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ここで世界的食糧逼迫や穀物・原油の高騰問題について触れよう。 (2)世界的食糧需給の逼迫、原油価格の暴騰問題 世界的食糧需給の逼迫問題は、米国によるトウモロコシなど主要農産物を自動車燃料用のエタノールに転換したことに、また株価の低迷によって行き場を失った米国を中心とした投機マネーが穀物など食糧関連先物への投機に向かわせたことが直接的な原因である。 ※原油先物価格の暴騰については、以下の拙稿に詳細を書いている。
洞爺湖サミットで福田首相は、ついぞ米国を起点とするサブプライムローン崩壊による国際的な株価大幅下落と、その損失を挽回しようとする米国を中心とした機関投資家による投機マネーの矛先が原油とともに穀物に向かっている問題に何ら切り込まなかった。 みつぐ君、アッシー君の属国ニッポンの首相は、ご主人様である死に体のブッシュ大統領のご機嫌に最後まで気を遣ったわけだ。 そのブッシュ大統領の残り任期は実質4ヶ月、すでに米国内ではレームダックとなっている。米国内ではほとんど指導的立場はない。連邦議会も上院、下院ともに民主党が多数を占め、次期大統領もよほど間違いがない限り、オバマ大統領、クリントン副大統領の民主コンビが決まっている。 ブッシュ大統領が京都議定書締結国会議から離脱したのは、2001年9月11日のいわゆるニューヨークのワールドトレードセンターへの航空機の突入以降のことだが、そもそもブッシュ大統領がその後してきたことはといえば、あらゆる国際的ルールを無視し、ブッシュドクトリンはじめいずれも独断的、自己中心的なことばかりであり、アフガニスタン、そしてイラクに勝手な言いがかりをつけ、圧倒的な武力を元に侵略行為を繰り返した。 そんな誰も文句を言えない、とめられないガキ大将となったブッシュ大統領は、温暖化、食糧難、穀物・原油価格高騰など、現在の世界的難題の圧倒的多くが米国発であるにもかかわらず、たえず中国やインドなどBRICS諸国の興隆に問題の原因があるといいう発言に終始し、それを福田首相がやっきになってフォローしている。 死に体のブッシュ大統領と死に体の福田首相が言いたい放題、そして累積債務1000兆円の日本が金の使いたい放題をしているのがG8の実像である。 G8では、横暴、傲慢な超大国、米国の責任を問う議論はなく、本来米国が被告席にたたされるべき問題は、すべて世界全体で取り組むべき課題とすり替えられているのである。 本題の食料需給逼迫、穀物など食料価格の高騰問題は、本質的に見れば、地球規模の気候変動に大きく関連している問題である。アフリカ、アジア、南アメリカ諸国では、従来から大干ばつや砂漠化の進行など、深刻な地球温暖化による影響、被害をすでに受けている国々である。これらの影響、被害の多くは、取り返しが付かない不可逆的なものである。 トウモロコシ畑を遅う大干ばつ 気候変動の主原因が先進諸国における化石燃料の大量焼却による膨大な二酸化炭素排出にあることは間違いないが、米国のブッシュ大統領は、早晩来るべくして来る石油資源の枯渇や食糧需給の逼迫を前に、サブプライムローン崩壊など自らの失政による原油先物や穀物先物への投機マネーの大洪水的流入によって引き起こされている価格暴騰に何ら手を打とうとしていない。 米国では2008年5月上旬、連邦議会上院で以下に示す原油市場に対する投機資金の規制を強化する「石油取引透明化法」が検討された。この法案は、レビン及びフェインシュタインという2名の民主党上院議員が提案しているものである。
国際ジャーナリスト、田中宇氏は、「WTIの先物は、ニューヨーク商品取引所(NYMEX)に上場しているが、同じ先物商品は、ロンドンにあるICE(Intercontinental Exchange)という企業が運営するネット上の先物取引市場でも取り引きされており、アメリカのヘッジファンドや投資銀行はニューヨークのNYMEXだけでなく、ロンドンのICEを通じて、さかんにWTI先物を買い、原油価格を高騰させている」 図1 WTI原油スポット価格のここ2年間の推移 出典:米国政府公式エネルギー統計 さらに「NYMEXはアメリカの市場なので、そこでの先物取引は、米政府の商品先物取引委員会によって監視され、投機的な行為は取り締まられる。だがロンドンのICEは、外国の民間企業による相対取引の市場なので、米政府の監視の枠外にある。