすれば、与党の非改選議員は58人から60人に増え、勝敗ラインも62議席へと2議席下げることができる。

 自民党の町村派幹部は「貴重な議席になる」。丹羽雄哉総務会長は「自民党に結集していただける方は幅広く受け入れるべきだ。二大政党制の政党政治は、できるだけ大勢が結集するのが望ましい」と期待を隠さない。

 一方、この日も衆院決算行政監視委員会の開催を仙谷由人委員長(民主)が呼びかけたが、与党が拒むという異例の形で開かれずに終わった。相次ぐ採決強行など異例ずくめの国会閉会にあたり、扇千景参院議長はこう呼びかけた。「参院らしくないこともあるいはあった。参院のあり方自体が、皆さんお一人お一人の肩にかかって国民に信を問うことになる」


 いうまでもなく、今回の参議院選挙は、戦後、実質独裁政権を続けてきた自民党を中心とした自公政権の政権交代の序盤、すなわち参院議席で野党が多数をとる関ヶ原の戦いであると言って良いだろう。

 私見では国民、有権者を愚弄する国会議員の不祥事、官製談合などの利権問題、過度な規制緩和による数々の事件、無謬性をもった傲慢な官僚などなどは、まさに自民党政権がもたらす制度疲労、利権体質に由来するものである。

 したがって、参院選挙で野党が合わせて過半数をとることは、過去のいかなる選挙にもまして重要な意味を持つ。

 それに関連し、選挙以前、そして直後に、野党から与党への議員の異動はさもなくとも厳しい勝敗ラインを左右する重大事である。であるからこそ、新党日本が非自民、反自民であるなら早期段階に荒井議員に田中代表がケジメをつけるべきであった。私もそう進言したのである。

 滝衆議院議員は衆院比例で当選していることからも、自民党であれ、民主党であれ移籍は原理上そして制度上できない。もっぱら、制度上できないことをしてきた不届き者もいたことはいたが...

 もし、背に腹を変えられない安倍首相が郵政民営化問題との関連で一定条件を示し、荒井議員を自民党に呼び戻したらどうなるであろうか? すでに安倍首相は過去、何人かの議員を呼び戻し、有権者の顰蹙を買ってきた。しかし、瀬に腹が変えられなくなれば、荒井議員の自民党への復党は十分あり得ることだ。

 そうなったら、田中康夫氏が天下の笑い者となるだけではすまない。

 上の記事が示すように、「参院選で与党は、現状なら64議席を獲得しなければ過半数を維持できない。しかし、仮に今回は非改選の荒井、松下両氏が与党になるとすれば、与党の非改選議員は58人から60人に増え、勝敗ラインも62議席へと2議席下げることができる。」のである。

 そうだとすれば、今まで荒井議員問題を放置し、自分が参議院議員選挙に打って出ることだけを考え、新党日本を利用するだけ利用しようとしてきた田中氏は、到底、公党の代表の資格、資質は無いと言わざるを得ない。

 田中康夫氏が述べてきた United Individuals 、すなわち理念、政策のない、単なる政治家個人の連合などという方便、言い訳は到底許されない。

 つづく