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<緊急報告@>
「油上の楼閣」を壊滅する原油高騰!

青山貞一
掲載月日:2008年7月5日
無断転載禁



 2008年5月24日、CNNが米国産標準油種(WTI)のニューヨーク取引所における原油価格が急騰し、1バレル=135ドルを突破したと報じていた。

               単位:バレル、米ドル

図0 2008年1月までのWTI先物原油価格
    この時点では最高で1バレル=100ドルであった!

 現時点でのWTI原油価格はどうか?

 ※1バレル=159リットル

 青山貞一:外交なき「油上の楼閣」ニッポンの行く末は暗澹

解説: WTIとは

 ウエスト・テキサス・インターミディエートの略で、西テキサス地方で産出される硫黄分が少なくガソリンを多く取り出せる高品質な原油のことを指す。そのWTIの先物がニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されている。

 原油価格の代表的な指標にはこのWTIのほか、欧州産の北海ブレント、中東産のドバイがあり、これらが世界の3大原油指標と言われている。

 そのなかでも、WTI原油先物は、取引量と市場参加者が圧倒的に多く、市場の流動性や透明性が高いため、原油価格の指標にとどまらず、世界経済の動向を占う重要な経済指標の1つにもなっている。

出典:http://chartpark.com/wti.html


 図1は、2007年6月から今年に入ってのWTI原油スポット価格の推移である。2008年1月時点で1バレル=100ドル前後を推移していた価格は、その後、一本調子で上昇し続け、2008年7月上旬現在、1バレル=140ドルの最高値を更新した。

                   単位:バレル、米ドル

図1 WTI原油スポット価格のここ2年間の推移
    出典:米国政府公式エネルギー統計

 図1−2は、2006〜2007年と2007〜2008年の2年度について、原油のスポット価格の比較をした結果を示している。今年(2008年)の先物原油価格の高騰がいかに急激なものであるかがよく分かる。

         単位:バレル、米ドル
 
 図1−2 WTI原油スポット価格の年度比較
      出典:米国政府公式エネルギー統計

 これに伴い、原油が実際に契約される価格(契約価格)は、2008年7月上旬現在、図2にあるように、1バレル=130ドルに達している。これを2007年1月の価格に対比すると、わずか1年半のうちに原油の取引価格は実に3倍に上昇したことになる。

                   単位:バレル、米ドル

図2 WTI原油契約価格のここ2年間の推移
    出典:米国政府公式エネルギー統計

 では、米国国内におけるレギュラーガソリンの小売り価格はどうか? 

 図3と図4は、それを示している。

 WTIスポット価格が2008年1月以降一本調子で急騰していることを受け、米国内のレギュラーガソリンの小売り価格も一本調子で価格上昇している。

 図3及び図4からそれをみると、全米平均値で1ガロン当たり410セント、西海岸地域の平均で450セントとなっている。

 これを1ガロン =約3.78リットル、1ドル=106円で1リットル当たりの小売価格に変換すると、全米平均で1リットル115円、西海岸平均で1リットル126円となる。

                   単位:バレル、米ドル

図3 全米平均のガソリン小売価格の過去2年の推移
    出典:米国政府公式エネルギー統計
   
                   単位:バレル、米ドル

図4 西海岸平均などガソリン小売価格の過去2年の推移
    出典:米国政府公式エネルギー統計

 この春、青山、池田らが米国カリフォルニア州をレンタカーで1000km以上走行したときの1リットル当たりのガソリン価格が95円であったことを考え合わせると、カリフォルニア州(西海岸)では、すでに1リットル当たり、3月の時点で95円だったものが7月上旬では126円に急騰していることが分かる。

 ◆青山貞一:カリフォルニア州のガソリン価格

 米国では日本のような前提税率などの高額のガソリン税がないことから、日本のように1リットル180円台という超異常な高価格にはなっていないものの、これでも前代未聞の高価格である。

 これらとどまることを知らない原油の高騰は、我が国でもガソリン、軽油、灯油価格など移動手段の燃料高騰はもとより、何十年の時間をかけ「油の楼閣」となっている日本の工業、そして漁業、農業にも甚大は影響を及ぼしている。

 こうなると高速道路はもとより一般道の交通量すら減少し、自動車保有台数も減少することになる。日本のように100%近く油を海外に依存し、築き上げられてきた「油上の楼閣」経済は、音をなして瓦解する可能性すらある。

 まさに「油上の楼閣」経済の崩壊である! 
 
つづく