投機で原油をつり上げたい米投機筋(ヘッジファンドや投資銀行)は、ロンドンのICEで先物を売買し、米当局の目を盗んで意図的に原油価格をつり上げ、ぼろ儲けしており、規制が必要だ」というのがレビン及びフェインシュタインの2人の民主党上院議員の法案提出の理由であった。」という。 これは何も原油先物だけでなく、トウモロコシや小麦など穀物市場についても同様の問題が指摘されている。図2はトウモロコシ、図3は小麦、図4は大豆の価格の推移をグラフで示したものであり、いずれもここ1年の間に高騰していることが見て取れる。 米国では2006−07年から大豆や小麦の畑をトウモロコシ畑に変え、さらに遺伝子組み替え作物化することでトウモロコシの収穫を増やした。これらはガソリンに混ぜて自動車燃料とするバイオエタノールをとるためだ。結局、畑の作柄をトウモロコシに転換することで、世界の主要な食糧である「小麦」や「大豆」の収穫が大幅に減り、価格が高騰することになった。これが「米国元凶のストーリ」である。 結局、ブッシュ政権は、ヘッジファンドなどが原油や穀物を対象に投機行為をすることを監視すべし、とする米国民主党の提案を拒否し、米投機筋(ヘッジファンドや投資銀行)などによる地球規模での経済倫理にもとる行為を容認してしまったのである。 図2 世界のトウモロコシ価格の推移 Source:Trivia Tidbit Of The Day: Part 407 -- More Ethanol Facts 図3 世界の小麦価格の推移 Source: What King Arthur Flour is doing to keep the cost of flour down 図4 米国の大豆価格の推移 Source: Farm Bill; WASDE Report もし、上記の法案が米国の連邦議会を通過し、投機マネーの投資実態が分かれば、原油や穀物価格の暴騰はかなり防げたはずである。 議長国日本の福田首相は、G8の場で上記についてブッシュ大統領に政策提言すべきであったが、ブッシュ大統領のご機嫌取りに奔走している福田首相にそんな余裕はまったくなかった。 繰り返すが、地球規模での中長期的な砂漠化、干ばつ、洪水による農作物の収穫異変、食糧難の多くは、先進諸国に大きな責任がある。それは一時金的な経済協力でどうにかなる問題ではない。また米国の投機筋や金融、証券関係機関がこともあろうか、サブプライムローンなどの損失の穴埋めのために原油や穀物の先物に投資するなど、到底あってはいけないことである。 私見だが、なぜ福田首相だけでなくEU諸国首脳が先物投機行為について、ブッシュ大統領を責めないのかには理由があると思う。それはEU諸国の政府関係機関、たとえば社会保険などを運用している機関も、ヘッジファンド同様、原油や穀物の先物に運用先を移しているからではないかと思う。 下の論考にデータをあげ詳細を書いたように、現在の株式価格の低迷は何も、米国だけの問題ではなく、すでに欧州、日本、アジアにまで波及している。まさに米国に端を発したサブプライムローン破綻による80兆円になんなんとする損失と株価低迷、経済不況は全世界的な難題と化しているのである。 ◆青山貞一:<3>今後も原油物価格の高騰は続くのか? 現在、温暖化、米国初の経済破綻の影響と最も強く受けているアフリカ、アジア、南米の発展途上国の多くは、歴史的に見れば、EU・米国・日本などの西側諸国によって植民地支配化され、モノカルチャー的産業を強いられてきた国々である。 図1 アフリカ諸国の植民地時代の宗主国 出典:Colonization of Africa. それらの途上国は、西側先進国の都合で自国の土地の利用や産業のあり方がたえず制約を受け、労働力を搾取され、天然資源を収奪されてきた国々でもある。その意味で、G8が単なる創始国への物乞いの場としてはならないと思う。 また私見では、G8以外の国々にとって、G8モデルは破綻した国家モデルであることを強く認識すべきだ。そして、21世紀は福祉、環境、教育、外交などでG8諸国とは別の道を歩むスウェーデン、ノルウェー、フィンランドなどスカンジナビア諸国は見習うべきモデルの一つであると思う。 いまさら破綻した経済政治モデルであるG8諸国に世界各国が見習い、従う理由はないだろう。 さらにグローバリズムから取り残された地域にも、21世紀に生き残これっる地域モデルの一端がかいま見えると思う。そこには非市場主義的、非西欧近代な「持続可能な社会モデル」があるからだ。 いずれにせよG8諸国などグローバルな市場原理主義諸国の将来はない。早く泥船から脱却し、上述の新たなモデルを模索することが問われている! つづく |